今回は、個人的にかなりおすすめしたい作品
『Fate/Zero』について書いていきます。

Fateシリーズの中でも、特に重くて、熱くて、報われなくて、でも最後まで目が離せない作品です。
「聖杯戦争」という、願いを叶える万能の器を巡って、7人の魔術師と7騎の英霊が殺し合う物語。
ただのバトルアニメではなく、
それぞれの正義、願い、信念、後悔、執着がぶつかり合う作品です。

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■あらすじ
『Fate/Zero』は、『Fate/stay night』の10年前に起きた「第四次聖杯戦争」を描いた物語です。
舞台は日本の地方都市・冬木市。
この街では、万能の願望機と呼ばれる「聖杯」を巡り、魔術師たちが争う儀式が繰り返されてきました。

聖杯を手にした者は、どんな願いでも叶えられる。
だからこそ、参加者たちは自分の人生、誇り、愛する者、信念、すべてを賭けて戦います。

主人公は、衛宮切嗣。

彼は「魔術師殺し」と呼ばれる男で、魔術師でありながら銃火器や爆弾、暗殺など、手段を選ばない戦い方をする人物です。

切嗣の願いは、世界平和。
しかしその願いは、とても綺麗な言葉でありながら、彼自身の生き方はあまりにも血にまみれています。
多くを救うためなら、少数を切り捨てる。
ひとつの犠牲で多くが助かるなら、迷わずそのひとつを殺す。
そんな冷酷な選択を繰り返してきた切嗣は、聖杯の力で「争いのない世界」を作ろうとします。

彼が召喚したサーヴァントは、セイバー。
真名はアルトリア・ペンドラゴン。

伝説のアーサー王です。
高潔で、騎士道を重んじ、正々堂々とした戦いを望むセイバーと、勝つためなら卑怯な手段も使う切嗣。
この2人は、同じ陣営でありながら、最初から最後まで噛み合いません。
ここが『Fate/Zero』の面白いところです。
普通なら主人公と相棒サーヴァントが信頼を深めていく話になりそうですが、この作品ではむしろ逆。
理想を持つ者同士なのに、理想の形が違いすぎる。
だからこそ、見ていて苦しいし、でも目が離せません。

一方で、冬木には他のマスターたちも集まります。
遠坂時臣は、魔術師として根源を目指すために参戦。

言峰綺礼は、自分自身の空虚さと向き合いながら、ギルガメッシュとの出会いによって歪んだ本性に目覚めていきます。


ウェイバー・ベルベットは、自分を見下した魔術師たちに認められたいという思いから聖杯戦争に参加。

彼が召喚したライダー、イスカンダルとの関係は、この作品の中でもかなり熱いです。

間桐雁夜は、間桐家に引き取られた桜を救うために命を削って参戦。

ケイネスは名門魔術師としての誇りを背負い、ランサーと共に戦います。

そして雨生龍之介とキャスターは、聖杯戦争のルールすら気にしない異質な陣営として、物語に大きな混乱をもたらします。

この作品は、誰か1人だけの物語ではありません。
全員が主人公であり、全員が敗者でもあるような物語です。
それぞれに願いがある。
守りたいものがある。
認められたい思いがある。
やり直したい過去がある。
でも、聖杯戦争はそれらを綺麗に救ってはくれません。
むしろ、願いが強い人ほど壊れていく。
そこが本当にしんどくて、でも最高に面白いです。

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■聖杯戦争とは
『Fate/Zero』を語るうえで外せないのが「聖杯戦争」です。
簡単に言うと、7人の魔術師が「マスター」となり、7騎の英霊を「サーヴァント」として召喚し、最後の1組になるまで戦う儀式です。

勝ち残った者は、万能の願望機である聖杯によって願いを叶えられるとされています。
サーヴァントには基本となるクラスがあります。
セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー。

それぞれが伝説や神話、歴史上の英雄であり、強力な宝具を持っています。
宝具というのは、その英霊を象徴する必殺技や武器のようなものです。
たとえばセイバーなら聖剣エクスカリバー。

