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ポケパラ体入>ポケノベ>ホトトギス!>最終話 あたし、新しい歴史作ります!?(後編)
小説タイトル
イラスト:ヨルノトウコ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルホトトギス!【完】 更新日時2014.12.01

最終話 あたし、新しい歴史作ります!?(後編)

小説挿絵 結婚式と披露宴は滞りなく無事に終えた。さくらもブライドメイドとして花嫁の介添え人として役目を果たし、ほっとして二次会の会場であるホテルのバーの隅でくつろいでいた。

「お、さくらちゃん。ブライドメイド、お疲れ~」

信玄が近づき、さくらの隣の席に腰を下ろした。

バンドkaiのボーカリストとして芸能界で活躍する信玄は、カリスマ性と高い歌唱力が評価され、人気を誇っている。と同時に、数々の女優やアイドル達と浮名を流していた。

「信玄さん! お元気ですか?」

「元気! 元気! それにしてもさくらちゃん、相変わらず可愛い、いや綺麗になったね」

「ははっ、ありがとうございます」

「今彼氏いないよね? 口説いていい?」

「ええどうぞ。口説くのは自由ですけど、その口説きに応じるかどうかは別ですし」

にべなく答えるさくらに信玄はにんまりと笑う。

「ふぅうん。さっすが色男7人を同時に振った女。伊達じゃないね。それに、さくらちゃん、今、男より違うものになーんか心惹かれているみたいね」

「……」

信玄に指摘され、さくらはますます胸中がざわついた。

そしてそのざわつきは、信長達に再会した時から大きくなっていた。ホストとして活躍する秀吉と幸村。ホストを辞め、デザイナーとして道を歩み始めた謙信。ホストクラブのオーナーとして手腕を振るう光秀。コックとして、好きだった料理をする謙信。そして、過去から追いかけた愛する人と結婚し、ビジネスの世界で天下を目指す信長と、それを支える千代こと家康。

さくらは、彼ら戦国武将がどうして今の時代にタイムスリップしたのか、研究の合間に色々考察をしたのだ。

さくらは科学の研究者ではないので、『タイムスリップ』のメカニズムは分からない。しかし、彼らが何故タイムスリップしたのかは分かるような気がする。

信長いわく、花嫁である『奈々』は過去である『戦国時代』にタイムスリップしたという。そして信長は未練のあるまま本能寺で死んだと聞いている。しかし、今現代で生きる信長にはその未練の分を生きているように見える。

千代も一度『信長の下で天下統一を助けたかった』と漏らしていた。秀吉がNo.1にこだわるのも、天下統一は出来たが、豊臣家が確固たる地位を維持する前に死んでしまった。

今目の前にいる、信玄も織田信長より優れた名将と言われつつも、夢半ばで病に倒れた。他の武将には聞いてないが、今懸命に生きる彼らも何かしら未練を抱えたまま、死んでいったのだろう。

彼らのその強い未練が、現代にタイムスリップできた理由かもしれない。

(なーんて全部推測でしかないんだけどね)

それよりもさくらは懸命に生を生きる彼らが羨ましかった。研究員の仕事も魅力的ではあると思う。けれどもさくらは過去の歴史ではなく、今生きる人達と向き合いたくなっていた。

「あたしは……今生きている人達を励ます仕事がしたい」

ホストを通じて人を元気づけることに、さくらは楽しさを、やりがいを感じていたのだ。

「ふぅん、それに気づけただけでも立派だ」

にやりと、信玄は笑った。

「でも、あたしもいい年齢です。遅くないですか? やりたいことに気づくのに」

さくらが落ち込むと、ぽんぽんとさくらの背中を撫でた。

「なーに俺達の時代は生きることさえ難しかった。……兄弟や家族でも殺し合う時代だ。けど今の時代なら、いつはじめたって遅くないはずだ」

「信玄さん……」

思わず、ようやく気付いた自分の想いに感極まっていると、千代が顔面蒼白でさくらの元に駆け寄ってきた。

「さくら!! 大変だ!!」

「? なぁに、千代。真っ青な顔して」

「おじさん、さくらのお父さんが見つかった!」

「え!!」

「元気にしてたよ!……けど」

姿を消した父の行方が分かったことにさくらも仰天したが、言葉を濁す千代に嫌な予感がした。

「け、けど?……何?」

「さっき分かったことなんだけど、元々さくらが返してた借金はおじさんが作った借金じゃない」

「え? じゃあ誰?」

あまりにも予想外な言葉にさくらは硬直する。

「……さくらのお母さんの実家の借金だったんだって。で、さくらに引き渡した借金もほんの一部で、おじさんはその倍の借金をまだ抱えている」

借金と聞いてさくらは気が遠くなった。また、借金に苦しむ羽目になると思うと頭が痛い。

「え、どうしてそんな大事なことをお父さまは隠していたの? というかどうして見つかったの?」

「おじさん、長年の過労がたたって入院したって連絡がきたんだよ。実はずっとおじさんの行方は僕が独自に探していたんだ。でも、見つけてよかったのか…・・・。ねぇ、さくら。以前の僕は何も出来ない幼馴染みでしかなかった。けど今は信長様の下でいくつかの事業を任されている。お金を稼ぐ手段ならある。……僕と結婚して、一緒に借金を返していかないか?」

