今日は友人と昼飯へ。
向かった先は、学生街にある昔ながらの定食屋。
店に入った瞬間、若い空気に包まれる。
大学生達の笑い声。
「単位がどうだ」「バイトがどうだ」と未来を語る声。
スマホ片手に写真を撮る者もいれば、山盛りの定食を無心でかき込む者もいる。
そんな活気のど真ん中に、黒服のおじ2人。
少しだけ浮いていたかもしれない。
だが、それも悪くない。
歳を重ねると、“若さの中に混ざる勇気”が必要になる。
人はいつからか、「自分に似合う場所」ばかり選ぶようになるからだ。
運ばれてきたのは、大皿に山盛りの唐揚げ定食。
白飯は漫画みたいな盛り方。
湯気の立つスープ。
小鉢までしっかり付いてくる。
こういう店はいい。
無駄な演出がない。
ただ、“腹いっぱい食わせる”という信念だけがある。
一口目の唐揚げで理解する。
若者が集まる理由は、流行りではなく“本物の満足感”だと。
サクサクの衣。
噛めば肉汁が広がる。
白飯をかき込む手が止まらない。
気づけば、おじ2人も大学生に負けない勢いで食べていた。
「歳を重ねても、食欲があるうちは人生はまだ戦える。」
これは昔、先輩に言われた言葉だ。
今になって妙に沁みる。
若い頃は、背伸びして高い店ばかり探していた。
静かなバー、洒落た店、値段の高い料理。
それが“大人”だと思っていた時期もある。
だが今は違う。
気を遣わず、腹を抱えて笑いながら食う定食。
それが何より贅沢だと知った。
「人間の価値は、食べる物ではなく、誰と食べるかで決まる。」
友人とは長い付き合いだ。
若い頃の無茶も知っている。
失敗も、成功も、酒癖の悪さも知っている。
だから会話に飾りがいらない。
黙って飯を食っても成立する関係というのは、案外少ない。
店内では学生達が騒いでいる。
その姿を見ながら、自分達にもあんな時代があったなと少し思う。
未来しか見えていなかった頃。
体力だけで走れた頃。
失敗を恐れなかった頃。
だが、歳を重ねた今だから見える景色もある。
若さは勢い。
年齢は深み。
どちらが上ではない。
どちらにも価値がある。
「若さは財産。経験は武器。」
黒服という仕事をしていると、夜の世界で色々な人を見る。
勢いだけで走る人。
経験だけで語る人。
どちらかに偏ると、人は脆い。
だからこそ、若い空気の中に身を置く時間は大切だと思う。
刺激を受けるし、自分を見直せる。
昼間の定食屋で、山盛りの唐揚げを前にそんな事を考えていた。
結局、人間はシンプルなものに戻っていくのかもしれない。
旨い飯。
気の置けない友人。
何気ない会話。
そして、笑える時間。
それだけで充分だ。
「人生に必要なのは、高級な時間ではない。
心から“うまい”と言える瞬間である。」
今日も良い昼飯でした。
美酒乱
黒服先生