ライダーなら王の軍勢。

ギルガメッシュなら王の財宝。

この宝具のぶつかり合いが、Fateシリーズの大きな魅力です。
ただ、『Fate/Zero』の聖杯戦争は、単純に強いサーヴァントが勝つ話ではありません。
マスターの策略、相性、価値観、裏切り、同盟、精神的な弱さ。
そういうものが複雑に絡み合います。

切嗣のように、サーヴァント同士の正面勝負ではなく、マスター本人を狙う者もいます。

逆にセイバーやランサーのように、騎士として正々堂々と戦いたい者もいます。

ライダーのように、戦争そのものを自分の王道を示す場として楽しむ者もいます。

ギルガメッシュのように、聖杯を欲しいというより「自分の所有物を奪おうとする者を裁く」という感覚で参加している者もいます。

つまり聖杯戦争は、願いを叶えるための戦いでありながら、登場人物たちの生き方そのものが見える場所でもあります。
だからこそ面白いです。
「この人が正しい」と簡単には言えません。
切嗣の理想も分かる。
セイバーの誇りも分かる。
ライダーの生き様も魅力的。
雁夜の行動も愚かだけど、気持ちは分かる。
ウェイバーの未熟さも、見ているうちに応援したくなる。
でも、誰も完全には救われない。
聖杯戦争とは、願いを叶える戦いに見えて、実際は願いの歪みを暴いていく残酷な儀式なのかもしれません。

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■登場人物紹介
ここからは、主要人物を紹介していきます。
【衛宮切嗣】

『Fate/Zero』の主人公。
セイバーのマスターであり、「魔術師殺し」と呼ばれる男です。
彼の願いは世界平和。
この言葉だけ聞くと、すごく正しい主人公に見えると思います。
でも切嗣のやり方は、とにかく冷酷です。
多数を救うためなら、少数を切り捨てる。
戦いに勝つためなら、騙し討ちも暗殺も銃も爆弾も使う。
普通の魔術師が嫌がる近代兵器も平気で使います。
ただ、切嗣は感情がない冷血漢ではありません。
むしろ本当は優しい人間です。
だからこそ苦しい。
誰かを救いたいのに、そのために誰かを殺さなければならない。
正義の味方になりたかったのに、やっていることは殺し屋でしかない。
この矛盾を抱えたまま、切嗣は聖杯戦争に挑みます。
個人的に切嗣は、Fateシリーズの中でもかなり悲しい主人公だと思います。
理想が大きすぎた人。
優しすぎたからこそ壊れてしまった人。
そして最後には、自分が信じていた救いの形すら否定される。
本当に報われない男です。
【セイバー / アルトリア・ペンドラゴン】

切嗣が召喚したサーヴァント。
真名はアーサー王、アルトリア・ペンドラゴン。
高潔で誇り高く、騎士道を重んじる王です。
セイバーは、滅びた自分の国を救いたいという願いを持っています。
自分が王になったことが間違いだったのではないか。
もっと別の誰かが王になっていれば、国は滅びなかったのではないか。
そんな後悔を抱えて聖杯を求めます。
ただ、『Fate/Zero』のセイバーはかなり苦しい立場に置かれます。
マスターである切嗣とは価値観が合わない。
ライダーには王としての在り方を否定される。
バーサーカーとの因縁によって、自分の過去の傷を突きつけられる。
そして最後には、求めていた聖杯を自分の手で破壊させられます。
セイバーにとっては本当に地獄のような聖杯戦争です。
正しいことをしようとしているのに、誰にも理解されない。
誇りを持って戦いたいのに、戦場はそんな綺麗なものではない。
彼女の真っ直ぐさが、この作品では美しさであると同時に痛々しさにもなっています。
【アイリスフィール・フォン・アインツベルン】

