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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.11.17
第14話 あたし、新しい道に進めません!?(後編)
卒業イベントでもあるバースデーの前日、さくらは自宅で体を休めていた。
「この家とも、お別れかぁ」
千代と信長が去ってから、幸村と政宗と家に住んでいるがさくらがホストを辞めたら二人とも出ていくので、自宅を売り払うことを決めていた。
「おはよーございます」
「政宗、おはよーってもう16時だけど」
政宗はTシャツにジャージというラフな格好で眠そうに目をこすりながら出てきた。
「明日、バースデーイベントですねぇ」
「うん、なんかあっという間って感じだけど」
No.1になってから数カ月あったはずなのに、時間は瞬く間に過ぎて行ってしまった。
「淋しいですね。俺、葉オーナーと一緒に過ごして楽しかったので。……もっと一緒にいたかったです」
真面目な顔をして、顔を赤らめた政宗に、さくらは風邪だろうかととんちんかんな心配をしていた。
「うん、あたしももっと皆と一緒にいたかったなぁ」
皆といわれて政宗は少しがっかりした表情を浮かべながらも、さくらに笑いかけた。
「そうだ! 明日、イベントが終わったら俺達だけで誕生日会しましょーよ! この家もなくなちゃうし。お別れ会みたいな感じで」
「いいけど、バースデーイベントも終わるの遅いと思うけど?」
「大丈夫です! 俺も幸村も、次の日休み取っていますから」
すると政宗はガッツポーズをした。
「うぉい。ってかよく光秀も許したな」
「光秀さんも有給ってか、全員オーナーのバースデーイベントの翌日は、休みをとるんで、臨時休業になりました」
さくらは思わずくらっとめまいがしたが、それだけバースデーイベントに気合いを入れて祝ってくれると言うことなんだろう。一体どんな騒ぎになるのだろう。
「ちょっと肝臓に効く薬を買っとこうかな」
大酒飲みのさくらでも流石に不安がよぎる。
「あ、大丈夫です。幸村がダースで肝臓に効くサプリとドリンクを買って用意してくれてます!」
「時々、無駄に手際がいいよね、幸村は」
手際の良さが益々不安を煽るが、今後について悩むのがバカらしくなってきた。こうなったら全力で楽しもう。さくらはそう思った。
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バースデーイベント当日。『ホトトギス』はいつも以上にお祭り騒ぎであった。
「きゃああ!!!!」
黄色い声があちこちから上がる。しかし、彼女達の視線の先は葉ではない。思った以上に飲まされたり、絡まれたりはない。けれども予想外の事態が起こっていた。
「……主役、俺のはずなんだけど」
葉は一応店内の中央にある、一番目立った席に座っている。だが目立たない場所であるはずの、一番奥の席の人物達が目立っていた。信長と家康、そして信玄である。
「ねぇねぇ、あの人KAIのボーカルのsingenよね! 元ホストって噂、本当だったんだ!」
「隣にいるの、最近IT業界で人気のイケメン社長じゃん! インタビュー記事、あたし読んだことあるわよ!」
「え? もしかして信長社長の隣にいるのは、カリスマプログラマーの人? キヨス・キャッスル カンパニーの実権を握るのはあの人って言われているよね。ほとんどマスコミに出てこないって聞いていたけど、凄いさわやか好青年じゃん!」
信長達にお株を奪われ、葉はため息をついた。信長や信玄、千代がいる頃から来ているお客様はともかく初めて会う人々にとって彼等はそれだけ、目を惹く存在なのだ。
「ホスト辞められたのに、相変わらず凄い人気ですわねぇ」
雅が感心し、ほぅとため息をつく。
