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New!!
2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.09.01
第9話 あたし、No.1目指します!(前編)
2004年2月
『天国のママへ 女ってばれちゃった……。けど、それより色々大変なことが!!』
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気を失った葉を仮眠室に寝かし、秀吉は非番の千代―家康に電話をかける。ベッドの上にねる葉の顔色はまだ青いままだ。
『はい? 寝てたんだけど?』
眠そうな声で千代が応じると、傍にいた光秀が秀吉の携帯を奪う。
「……家康。説明しろ。葉が女とはどういうことだ」
血相を変えて光秀が凄むと、千代は『……すぐにそちらに向かう』と答え、電話を切った。
30分後。Tシャツにジーパンに、ジャケットというラフな格好の千代が、息を切らせてあらわれた。
狭い仮眠室に横になった葉の周りに信長、光秀、秀吉、謙信、信玄、幸村、政宗のランキング上位である武将ホストのメンバーがいた。それぞれ、葉が女と言うことが分かり、複雑な表情を浮かべていた。
(この日がついに来たか……)
千代は心を落ち着かせる為に、一瞬だけ目を閉じ、手を胸にあてた。
「待たせた」
入口近くにいた光秀は眼鏡をかけ直し、きっと千代を睨んだ。
「家康。お前は確か昔から葉の家に住んでいたんだよな」
「ああ……」
千代は観念したかのように、深く息を吐く。もう、今更隠し事をしても無駄だろう。正直に話すしかない。
「女とは聞いてないぞ」
「男だとも一度も言ったことはないけどね」
皮肉げに返すと、襟元を光秀に掴まれる。
「家康! きさま!」
光秀が語気を荒げると千代は冷静にその手をほどき、尋ねた。
「葉が、彼女が女だと知ったのは、ここにいるメンバーだけ?」
「ああ」
信長が真っ青な顔のまま答える。幸い他のホスト達には葉が女であることはまだバレていない。不幸中の幸いかと千代は思った。店のスタッフ全員に伝わるとお客様にも葉が女であることがバレる可能性がある。そうなると流石に収拾がつかなくなる。
とりあえず今はここにいる全員に黙ってもらうことが先決だと、千代は思った。
「まぁ、いつかはバレるかと思っていたんだけど」
千代は肩をすくめて簡単に今までの経緯を説明した。借金返済と人材不足の為、ホストを始めたことを千代はあえて淡々と語った。偽りがばれた時に下手に感情を交えると事態がややこしくなる可能性がある。
そして、葉―さくらが抱える借金のおおよその額を皆に伝えた。
「……まさか、女の子の身でホストなんて」
事情を全て聞いた謙信は心配そうに葉を見つめる。葉はまだ目が覚める様子はない。
「借金の返済……ですか。確かに最初から女の子みたいに可愛いなとは思ってましたけど、本当に女の子なんて」
政宗は落ち着きなく指で自分の唇を撫でた。
誰もがどうしていいか分からず、重たい沈黙が部屋の中に流れる。皆、嘘をつかれていたことに対する怒りよりも、戸惑いの方が大きいようだ。
すると一人、口を開く者がいた。
幸村だ。
「……あの、僕は最初から葉さんが女性なのを知っていました」
普段あまり喋らない幸村の言葉に、一同戸惑う。
「知っていた?」
千代が驚きの声をあげると、幸村はゆっくりと頷いた。
「……はい。というか、何故皆さんが気づかなかったのかが疑問ですが」
幸村の毒の効いた言葉に皆一瞬顔をしかめるが、確かに言う通りなので反論が出来ない。
「まぁ何かしらの事情があると思って、あえて言わなかったのですが。まぁ、僕と政宗はオーナーの家に住んでいるから余計気づいてたってのありますけど」
幸村はフォローのひと言をつぶやいたが、政宗はぶんぶんと首を横に振る。
「いや、俺は全然気づいてナイナイ!!」
「……まあ政宗は鈍いので仕方無いと思うんですけど」
「うぉい!」
政宗の抗議を無視して、幸村は話を続けた。
「光秀様、秀吉様辺りは勘づいていませんでした? あと信長様も元々知っていましたよね……」
「あぁ……」
