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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.09.22
第10話 あたし、No.1になっちゃった!?(後編)
「いやぁ、これはびっくり」
No.1争奪戦最終日、ランキング表は誰もが予想しない結果が起こっていた。
「……千代がNo.1?」
開店前、葉は唖然としてランキング表を見つめていた。しかも圧倒的な差を開けての1位である。
葉以外のホストのメンバーも茫然としていた。確かに千代はランキングの10位以内にはいたがここのところ調子が悪く、ランキング落ちの可能性もあり、上位争いには食い込めないだろうと予測されていた。しかし、千代の猛攻は1週間前から始まった。ホストクラブ『ホトトギス』に予想外のお客様が増えたのだ。
「流石。伊達に天下獲りの人じゃないわね……」
謙信は顔に手をあて、信じられないとゆっくりと首を振った。
「……昨日も家康様のお客様、来ていましたけど」
幸村が言うと謙信は複雑な顔をした。落ち着きなく手首をくるくると回す。
「うううん、売上には繋がるだろうけどあたしには無理だわ」
千代のメインの客層、は他のメンバーからすると大変狙いにくいところであった。出来なくはないがある程度慣れが必要だ。だからこそ対策の為に千代はあえて1週間前から取り組んだのだろう。
「あぁ、まさか年配や未亡人を狙うとは……」
信長は感慨深げに腕を組んだ。千代も美形ではあるが、信長や光秀、謙信のように圧倒するような美貌の持ち主ではない。
また秀吉のように極端にコミュニケーションスキルが高く、駆け引きを楽しむ色恋営業も得意ではない。だがホストにそぐわない爽やかな清潔感と誠実な姿勢はずば抜けていた。その為ある一部の層、未亡人や年配層から圧倒的に人気があった。彼女達は好青年で親しみやすい、千代を好んだのだ。
キャッチの段階から狙いを絞り、千代はNo.1争奪戦最初の1週間に、その層を開拓していたのだ。そして狙い通り、No.1の座を見事射止めたのだった。
「香水じゃなくて、あの香りはお線香の匂いだったのか……」
葉は千代の戦略に感心していた。
「……年配のお客さんで稼ぐとは考えつかなかったなぁ」
秀吉は完敗だと言わんばかりにうなだれていた。
「あ、でも今日徳川様、休みですね。休日届け出しています」
政宗は更衣室に貼ってあるシフト表を確認した。
「まぁここまで差を開けられると、正直1日くらい休んでもいいっていう余裕なんだろうな」
信玄はつまらなさそうにランキング表をもう一度見た。
1位は家康、2位は秀吉、3位信長、4位信玄……と家康、千代以外は大方予想通りの結果である。
「5位か……」
光秀はランキング表を見ながら手を握り締め、壁を軽く殴った。相当悔しそうである。
「まぁ光秀は、太客とタイミングが合わなかったのが残念だったわね」
謙信が慰めるが、光秀は唇をかみしめたままだ。
葉もランキング表を見つめながらも落ち込んでいた。光秀がNo.1でないのでクビは逃れたが光秀より下の6位だ。
「結構頑張ったのになぁ……」
とにかく今日は最終日。出来る限りのことをやるしかないと、葉は決意した。するとそこへ、スタッフが更衣室にやって来た。
「葉オーナー! 指名です。VIPルームへお願いします」
「はい!」
元気よく返事をして、VIPルームに向かうと思わぬ指名客がいて、葉は戸惑った。店を拡大してから作ったVIPルームには年配の女性と何故か千代がいた。
「…ホストクラブ『ホトトギス』は女性と同伴なら男性も来客していいよな」
「……まぁそうだけどさ。何? 勝利の美酒を飲みにきたの?」
ロイズ製の革張りの高級ソファに座る千代の姿に、葉は頭を抱えた。千代の隣にいる年配の女性は笑みを浮かべるだけだった。歳は60代くらいだろうか。白髪を丁寧にまとめ、ライトグリーンのシャネルのスカートスーツを着ている。皺はあるが顔立ちは整っており、品のいい格好をしたその女性は現代の貴婦人のような雰囲気を醸し出している。確かこの人は千代の一番の太客だったような気がする。
「うちの店、男が指名しても問題なかったよね? 謙信も信長殿の客だったし」
「まぁ特に禁止はしてないけど……」
葉は訳も分からず頭をひねると、にやりと千代は笑った。
「じゃあ、僕は今日、葉を指名する。そしてこの1カ月の売上分のお酒を出して」
「……は?」
こうして、「ホトトギス」No.1争奪戦は最後の最後に、葉が思わぬ方法で首位になって、幕を閉じた。
「オレの頑張り、なんだったんっすか……」
「……一夜過ごしたいとか言うから、家康さまが本気出したんじゃないですか? 昔と同じくイマイチ詰めが甘いですね、秀吉様」