「今日は客として来ているって言ってたけど……。無駄にカリスマあるしね、あの三人」
ホストを辞めてからの活躍は葉も聞いてはいた。
信長と家康が起業した会社、キヨス・キャッスル カンパニーはWEBコンサルティング会社とオンラインゲームの開発会社としてIT業界で急成長し、マスコミからも注目を浴びていた。
元々ゲーム好きである家康は水を得た魚のように、オンラインゲーム開発を主軸に行っていると聞く。対して信長はキャバクラサイトのデザインコンサル事業を担当し、元々ある経営スキルを活かして、最近はキャバクラの経営のコンサルもしているそうだ。
「でもゲームの課金システムで前炎上していましたけど、一番の重課金者が開発者である家康さんって、前ネットで評判に」
「開発者も課金してゲームしてるんかい」
葉は思わずツッコみ、信長達を見た。気がつくと秀吉や光秀、謙信に幸村も信長達の周りにいる。神9の復活である。
「ねぇ、雅」
「なんでしょう? 葉様」
葉はずっと抱えていたものを口にした。
「あのね、もしもよ、もしもの話だけど、実はあそこにいる信長達が戦国時代からタイムスリップしてきた武将だとしたらどう思う?」
「……葉様、あの、今日御病気ですか?」
慌てふためく雅に、葉は頭を抱えた。
「いや、だから例え話だって」
「いえ、随分突拍子もないことおっしゃるなと、そもそもホストさんの源氏名が戦国武将の名前なのも、葉様の趣味かと思っていたくらいですし」
心配そうに葉のおでこに手をあて、熱は無いかと計り始めた。
「ええ、違うし!」
何か論点がずれている、と思いつつ葉は否定する。
(そりゃ現代社会で、タイムスリップとかいったら頭がおかしいと思われるよねぇ)
葉が平熱であることを確認すると、雅はうーんと頭をひねった。
「そうですわねぇ。もし、仮に彼らが本当に戦国武将だとするならば、平和な今の時代でのびのびと生きられてよかったのではないでしょうか」
目線の先には笑顔で過ごす元、『神9』のメンバーの姿。過去の彼等は分からない。けれども今の彼らはとても幸せそうに見える。
「……だな」
満面の笑みで騒ぐ信長達の姿に、葉は頷いた。
数百年前に争い合っていた若き武将達も、今の平和の時代だからこそ互いに笑い合うことが出来る。それだけでとても素晴らしいことなのかもしれない。
「ほんと、いい時代に生きてるんだな、あたし」
思わず葉は小声でつぶやいた。
勿論今だって色々あるが、戦国時代のように互いを殺し合うような時代ではない。不況だの、何だと言われているが今の日本には戦争は起きていない。
平和そうな彼らの姿に、葉は思わず笑みを浮かべた。
(ホスト辞めたらどうしようかなって思ったけど、まあ……今はいいか)
時間ならある。ゆっくり考えればいい。今の時代を好きに生きる彼らのように、葉も好きに生きればいいのだ。
そう気づくと葉はビールを一気に流し込み、笑顔で信長達の輪に加わった。
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「ふぅ……終わってみたらあっという間だったなー」
葉は最後のお客様を笑顔で見送ると、右肩をぐるりと回した。想像よりはましだったが随分と飲んだせいか、体がだるい。
「おつかれー」
ひらひらと手を振る信玄に、葉はため息をついた。帰ったと思っていたのに信玄がまだ残っていたのだ。
「オキャクサマ、営業時間ハオワリマシタ、オカエリクダサイ」
「はははっ、冷たいなー、ま、第二部と行こうぜ」
信玄は葉の肩を組むと、ばんばんと背中を叩いた。
「え、でもまだ片づけが……って痛いですよ、信玄さん。ってえ?」
信玄は抗議を無視して手を握り、VIPルームに葉を引っ張っていく。
「はいはい、主役登場!!」
ドアを開けるとそこには信長、千代、秀吉、謙信、光秀、政宗、幸村の姿があった。
「誕生日おめでとう!」