「え……いきなり言われても」

思いがけない、プロポーズの言葉。そして父が亡くした母の為に懸命に尽くしていた事を知り、さくらはどうしていいのか分からなくなっていた。

溜まらず視線を彷徨わせていると、信玄と目が合った。そしてにやりと唇を歪ませた。一番最初に会った時と同じ顔だ。

「今度俺、芸能事務所の設立の話来ているんだけど、さくらちゃんマネージャーやってみない? 事務所で借金肩代わりするから、少しずつ返済していけばいいよ!」

「えっ! そ、そんな悪いです!!」

千代と信玄の間でさくらは慌てふためく。すると騒ぎを聞きつけ、さくらの元に人々が集まってきた。

「さくらさん! 俺今度ホテル独立して、レストランやるんですけどそこで働きます?」

「……僕も、返すのを手伝う。好きな人を助けるのは当たり前」

慌てふためく政宗に、落ち着いた様子で宣言する幸村。

「さくら~うちのデザインのモデルになる? あたしのデザイン評判できっとアンタも活躍できて、稼げるわよ。ま、元々あんたはアタシのミューズでもあるしね」

うっとりとさくらを見つめる謙信。

「何? まだ借金があるのか? 俺が返すからお前は好きに生きろ。俺をホストとして拾ってくれた礼だ」

そして太っ腹な提案をする信長。

「えーオレも代わりに返すよ! 家康みたいに一緒に返すなんてみみっちいこと言わないし! けど代わりに嫁に来て!」

便乗してさりげなくプロポーズする、秀吉。

次々から次へと皆が救いの手を差し伸べてきて、さくらは思わず泣きそうになった。引きこもり、千代に甘えていた8年前とは状況が変わっていた。このまま、誰かに甘えてしまってもいいのかもしれない。

けれども、さくらの中で素直に甘えられない想いがあった。

「ねぇ! 光秀!」

「なんだ? わたしにもプロポーズして欲しいのか?」

光秀にさくらは言い返した。

「違うわよ。ねぇ、あたしと光秀は『ホトトギス』の共同経営者だよね?」

「あぁ」

「上等」

「……ちなみにわたしとの結婚式の予約の枠も残っているが」

「そっちはいらない」

「そうか……」

すっぱりと振られ、落ち込む光秀をよそにさくらは考え込み始めた。成人したばかりで何も出来なかった時とは違うのだ。

「ねぇ、千代。お父さまがどこに借金しているか調べて貰っていい?」

「調べるだけでいいのか?」

千代が心配そうに言うと、さくらは頷いた。

「弁護士に相談して、真っ当に返せるように交渉するわ」

「けど、今……研究員の仕事だったか、それだけじゃ返済していくのは厳しくないか?」

信長も伺うようにじっと見るが、さくらは微笑んだ。

みんなの手助けは嬉しい。けれども助けて貰うだけじゃ、自分の足で自分の歴史は作れない。

「『ホトトギス』か……さくらちゃんには」

カンの良い秀吉は、さくらが何をするのか分かったようだ。

さくらは満開の笑顔で皆にほほ笑んだ。まるで春に咲き乱れる、『桜』 のような笑顔で。

「あたしは……あたしの力で借金を返します」


そして――

---

2014年5月。

さくらの父が立ち上げたホストクラブ『ホトトギス』は、光秀の手により関西でトップクラスのホストグループに成長していた。そして東京へ本格的に進出することになり、オーナーであった光秀も東京へと活動の場を移すことになった。

代わりにグループの本拠地である『ホトトギス』本店のオーナーとして、とある人物が経営に関わるという噂が本店に流れていた。

「なぁ、今日本店に新しいオーナーが来るって聞いたけど知っているか?」

「元オーナー兼No.1の身内だと聞いたが……?」

「あの、明智オーナーを出し抜いたっていう!? 」

「元々、名前だけはオーナーだった人だろ? どうせお飾りだろ?」

「ふーん。まあ誰が来ても一緒だろ」

厳しいオーナーと有望なホストの多くが東京に拠点を移したせいか、『ホトトギス』本店にはだれた空気が漂い始めていた。そんな中、一人やる気に満ち溢れたホストがいた。

「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」

「あ、新人くんだっけ? 店内のふき掃除してきて」

「はい!」

彼はまだホストになったばかりのアルバイトではあるが、関西屈指の人気店『ホトトギス』の本店で働けることに胸を躍らせ、意気揚々と店内を掃除していた。

「ねぇ、君。新人さん?」

「え?」

彼が顔を上げると、いつの間にか目の前に黒髪ロングの妙齢の美女が立っていた。小柄ではあるが、桜色のスーツの上からも分かるグラマラスなスタイルの女性である。

「はっ! はい! え、えっとお客様ですか? 申し訳ないです! まだ、開店前で」

慌てる彼に、女性は手を振った。

「違う、違う! 職場を見にきただけ。けど、いい収穫があったわ」

「え?」

ホストクラブで働く女性はいないはずと彼は戸惑っていると、じっと女性は彼を見つめていた。 

「あ、あの?」

「君、いい目をしているわね」

女性はそう言って、彼に微笑んだ。

「君、きっとNo.1になるわ。あたし、ホストを見る目あるのよ!」

「え、えっと……あなたはどなたでしょうか?」

「ああ、自己紹介が遅れたわね。初めまして! 今度『ホトトギス』本店のオーナーになる織田さくらです」

さくらはそう言って、未来のNo.1ホストに笑いかけた。

織田さくらの本当の歴史は、これから始まる。



【完】

■注意■

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