切嗣の妻であり、イリヤの母。
そしてセイバーの表向きのマスターとして行動する女性です。
アイリはホムンクルスでありながら、とても人間らしい温かさを持った人物です。
外の世界に憧れたり、車の運転を楽しんだり、セイバーと心を通わせたりする姿が可愛らしいです。
しかし彼女の正体は、聖杯の器。
サーヴァントが脱落していくほど、アイリ自身の体は聖杯としての機能を取り戻し、人としての機能を失っていきます。
つまり聖杯戦争が進めば進むほど、彼女は死に近づいていく。
切嗣の理想を支え、理解者であろうとするアイリですが、その優しさもまた報われません。
彼女は切嗣を愛している。
イリヤを愛している。
でも、アインツベルンの宿命からは逃れられない。
この人の存在があるからこそ、切嗣の物語はより痛くなります。
【久宇舞弥】

切嗣の助手であり、戦闘面でも支える女性。
感情をあまり表に出さず、淡々と任務をこなすタイプです。
舞弥は、切嗣の道具のように生きている人物にも見えます。
でも実際は、彼女なりに切嗣に救われ、切嗣を支えてきた人です。
彼女もまた、自分の人生をどこかで失ってしまった人間です。
切嗣のために生き、切嗣のために戦い、最後まで切嗣のそばにいる。
ただ、その献身も幸せな形では終わりません。
『Fate/Zero』は、こういう「誰かのために生きた人」も容赦なく壊していきます。
【遠坂時臣】

遠坂家の当主で、アーチャーのマスター。
遠坂凛と間桐桜の父親です。
時臣は、いかにも魔術師らしい魔術師です。
上品で冷静で、家柄も才能もある。
でも魔術師としての価値観が強すぎるため、普通の親として見るとかなり残酷です。
次女である桜を間桐家に養子に出したのも、魔術師の家系としては理屈がある行動です。
ただ、一般的な感覚で見ると娘を地獄に送ったようなものです。
時臣本人は悪意でやっているわけではありません。
むしろ父親として娘の未来を考えたつもりです。
でもその価値観そのものがズレている。
ここがFateの魔術師の怖いところです。
悪人ではないのに、人としては残酷。
このズレが遠坂時臣というキャラクターの面白さだと思います。
【アーチャー / ギルガメッシュ】

遠坂時臣が召喚したサーヴァント。
真名はギルガメッシュ。
人類最古の英雄王です。
とにかく圧倒的な存在感があります。
傲慢で、自信満々で、他人を基本的に見下している。
でもただの嫌な奴ではありません。
王としての器、強さ、美学があり、自分が認めた相手には一定の敬意を示します。
特にライダーとの関係はかなり熱いです。
ギルガメッシュは、時臣のような退屈な魔術師よりも、言峰綺礼の歪みに興味を持ちます。
そして綺礼を誘惑するように、本来の自分へ目覚めさせていきます。
この2人の会話がまた危ないです。
悪魔の囁きみたいでありながら、どこか楽しそうでもある。
ギルガメッシュは圧倒的強者として物語に君臨しつつ、人間たちの愚かさや執着を眺める存在でもあります。
【言峰綺礼】

アサシンのマスター。
聖堂教会に所属し、遠坂時臣の弟子として聖杯戦争に参加します。
綺礼はかなり複雑なキャラクターです。
能力は高い。
信仰心もある。
真面目に生きようとしてきた。
でも、普通の人間が喜びを感じるものに何も感じられない。
その代わり、他人の苦しみや破滅にだけ心が動いてしまう。
本人もその歪みに苦しんでいます。
自分はなぜこうなのか。
自分の本質は何なのか。
その答えを、ギルガメッシュとの出会いによって見つけてしまう。
綺礼は『Fate/Zero』の中で、最も「目覚めていく」キャラクターだと思います。
普通なら成長と言いたいところですが、綺礼の場合は堕落に近いです。
でも本人にとっては、それが初めて自分を理解する瞬間でもある。
だから怖いし、面白い。
切嗣との対比も最高です。
切嗣は世界を救いたい男。
綺礼は自分の中の空虚を知りたい男。
この2人が最後にぶつかるのは、運命だったと思います。
【アサシン / 百の貌のハサン】