「あ、あの、片づけとか」
「他のホスト達にさせている。葉はもう少し他の奴らに仕事を振ることを覚えろ」
「まあまあ、お説教は今日ぐらい辞めときなさいよ、はいこれ。良かったら今から着てみて。誕生日おめでとう!アタシがデザインしてみたの」
謙信は憤慨する光秀を押さえて、葉にプレゼント袋を渡した。
恐る恐る開けてみると、中身はさくら色のベアトップのドレスであった。
「かわいい!」
「でしょー!」
「俺からはコレだ」
「僕はこれ」
「オレはこれ! 愛込めているよ~」
「まあ誕生日だ。受け取れ」
「はい、さくらちゃん。プレゼント。益々綺麗になってね」
次々に誕生日プレゼントを葉に渡していく。
信長からはさくらの形をした、ヘアアクセサリー、千代はネックレス、秀吉からはイヤリング、光秀からは靴、信玄からは口紅を渡された。
「あ、あの、みんな、ありがとう」
葉ではなく女性のさくらへの贈り物に対してどうしてかいいか分からず、プレゼントを抱き締めたまま固まった。
「ねぇ、着替えてみてたら? VIPルームの奥のお手洗いなら誰もこないし」
謙信がうきうきとした顔をすると、さくらは言われるままトイレに向かい、ドレスに着替え、最後に口紅を塗った。
「あ、あの、本当にありがとう。きちんと化粧していないから、ちょっと浮いているかもだけど」
いつもスーツ姿に比べ格段と女らしく、またベアトップの為、さくらのスタイルの良さも引き立っていた。
「おお、似合うなさくら」
「おーセクシーだな!」
素直に褒める信長と秀吉。
「いやーん! かわいい! さっすがアタシのデザイン!」
「さくらちゃん……うん、いいね」
さくらと自分のデザインも褒める謙信と、笑顔で意味ありげに褒める信玄。
「ふっ、馬子にも衣装だな」
「まぁ、……いいんじゃない」
憎まれ口を叩きながらも、さくらをじっとみつめる光秀と千代。
「葉オーナー似合いますね! あ、俺からはこれです!!」
政宗はバースデーケーキをさくらの前に置いた。
「あ……、ありがとう」
さくらは嬉しさのあまり何も言えず、うつむくだけだった。
そして全員が可愛いと褒める中、一人だけプレゼントを渡さなかった幸村がつかつかと近寄っていく。
「ん?どうしたの幸村?」
さくらが尋ねると幸村は背中に隠していた、薔薇の花束をさくらに差し出した。
「……オーナー、いえ織田さくらさん」
「はい?」
訳も分からずとりあえず、花束だけ受け取る。幸村にしては珍しく、緊張した顔をしている。
「僕は……さくらさんが好きです」
「は?」
「……ホストを卒業される時が来たら、言おうと思っていました。女性らしくなってホストを続けるオーナーが痛々しくて、辞めて欲しいと言って申し訳ないです。けど、それも今日の為です。付き合って下さい」
「え」
「ええええええ!!!」
唐突な、告白にその場にいた全員が、驚愕の声を上げ、誕生日の宴は思いがけない騒ぎとなった。
そういえば幸村の一言が原因で辞めることを決意したことを思い出し、さくらは複雑な気持ちになった。
(なんか、やたら幸村からあたしのこと、見ているなあって思っていたけど。まさか監視するためじゃなくて、も、もしかしてあたしのことが好きだったから見ていたってこと……?)
さくらは突然の告白に、どうしていいか分からなくなっていた。そしてこの幸村の告白が、また新しい嵐を引き起こす。
「ねぇ、さくら。アタシも言いたいことがあるの」
謙信が真剣な顔でさくらの方を向くと、信長と信玄を除いて、その場にいた全員が慌てて手を上げた。
「オレも」
「僕もだ」
「わたしもだ」
「え?」
さくらは訳が分からず、あんぐりと口を開くことしか出来なかった。
嵐はまだ、始まったばかり。
続く
イイネ!
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