その日の閉店後、更衣室で秀吉が海よりも深く落ち込んでいるところに、幸村が毒を吐きとどめ刺した。
「うっ、幸村。厳しい……政宗ぇ~」
「あ、えーと皆さんお疲れ様です~」
政宗は秀吉に救いの目を向けられたが、あえて気づかぬフリをして、その場を立ち去って行った。
「……本当に笑える実力社会だなぁ」
その様子を見ていた信長は苦笑するしかなかった。
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ホストNo.1争奪戦から4ヵ月後の2004年7月。
「海~~~~!!!!」
葉―さくら達、神9のメンバーは何故か海に来ていた。
さくらが嬉しそうにはしゃぐ姿を、一同複雑な目で見ていた。
「何あれ、目に毒。暴力っすよあれ」
「昔から見てくれとスタイルだけは無駄に良かったからな……」
秀吉と千代はそう言いながらも、さくらの水着姿をじっと凝視していた。さくらは白いフリルのついた、可愛らしいビキニ姿であった。普段はさらしで隠されている豊かな胸はあらわになっていた。
さくらは二人の視線に気づかず、無邪気に海ではしゃいでいた。
千代の戦略により本人の望まぬ形ではあるが、No.1になったさくらの願いは「信玄さんも含めてもう一度みんなで旅行に行きたい」と言うものだった。
さらに、さくらの男装中には行けなかった海で泳ぎたいという希望もあり、白浜に一泊旅行となったのだ。
「あれ、何カップだろう」
「……D? E?」
政宗と幸村がさくらの胸のサイズについてひそひそと話していると、信長が軽く二人の頭を叩いた。
「やめんか、お前らみっともない。そんな目で葉を見るんじゃない!」
「はしたないですね」
光秀も冷たい視線で睨みつける。
「いや、男の本能として逆らえないですよ」
「……仕方ありません」
政宗が抗議すると、珍しく興奮した面持ちでぶんぶんと幸村が頷いた。
「はぁ~葉オーナー、スタイルいいし、可愛いですよねー。ああいう子と付き合いたいなー」
「……抱き心地良さそうですよね。嫁に欲しいです」
政宗が熱っぽい視線をさくらに向け、幸村はさらりと爆弾発言をする。そんな二人の様子に信長は険しい顔をして、低い声で威嚇した。
「お前らの嫁にはやらん!」
「信長……あんた、葉の父親みたいねぇ。まぁ可愛いから気持ちはわかるけど」
謙信が指摘すると、信長はそっぽを向いた。
「どちらかというと妹みたいなもんだ……」
そう言って信長はさくらの元に駆け寄り、全員の視線を防ぐようにボール遊びを始めた。
「あ、いいな。俺もいこうっと!」
「僕も」
「あたしもいくわよ~」
政宗、幸村、謙信もさくらの元に行き、ボール遊びに混じり始めた。
「はぁ、食事買ってくる」
光秀はため息をついて、海の家に向かっていた。
「元気だなぁ」
信玄は笑いながら、砂浜にパラソルを立てくつろぎ始めた。
信玄はすでにホストを辞めていたが今日の為に、わざわざ仕事を休んでまで一緒に旅行に来ていた。
「信玄殿は泳がないんですか?」
千代はボール遊びに混じらず信玄の隣に腰を下ろした。
「甲斐の国には海がなかったからな。あまり泳ぎは得意ではないのだ」
「あぁ、そうでしたね。秀吉は?」
秀吉もいつの間にか、信玄が広げたピクニックシートの上に寝転がっていた。
「何か今、そんな気分じゃないっすよ」
秀吉の目線の先には信長とさくらの姿があった。一時期距離はあったものの、相変わらず仲は良いようだ。
「妹ねぇ……あぁ、オレ、もう一度ちゃんと告白する!! そしてあいつを抱く!」
突然の秀吉の宣言に千代はぎょっとした。
(絶対秀吉とさくらを、二人きりにさせないようにしよう)
固く、心の中で千代は誓った。
「はっはっはっ! 若いっていいねぇ~」
恋に戸惑い迷う秀吉と千代の様子を見ながら信玄は楽しそうに笑った。
そして、その日の夜。事件は起こった。
「ここ、どこ?」
「洞窟だと思う」
千代はぽりぽりと顔をかいた。さくらは千代の肩を軽く殴る。
「いや、そう言うことじゃなくて!!」
さくらと千代はとある事情により、海岸にあった洞窟に迷い込んでいた。二人は水着の上にパーカーという軽装である。いくら夏とはいえ、夜風が吹き、海水が足元を濡らし、彼らの体温を奪っていく。
さくらも千代も望んでここに来たわけではない。秀吉の魔の手から逃げようとしたらいつの間にか迷い込んでいたのだ。
「まぁいわゆる、遭難だね。これ一種の」
千代の諦めた様子に、さくらは気が遠くなった。
「なんでこうなるの……」
葉がホストをはじめて1年と7カ月。残り借金4億3,780万円。
続く
■注意■
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