綺礼が召喚したサーヴァント。
真名はハサン・サッバーハ。
複数の人格を持ち、それぞれが別々の個体として行動できる特殊なアサシンです。
正面戦闘ではそこまで派手ではありませんが、諜報や偵察においてはかなり優秀です。
ただ、綺礼と時臣の作戦のために使われる立場なので、サーヴァントとしての存在感はやや裏方寄りです。
それでも、分身体を使った暗躍は聖杯戦争らしい不気味さがあります。
【ウェイバー・ベルベット】

ライダーのマスター。
『Fate/Zero』の中で、個人的に一番成長を感じられるキャラクターです。
最初はかなり未熟です。
プライドが高くて、自分を認めない時計塔の人間たちを見返したいという気持ちで聖杯戦争に参加します。
ケイネスの聖遺物を盗み、ライダーを召喚するという行動も、若さと反骨心の塊です。
でも、ライダーと出会ったことでウェイバーは変わっていきます。
最初は振り回されてばかり。
怖がってばかり。
でもだんだんと、自分の小ささを知り、王の背中を見て、人として成長していきます。
ウェイバーとライダーの関係は、『Fate/Zero』の中で数少ない救いのような存在です。
もちろん完全なハッピーエンドではありません。
でも、この2人の絆は本物です。
最後にウェイバーが見せる勇気は、本当にかっこいいです。
【ライダー / イスカンダル】

ウェイバーが召喚したサーヴァント。
真名はイスカンダル。
征服王アレクサンドロス大王です。
豪快で、器が大きくて、めちゃくちゃ魅力的な王様です。
現代の文化にもすぐ馴染み、ゲームを欲しがったり、堂々と真名を名乗ったり、聖杯戦争の空気を良い意味でめちゃくちゃにします。
ライダーの魅力は、とにかく生き方が太いところです。
自分の欲望を隠さない。
世界を征服したい。
受肉してもう一度大地を駆けたい。
その願いは一見わがままですが、彼の言葉には人を惹きつける力があります。
王とは何か。
人を導くとは何か。
夢を見せるとは何か。
ライダーはそれを背中で見せてくれます。
セイバーとの王道の違いも見どころです。
セイバーは民のために自分を捨てた王。
ライダーは自分の欲望で民を巻き込み、夢を見せた王。
どちらが正しいかは簡単には言えません。
でもライダーの生き様は、見ている人の心を強く揺さぶります。
【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト】

ランサーのマスター。
時計塔の名門魔術師であり、プライドの高い天才です。
最初はかなり嫌味な人物に見えると思います。
ウェイバーを見下し、名門としての誇りを持ち、自信満々で聖杯戦争に乗り込んできます。
しかし彼もまた、戦争の中でどんどん壊されていきます。
切嗣との相性が最悪です。
ケイネスは魔術師として優秀。
でも切嗣は、魔術師の誇りを真正面から踏みにじる戦い方をします。
魔術戦をするつもりで来たケイネスに対して、切嗣は銃と爆弾と罠で潰しに来る。
この残酷な現実が、ケイネスを一気に追い詰めます。
誇りも、身体も、恋人との関係も、すべて崩れていく。
彼も報われないキャラクターです。
【ランサー / ディルムッド・オディナ】

ケイネスが召喚したサーヴァント。
真名はディルムッド・オディナ。
騎士道を重んじる、美しい槍の英霊です。
セイバーと正々堂々戦うことを望み、互いに認め合う関係になります。
ランサーは聖杯に強い願いがあるわけではなく、ただ今度こそ主君に忠義を尽くしたいと願っています。
しかし、その忠義は最後まで報われません。
マスターとの信頼関係は崩れ、ソラウとの関係も歪み、最終的には令呪によって自害させられます。
この最期が本当にしんどいです。
騎士として戦いたかっただけなのに。
忠義を尽くしたかっただけなのに。
最後には呪いの言葉を吐きながら消えていく。
『Fate/Zero』の報われなさを象徴するキャラクターの1人だと思います。
【間桐雁夜】

