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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.10.14
第12話 あたし、一人ぼっち!?(前編)
2004年8月30日
『天国のママへ 小さい頃からずっと一緒だった千代。初めて好きになった信長さん。この二人と、明日お別れしてきます』
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2004年8月末日。
ホストクラブ『ホトトギス』はいつも以上に大盛況であった。
それもそのはずである。『ホトトギス』で長い間No.1に君臨していた信長と、No.2の家康、千代が今日ホストを引退するのだ。
「それにしても、お二人とも辞められるなんて寂しいですわね、葉様」
信長と千代とも顔なじみである雅も今日は店に来ていた。
「あぁ、だから俺も頑張らないと」
葉がにこっと笑いかけると、雅もほほ笑んだ。
「よかった」
「え?」
「信長様と、家康様が辞めてしまうと聞いて葉様が淋しがっているんじゃ、と思って来たのですけど、大丈夫のようですわね」
雅は二人に会いに来たのではなく、葉を励ましに来たことにようやく気づいた。
「気を遣ってくれたんだね。ありがとう」
「いえいえ、あたくしはいつでも葉様の味方です。それにあたくし以外にも、葉様には味方がいるみたいですわね」
そういって雅はホストクラブに飾られたランキング表を見た。今月の売上No.1の欄には秀吉の名前が載っている。
「うーん、今月は俺の力でNo.1になろうと思ったんだけどな」
「人には適性がありますわ。葉様の場合、オーナーのお仕事も兼任していますし御自分の売上は勿論、他のホストの方々が働きやすいように配慮するのも仕事ですから」
「そうだな」
葉は頷きながら他のホスト達を見る。目線の先には謙信と政宗の姿があった。
謙信はホストの仕事を続けているが、モデルの仕事とアパレルの勉強の為、前より『ホトトギス』に出勤する日数が減り、今日は久しぶりの出勤である。
政宗はホールで接客より裏でキッチンの仕事をする時間が増えている。ホストよりも裏方に回る方が彼らしいのかもしれない。
二人もいつか、ホトトギスを去る日が来るかもしれない……。葉が不安そうな顔をすると、背後から近づいてくる者がいた。秀吉だ。
「よっ! 何たそがれてんだよ! 」
秀吉は明るい口調で、葉と雅に笑いかけた。
「秀吉様! No.1おめでとうございます!」
「ありがとう雅ちゃん。で、そこのオーナーはどうしちゃったの?」
「まあ、ちょっと淋しいなと思って」
素直に思いを口にすると、秀吉は勢いよく葉の背中をぱんっと叩いた。
「ちょっ、秀吉痛い!」
「気合い、入れてんの。落ち込んでいる暇ないだろ、むしろココはチャンスだろ! 信長様と家康のお客様を奪う!」
にやっと笑う秀吉に、葉は呆れた顔をした。
「なんていうか、ほんと逞しいよな。秀吉って」
「まあなぁ~。伊達に農民から天下人に成り上がってないぜ。じゃ、オレはさっそく営業いってくるよ~」
「いってらっしゃい」
「あ、No.1になったらデートって約束、覚えているよな。よろしく!」
秀吉は葉の耳元でそう囁くと、葉と雅のテーブルから離れた。
「……あの猿め」
「なんだか秀吉様は、一生ホストで出来そうですわね」
「……そんな気がする」
感心した雅の様子に、葉は同意した。
「引退おめでとうございます、家康」
「なんか険のある言い方だな、秀吉」
多くのお客様に囲まれた千代に秀吉は無理やり近づいた。すぐ傍に信長もいるがそちらはあまりにもお客様が多過ぎて近づけそうにない。
「いつの時代も、信長様は人気者だなぁ」
「全く。僕なんか天下獲って幕府まで作ったのに地味扱いだしさ」
ふてくされる千代に、秀吉は同意した。
「ああ、オレなんて猿だぜ、猿」
そう言って秀吉は猿のモノマネをする。
「ははっ、確かに似てる」
「失礼な奴だなぁ。ま、オレとしてはライバルも減ったし、今後も売上No.1を維持、いや信長様の最高記録を塗りかえるつもりだ」
「ふぅん。まぁ頑張って」
興味なさそうに答える千代に秀吉はむっとするが、すぐにニヤリと悪そうな顔をして、小声で囁いた。
「ま、ホストのライバルだけじゃなく、恋のライバルも減ったしね。葉とデートも約束しちゃったし。あ、言っとくけど健全なデートだよ。ただ俺に惚れて貰うよう頑張るだけ」
デートと聞いて、千代の眉間にしわが寄る。
「あいつは嫌がるに決まっている……」
「さーてどうだか。それに店を辞めちゃう人に言われても」
千代は秀吉の胸倉をつかむ。
「お前……」
「家康は、葉を見捨てるんだから関係ないだろ」
冷たく言い放つ秀吉に千代はかっとなり、秀吉の右頬を思わず殴った。
「きゃああ!!!」
「誰か! 誰か止めて!」
突然のことに周囲の人間はどよめき、悲鳴が上がった。
「ちょっと二人とも!」
慌てて近くにいた謙信が間に入り二人を止め、政宗が千代を抑える。
「喧嘩はダメですよ! 二人とも!」
政宗が叫ぶと、騒ぎを聞きつけた他のメンバーも集まってきた。
「何やってんだ? お前ら。客に迷惑だ」
「……」
信長が呆れた顔で二人の顔を睨んだが、二人とも何も言わない。葉も二人の元に駆け寄った。
「ちょっと! 顔は商売道具なんだから、顔を殴るのはやめろ!」
「……オーナー、そういう問題?」
傍にいた幸村が思わずつっこむ。
「顔以外でもだめよ、葉! とりあえず、二人とも落ち着いて」
謙信に取りなされて、とりあえず二人は大人しくなったが、互いに無言のままにらみ合う。
「ハイハイ! とりあえず解散! 秀吉は顔冷やして!」
謙信がパンパンと手を叩くと、全員戸惑いながらも元の位置に戻っていった。葉はキッチンから氷を持ってきて、秀吉の頬にあてた。
「大丈夫?」
以前より親しげな二人に千代は顔をしかめ何も言わず、周囲に謝罪してその後は何事も無かったように接客に戻っていった。
「ありがとう」
「いいけど、何を揉めてんの?」
「……んーちょっとね」
秀吉は苦笑した。まさか喧嘩の原因の張本人に理由は言いにくい。秀吉は曖昧な笑顔を浮かべてごまかした。
「何だか知らないけどさ、秀吉のことは頼りにしているから。千代と早く仲直りしてね」
傷を冷やしながら、葉が優しく笑いかけると、秀吉はぽりぽりと頭をかいた。好きな女に頼りにしていると言われて、喜ばない男はいない。しかもかいがいしく葉に手当てされる秀吉に神9のメンバーから羨ましそうな視線や嫉妬心、けん制のオーラを感じ、秀吉は優越感に浸った。
「殴られるのも案外悪くねぇな~」
「何?」
「いや、自覚のない小悪魔ってこえぇなって」
「小悪魔?」
葉は皆から好意を寄せられてるのにも気づかず、なんのことか分からず首をかしげるだけだった。
続く
イイネ!
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