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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.05.26
第2話 あたし、ホストになります!(前編)
2003年1月27日
『天国のママへ。あたし、織田信長とホストをするみたい』
1月20日 朝
さくらと千代は、男を連れ自宅に戻っていた。自宅に戻った時には12時を過ぎていた為、詳しいことは次の日に話し合うことになった。
が、さくらは千代から思いがけない告白を朝から聞かされることになった。
「さくら、以前から言っていたけど、僕は徳川家康なんだ」
真面目な顔で告げる千代の顔をまじまじとさくらは見つめた。
「は?」
朝からこの幼馴染は寝ぼけているのだろうか。
「で、あの人は織田信長なんだけど」
やっぱり寝ぼけているとしか思えない。さくらはうなった。
「千代……」
「ん?」
「今の話、マジ?」
「残念ながらマジ」
「……?アーユー家康?」
「イエス、アイアム、徳川家康。幼名。竹千代」
「リアリィ?」
「イエス!リアル!」
さくらもまだ完全に寝ぼけている為か、訳の分からない片言の英語のやり取りを千代と交わした。
千代曰く織田信長だという男は、織田家のソファに横たわっていた。まだ意識が戻る様子はない。千代が傷の手当てや汚れをふき取り、着替えを全ててきぱきと処置をしたので、だいぶすっきりとして見える。しかし千代の服を着ている男の顔はどう見ても戦国武将には見えず、20代前半の今時の青年にしか見えない。
男が織田信長というだけでも信じがたいのに、10年近く連れ添った幼馴染の思わぬ発言にさくらは頭が混乱していた。
「ええと、もう一度確認するね。この人は織田信長で、恐らく過去からタイムスリップしてきたと」
「うん」
さくらは青年が横になったソファの隣にある、リビングにある一人用のソファに腰をかける。千代はソファーには座らず、腕を組み立ったままだ。
「で、何で彼が織田信長というのが分かるかというと、自分も徳川家康で、過去から来てるから、知っていると」
「そうそう」
「えぇー」
「えぇーって。折角の人が真実を話したというのに……」
思わず気のない声を出したさくらに、千代は不満げな顔を見せた。
「いや、幼馴染がいきなり『僕、家康』とかいたら普通信じられないでしょ!」
「いや、だから僕は昔から家康だ! って言っていただろ! 拾ってくれたおじさんは信じてくれたぞ!!」
そういえば信長について熱く語ると、昔から自分は家康だから複雑だ、みたいなことは言われたような気がする。
「ええ、だってちょっとイタイ子くらいしか思わなかったし」
自分が信長派だから、意地悪で千代は家康派だと言ってるのだ、くらいにしか思っていなかった。
「ひどっ! お前、ほんとそういうところ、酷い!」
「あーまあいいや。で、この人どうする?」
「お前信じてないだろ!」
「はいはい、信じる、信じる。でさ、徳川千代さん、いい病院教えようか?」
「やっぱ、信じてないだろ!」
わめく千代を無視して、さくらは考え込んだ。そしてもう一度、青年の顔をじっと見る。
鼻が高く整った顔立ち。きりっとした眉毛。そして今は閉じているが、目は切れ長で印象的であった。傷だらけではあるが、女性にウケそうなやや女性的な綺麗な顔をしている。
「まあ、彼が織田信長かどうかは置いといて、彼が起きたらホストにスカウトするわ」
「は?」
千代があんぐりと口を開けた。
「だから、ホストにスカウトしようかと思って。この人、モテそうな顔しているし」
「いや、さくら、お前……信長様をホストにって……」
「え、だって」
さくらと千代が騒いでいると、ついに男が目を覚ました。
「うっ……ここはどこなんだ?」
「ここは神戸にある芦屋の、あたしの家です」
さくらが答えると、じっと男はさくらの顔を見る。
「貴様は誰だ? ん? お前は家康か? 少し見ぬ間に若返っていないか。あとその珍妙な格好は?……俺も着ているみたいだが」
千代を見て家康という彼に、さくらは戸惑った。
「やばい、中二病患者が二人いる……」
千代は無視して、男に答えた。
「……信長殿こそ、何故ここに? あの、信長殿、驚かずに聞いてくれますか? ここは未来です。西暦2003年。貴方が亡くなってから、421年後です」
信長が死んだとされる年が、1582年。そう伝えると信長と言われた男は目を見開いた。
「家康、貴様冗談がうまくなったな」
「冗談ではありません!」
千代は叫んだ。
(……えぇ?まじで?)
さくらは訳が分からず、二人のやりとりをじっと見守ることにした。
「僕は、2003年よりさらに10年前、1993年にここの家主に運よく拾われました……」
「……未来というならば、その証拠を見せよ」
その前に過去から来たという証拠が知りたいと、さくらは心の中でツッコんだが、シリアスな二人の様子にとりあえずまだ黙っておくことにした。
「少々お待ち下さい」
そう言って、千代は自分の部屋に戻り、あるものを持ってきた。
「……これは?」
「信長様、これは教科書というものです。歴史を記した書物ですね」
そして、千代は教科書を開き、信長にあるページを見せた。
「……あまり読めぬが、ここにあるのはもしや俺の似顔絵か?」
信長は教科書にある、織田信長の肖像画を指差した。
「えぇ、貴方が本能寺で死に、秀吉がその後を継ぎ、家康、俺が幕府を作ったとこの書物には書かれています」
だめだ、もう黙っていられない。さくらはおずおずと口を開いた。
「……えっと、全然事情見えないんですけど、とりあえずお名前、教えてもらえませんでしょうか。あ、あたしは織田さくらっていいます!」
男がピクリと反応する。
「織田……?か、俺と同じ名前だな。俺は織田信長。本能寺で、確か自害した……はずなんだが」
自信なさげな回答にさくらはもう深く考えるのを辞めた。
「ええと、貴方が織田信長さんだろうが、千代が徳川家康とかもうどうでもいいです! 信長さん、単刀直入にいます! あの、ホストになりませんか!!」
「……ほすと?なんじゃそりゃ」
「ええと、私もよく知らないんですけど……」
会話を続けようとすると、千代が大きな溜め息をついた。
「はぁ、信長殿……後で詳しく説明します。とりあえず信長殿が混乱するからちょっと二人で話しさせて。店に行って掃除でもしとけば?」
「え?いやホストの話をもう少し」
「いいから! とりあえず信長殿も今はまだよく分かっていないから!!」
「あたしも未だに自分の状況が良く分かんないけど!!」
「……とりあえず、今は二人で話させて」
頭を抱えた千代は、そう言って問答無用でさくらを自宅から追い出した。
「……あの人なら、No.1になれそうなんだけどなあ」
さくらは仕方なくホストクラブ『ホトトギス』に向かう。ホストクラブの店内は一見綺麗に見えるが、よく見るとほこりがうっすら積っていた。千代の言う通り、掃除はしておいた方がいいだろう。
未だにホストクラブで、自分が何をすればいいのか分からない。借金だって沢山ある。けれども気のせいだろうか、昨日よりさくらの足取りは軽かった。自分が好きな歴史上人物、織田信長。それと同じ名前の彼は酷く頼りなく見える。
けれどもさくらは彼がホストとして活躍する姿が何故か想像出来たのだ。
続く
イイネ!
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