バーサーカーのマスター。
桜を救うために、間桐家へ戻り、命を削って聖杯戦争に参加します。
雁夜は本当に見ていて苦しいキャラクターです。
彼の動機は、かなり人間らしいです。
桜を助けたい。
葵さんを悲しませたくない。
遠坂時臣が許せない。
その思いは分かります。
でも、雁夜の行動はどこか自己満足でもあります。
桜を救いたいという気持ちは本物。
でもその裏には、葵への想いや時臣への嫉妬もある。
純粋な善意だけではない。
そこが人間らしくて、また痛いです。
彼は身体を虫に蝕まれながら戦います。
でも結局、桜を救うことはできません。
むしろ彼の死は、桜にさらに絶望を刻み込む結果になります。
救いたかった相手を救えず、自分の願いも届かず、最後は幻の幸福を見ながら死んでいく。
雁夜おじさん、本当に報われません。
【バーサーカー / ランスロット】

雁夜が召喚したサーヴァント。
真名は円卓の騎士ランスロット。
黒い鎧に身を包み、狂気に染まった騎士です。
彼はセイバー、つまりアーサー王に強い執着を持っています。
その正体が明かされていくにつれて、セイバーの過去と後悔も深く抉られていきます。
ランスロットは、ただの狂った敵ではありません。
彼もまた、王に裁かれたかった人です。
自分の罪を、王に罰してほしかった。
でもセイバーは彼を許してしまった。
その許しが、彼にとっては救いではなく呪いになってしまった。
この関係性が本当に重いです。
セイバーにとっても、ランスロットにとっても、あまりにも苦しい再会です。
【雨生龍之介】

キャスターのマスター。
魔術師ではなく、殺人鬼です。
偶然キャスターを召喚し、聖杯戦争に参加することになります。
龍之介は、作中でもかなり異質な存在です。
他のマスターたちは、何かしらの願いや目的を持って戦っています。
でも龍之介は、聖杯に興味があるわけではありません。
自分の美学に従って、人を殺す。
その異常性がキャスターと噛み合ってしまいます。
この陣営は本当に危険です。
ただ、皮肉なことにマスターとサーヴァントの相性はかなり良いです。
お互いに理解し合っている。
一番まともじゃない陣営が、一番仲が良いというのが『Fate/Zero』らしいです。
【キャスター / ジル・ド・レェ】

龍之介が召喚したサーヴァント。
真名はジル・ド・レェ。
セイバーをジャンヌ・ダルクと勘違いし、執着します。
キャスター陣営は、聖杯戦争のルールを無視して一般人を巻き込み続けるため、他陣営から討伐対象になります。
かなり狂気的なキャラクターですが、最期にはかつての自分を思い出すような描写もあります。
狂ってしまった人間の中にも、過去には信仰や誇りがあった。
そう考えると、キャスターもまた壊れてしまった人なのかもしれません。
【間桐桜】

遠坂時臣の次女で、凛の妹。
間桐家に養子に出された少女です。
『Fate/Zero』ではメインで戦うキャラクターではありませんが、物語全体の悲劇性を強める存在です。
桜を救いたいという雁夜の願い。
桜を養子に出した時臣の魔術師としての判断。
間桐臓硯の非道。
それらが全部、桜という少女に重くのしかかっています。
彼女が置かれている状況を考えると、本当に胸が痛いです。
『Fate/stay night』を知っていると、さらに苦しくなります。
【遠坂凛】

時臣の長女。
後の『Fate/stay night』のヒロインの1人です。
『Fate/Zero』ではまだ幼い少女ですが、すでに遠坂家の魔術師としての気質を感じさせます。
アニメでは凛が活躍する回もあり、重い話が続く中で少しだけ冒険譚のような雰囲気があります。
ただ、彼女もまた父の死、桜との別離、綺礼との因縁を背負っていくことになります。
【間桐臓硯】

