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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.09.16
第10話 あたし、No.1になっちゃった!?(前編)
2004年3月31日
『天国のママへ 本当のNo.1の道は険しそうです……』
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No.1争奪戦が始まってから1週間後、葉は大きなため息をついた。
「何この無理ゲー……」
葉は更衣室に貼られた、売上表を眺める。
今のところの暫定1位は信玄である。だが昨日は信長だった。
「あ、葉オーナー! 秀吉様にドンペリ入りました!」
「ということは、今日の1位は秀吉ね~。今日最高記録じゃない? ほんと入れ替わり激しいわね」
謙信が感心したかのようにじっと売上表を見る。
安定して売上を上げる安定タイプの信長に、どかんと一発逆転タイプの信玄、日々売上が伸びていく成長タイプの秀吉がNo.1を奪い合っている。
「信玄さんがNo.1ならまだいいんですけど、あの人なんか忙しくなってきてホトトギスに顔出す日減ってるし……」
葉は更衣室のパイプイスにしがみつき、愚痴り始めた。
葉も葉なりに努力してこの前初めて4位まで上がったが次の日には9位まで落ち、大体5位~8位のあたりをうろついている。
「明智様も今日は4位だけど、この前一度2位まで上がっていますしね」
政宗も腕を組みながらうぅんと唸った。
更衣室には葉、政宗、謙信、幸村の4人だけで上位5位以内のメンバーはいない。このままでは勝ち目がないと下位メンバーの作戦会議を行っていた。と言ってもランキング表を見てああだこうだと言ってるだけで、具体的なアイデアは出てきそうにもない。
「っていうか、三人は俺がホスト続けること反対じゃないのか?」
葉は恐る恐る気になっていたことを聞いてみた。
「うぅん、そうね。嘘つかれていたのは腹立ったけど、葉が頑張ってたのは知ってたし。それに、アタシの目指すところは性別を超えた美神になることだから女のホストがいたって負けないわよ」
「葉オーナー、俺の料理いつもおいしそうに食べてくれるので、いなくなっちゃうと淋しいですもん」
「……最初から知っていたので」
あまり気にする様子のない一同に葉はほっとした。
「……ありがとう」
笑顔を見せる葉に、その場にいた政宗達はどきっとした。男だと思っていた時はそれほど気にならなかったが女だと分かると、やはり意識してしまう。
「あ、いえいえ」
政宗は真っ赤な顔して首をぶんぶんと横に振った。
戦国時代立派な武将であった彼らも、この時代だと普通の健全な青年達だ。男だと思っていた相手が女で、しかもかなりの美形だ。ときめくなと言う方が無理な話だ。
「……本当に罪深い子ねぇ」
謙信は一夜過ごしたいという爆弾発言をした秀吉の気持ちを今、理解した。女好きな秀吉は本能的に葉が女であることを分かっていたのだろう。
「……へ? 罪深い?」
葉はきょとんとした顔をする。謙信は何でもないとごまかした。
「……あの、葉様」
内心のとまどいを露とも見せず、幸村はランキング表を指差した。指差した先には『家康』と千代の名前が書かれている。
「? 千代がどうした?」
「……家康様、いつもなら3位まで入っているので」
「そういえばそうねぇ、あんま興味ないのかしら」
幸村に指摘されて葉も気がついた。確かにいつもなら上位3位には入っていた千代が3位どころか8~10位と下手すればTOP10からも落ちそうである。
「興味ないんじゃないですか、千代は俺がホストだろうとなかろうかと」
葉が拗ねた言い方をすると、謙信はそんなことないわよと反論した。
「まぁでも、ちょっと前から売上が伸び悩んでいるみたいなこと言っていましたよ」
政宗が言うと、謙信も苦笑した。
「あぁ、光秀と信玄がきてからちょっと家康は陰が薄くなっているものね」
同じメガネキャラで若干キャラがかぶっているというのと、元No.1の光秀に比べるとやはり華はない。
「まぁ、人の心配してる場合じゃないわ! うかうかしているとクビになるか、秀吉に襲われるかどちらかになるわよ!」
「はぁ……そうですね」
確かに謙信の言うとおりだ。葉は頭をかきむしった。その後それぞれNo.1に成り上がる為の案を出すが、結局この日はそのまま解散となった。
「ほんと、どうしようかなぁ」
皆が立ち去った後、一人唸っているとそこに遅番出勤の千代が現れた。
「おはようございます」
「あぁ、千代」
千代はランキング表の前に頭を抱え込んだ葉の姿をちらりと見るが、特に何も言わず着替え始めた。
葉は私服からスーツに着替える姿をじっと見つめた。気のせいか少し痩せたような気がする。顔色もあまり良くない。
「なんだよ、じっと見て」
「別に。ん? なんか千代、香水変えた?」
「……香水は変えてない」
特に互いに恥じらう様子もない。10歳の頃からずっと一緒いるのだ。着替えくらいで騒ぐ関係ではない。
(けど、前温泉で抱き締められた時はどきどきしたな……)
「そういえばさくらはNo.1になったらどうする?」
温泉の時に、裸で抱き合ったことを急に思い出し、葉―さくらは顔を赤くし、うつむいた。
「おい、さくら。ちょっとは人の話聞けよ。なんだよ、じっと見たかと思ったら無視したり」
そう言って千代は葉の両頬を両手でつまんだ。
「ちょっ、痛いよ~何するの!」
葉が顔を押さえて文句を言うと、千代は声をあげて笑った。
「あははは!! さくらの今の顔不細工だな!」
「なによぉ……元気なさそうだなぁと心配したのに」
お腹を抱えて笑う千代に葉は腹が立ったが、久しぶりに千代の笑顔を見た気がする。少しホッとして、葉も膨れながらも目元に笑みを浮かべた。
ごめん、ごめんと千代は葉の両頬を包み込み撫でた。
「……何かあったら僕が守ってやるからさ。誰かと競うのはあんまり得意じゃないのだけど」
真剣な千代の目に、葉は小さく頷いた。
「うん」
そして改めて千代をじっと見つめる。派手さはないが、清潔感と涼しげな美貌の持ち主である。
「何?」
「ううん、千代ってカッコよかったんだなぁって」
「ば~か。今更だよ。じゃあまた」
千代は葉のおでこを優しく小突くと、更衣室から出ていた。時計を見るともう開店時間3分前だ。
「行かなくっちゃ。お客様が待っている」
いつまで出来るかどうか分からなくても、少なくとも今はまだ葉はホストなのだ。
続く
イイネ!
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