そもそも光秀の場合、初対面の時に葉は女性の姿をしていた。後で実は男でホストだと言われた時に驚きがあったので、女だと言われた今の方がしっくりきていた。
「オレの場合は、女だったらいいなと思ってたんすけどね」
秀吉は喜んでいいのか、怒るべきなのか分からず、戸惑いの表情を浮かべていた。確かに葉に心惹かれ、男だと思い込み悩んでいたが、いざ実は本当に女だと言われるとどうすればいいのか分からない。
「……なんにせよ、人材不足でホストを始めたのならば、もうホストはしなくていいだろう。今は他にもホストがいる」
光秀が眉間にしわを寄せながら言う。もっともな意見なので誰も反論出来なかった。確かに、葉はもうホストをする必要はない。千代さえそう思い始めていた時だった。
「ダメ……」
ベッドからかすれた声が聞こえた。
「葉?」
信長が葉の元に駆け寄る。まだ顔色は青いが、ようやく葉は意識を取り戻したらしい。
「皆、騙していてごめん。けど俺は、ホストを続ける」
横になったまま、葉はきっぱりと宣言した。
「けど……」
謙信が心配そうに声をかける。
「この店のオーナーは俺だ。売上だって上位だ」
葉はオーナーでありながらも、神9という売上の上位クラスに入っていた。上位3位こそまだないものの、5~10位には入っている。
「借金は仕方ないが、ホストは辞めてもいいんじゃないか? オーナーとしてだって収入はあるはずだ」
確かに光秀の言う通りだ。
「それでもホストをやめると収入は減るし、まだ今の中途半端なまま辞めたくない。お客さんだっているし」
「……けどホストとしての売上は下がっているだろう」
光秀は冷たい目で葉を見た。
確かにオーナーとしては収入は変わらないが、ホストとしてはここ最近信玄に辞めることを伝えられてから、今後について迷いが出たせいか売上が下がったのも事実だ。しかし葉は負けじと光秀を睨み返した。
自分自身、ホストを続けるかどうかには迷いがある。けれどもそれを他人に決められるのはまっぴらごめんだと思った。
「売上は取り戻す」
「はぁ、葉と同じくらいの売上なら他にもいるだろ。代わりはいる」
その言葉に葉はカチンときた。
「……この店でNo.1になったら続けてもいいのか?」
「ホストは実力社会だからな。なれるなら考えてやってもいい」
光秀も目を細めて、葉をじっと見る。
「はいはい、皆ちょっと注目!」
火花を散らし合い、にらみ合う二人を遮るかのように、信玄は葉と光秀の間に体を滑り込ませた。
「実は皆さんにお知らせがあります!」
信玄はそう言ってぱんっと手を叩く。
「は?」
光秀が顔をしかめると、まあまあと信玄はいさめた。
「はい、落ち着いて聞いて。光秀。そんなんだからお前はいつまでたっても悪役癖が抜けないんだよ」
「悪役癖!?」
光秀は顔を真っ赤になる。
「……あぁ、言い得て妙ですね。光秀さん、この時代の戦国ゲームとか小説で悪役多いですもんね」
幸村がぽんっと手を叩くと、本能寺の変で討たれた信長と光秀を除いて、その場にいた一同はくすくすと笑い始めた。
ようやく場の雰囲気が和らいだ様子を見て、信玄はほっとした表情を浮かべ、光秀をなだめる。
「まあ、葉オーナーが女だったってのはまあびっくりだし、光秀が認められないっつーのも分かる。けどまあそんなたいしたことじゃないだろ」
「ええ、いやたいしたことですよ!」
光秀が食い下がると、信玄は面倒臭そうに口をとがらせた。
「ん~葉が女だったことより、どっちかっていうと俺ら武将が現代にタイムスリップしてホストしてることの方がたいしたことだと思うが。しかもこんなに大量に」
もっともな信玄の意見に、光秀は言葉に詰まった。
「あぁ、まあ確かに」
政宗は金髪の髪を揺らして深く頷いた。全員、死んだと思ったら若返ってこの時代にきていたのだ。今でこそ馴染んでいるが、それぞれ現代に来た当初は苦労をしている。
「まあ、未だに葉は僕のこと家康って信じてくれませんけどね」
不服そうに千代が憮然としたで文句を言うが、信玄は苦笑するのみだった。
「ま、そういうことだから色々小さいことでもめるのはやめろ。あ、あとお知らせだが俺はホストを辞めるから後は頼んだ」
唐突な信玄の報告に、その場にいた全員がどよめいた。
続く
イイネ!
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