間桐家の怪物のような存在。
桜や雁夜の悲劇の根本にいる人物です。
臓硯は本当に救いようがないタイプのキャラクターです。
人の苦しみを利用し、雁夜が壊れていく様子すら楽しんでいます。
『Fate/Zero』の中でも、間桐家周りの空気は特に陰湿です。
華やかな英霊バトルの裏で、こういう逃げ場のない地獄が描かれているのも、この作品の重さだと思います。
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〜報われないからこそ心に残る〜
『Fate/Zero』を一言で表すなら、個人的には「報われない物語」だと思います。

もちろんバトルはかっこいいです。
作画も綺麗です。
宝具の演出も最高です。
セイバーのエクスカリバー、ライダーの王の軍勢、ギルガメッシュの王の財宝。

見どころは本当に多いです。
でも、この作品がここまで印象に残る理由は、かっこよさだけではありません。
むしろ、登場人物たちの願いがほとんど報われないところにあります。
切嗣は世界平和を願いました。
でも聖杯が見せた答えは、彼の理想を最悪の形で突きつけるものでした。
争いをなくすには、人を殺し続けるしかない。
最終的には、人類を滅ぼすことで平和にする。
そんな歪んだ答えを突きつけられた切嗣は、聖杯を破壊するしかありませんでした。
自分が人生を懸けて求めたものを、自分の手で否定する。
これほど残酷な結末はなかなかありません。
そしてセイバーも報われません。
国を救いたい。
王としての過ちを正したい。
そう願って戦ったのに、ライダーには王道を否定され、ランスロットには過去の罪を突きつけられ、最後には聖杯を破壊させられる。
自分の願いが叶わないだけではなく、願いそのものを踏みにじられるような終わり方です。

ランサーも報われません。
ただ忠義を尽くしたかった。
騎士として戦いたかった。
それだけなのに、マスターたちの事情と切嗣の策略に巻き込まれ、令呪で自害させられる。
あの最期は本当に胸に残ります。

雁夜も報われません。
桜を救いたかった。
葵を笑顔にしたかった。
時臣を許せなかった。
でも彼は何も救えません。
自分の身体も心も壊し、最後には桜の目の前で無惨に死んでいく。
しかも桜にとっては、それが希望ではなく絶望として残ってしまう。
救いたい気持ちがあったのに、結果として救いにならない。
これがあまりにも残酷です。

ケイネスも報われません。
名門魔術師としての誇りを持って参戦したのに、切嗣という天敵にすべてを崩される。
ランサーとの関係も、ソラウとの関係も、最後まで綺麗にはなりません。

時臣も報われません。
魔術師としては正しく振る舞っていたのかもしれません。
でも、父として、師として、夫としては、多くのものを見誤っていました。
最後は信頼していた弟子に背中から刺されます。
これもまた、ものすごく皮肉な結末です。

アイリも舞弥も報われません。
切嗣を支え、彼の理想を信じ、彼のそばにいた女性たち。
でも切嗣の理想は彼女たちを幸せにはしませんでした。
誰かを救うための理想が、近くにいる大切な人たちを失わせていく。
この矛盾が『Fate/Zero』の一番苦しいところです。


そんな中で、唯一少しだけ救いに見えるのがウェイバーとライダーの関係です。

ウェイバーは聖杯を手に入れていません。
ライダーも敗れています。
つまり勝者ではありません。
でも、ウェイバーはライダーとの出会いによって確かに成長しました。
自分の小ささを知り、王の背中を見て、臣下として胸を張る強さを得ました。
ライダーもまた、自分の生き様を最後まで貫きました。
負けたけれど、惨めではない。
消えたけれど、心には残る。
『Fate/Zero』の中で、ウェイバーとライダーの別れだけは、悲しいけれど美しいです。

この作品は、ハッピーエンドではありません。
むしろ、ほとんどの人にとってバッドエンドです。
願いは叶わない。
愛は届かない。
正義は歪む。
忠義は踏みにじられる。
救いはすり抜ける。
それでも、だからこそ心に残ります。
現実でも、努力したから必ず報われるわけではありません。
正しいことをしたつもりでも、結果が正しいとは限りません。
誰かを救いたいと思っても、その人にとって本当の救いになるとは限りません。
『Fate/Zero』は、そういう苦さを徹底的に描いている作品だと思います。
だから見終わったあとに、ただ「面白かった」だけでは終われません。
切嗣の選択は正しかったのか。
セイバーの王道は間違っていたのか。
ライダーの生き方は本当に理想的だったのか。
雁夜は愚かだっただけなのか。
綺礼は悪なのか、それともただ自分に正直になってしまっただけなのか。
考えれば考えるほど、簡単に答えが出ません。
そこが『Fate/Zero』の魅力です。

個人的には、Fateシリーズを知らない人にもかなりおすすめしたい作品です。
もちろん『Fate/stay night』を知っていると、さらに楽しめます。

この人物が後にどう繋がるのか。
この事件がどんな因縁を残すのか。
そういう部分もかなり面白いです。
ただ、『Fate/Zero』単体でも十分に完成度が高いです。
重い作品が好きな人。
正義と悪が単純に分かれていない話が好きな人。
報われないけど美しい物語が好きな人。
キャラクター同士の信念のぶつかり合いが好きな人。
そういう人には本当に刺さると思います。

個人的な推しポイントは、やっぱりライダー陣営です。
ウェイバーとイスカンダルの関係は、最初はギャグっぽさもあります。
小柄で未熟なウェイバーと、豪快すぎる征服王。
この組み合わせが本当に良いです。
でも話が進むほど、ただの凸凹コンビではなくなります。
王とは何か。
臣下とは何か。
誇りとは何か。
そういうものを、ライダーはウェイバーに言葉と背中で教えていきます。

最後の戦いは、勝ち負け以上に心に残ります。
ギルガメッシュとの対決も最高です。
王と王のぶつかり合い。
圧倒的な力の差がありながら、それでもライダーは自分の道を曲げない。
あの姿は本当にかっこいいです。

そしてウェイバーが最後に見せる覚悟。
あれはもう、最初のウェイバーとは別人です。
聖杯戦争に勝てなかったけど、ウェイバーは確かに何かを得ました。
この作品の中では、それだけでも大きな救いだと思います。
逆に一番しんどいのは、切嗣です。

切嗣は世界を救いたかった。
でも、世界を救うために人間らしさを捨てていった。
それなのに最後に分かったのは、自分のやり方では本当の平和には届かないということ。
あまりにも残酷です。
それでも切嗣は最後に、火災の中から士郎を救います。
世界全体は救えなかった。
聖杯も手に入らなかった。
妻も仲間も失った。
でも、たった1人の少年を救った。
ここが本当に重要だと思います。
切嗣がずっと追い求めていた「大勢を救う正義」ではなく、目の前の1人を救うこと。

それが後の衛宮士郎へ繋がっていく。
『Fate/Zero』は絶望の物語ですが、その絶望の中に次の物語の種が残されています。
だから完全な無意味ではない。
報われないけど、繋がっていく。
ここがたまらなく好きです。
『Fate/Zero』は、楽しいだけの作品ではありません。
むしろ見るのに体力がいる作品です。
でも、見終わったあとにずっと残るものがあります。
登場人物たちの叫び、後悔、誇り、願い。
それが全部、胸に刺さります。
報われない物語が好きな人には、ぜひ見てほしいです。

そして見た後に、誰の願いが一番苦しかったか、誰の生き方が一番刺さったか、語りたくなる作品です。
Fateシリーズに触れたことがない人も、まずはこの重厚な物語から入ってみるのも全然ありだと思います。
ただし、軽い気持ちで見ると心を持っていかれます。
覚悟して見てください。
『Fate/Zero』は、勝者の物語ではなく、敗者たちの願いの物語。
だからこそ、こんなにも美しくて、残酷で、忘れられない作品です。