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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.10.20
第12話 あたし、一人ぼっち!?(後編)
次の日。偶然荷物を引き取りに来た千代と秀吉が更衣室で顔を合わせた。すると、千代の方がすぐに秀吉に頭を下げた。
「すまん。かっとなり過ぎた」
先に千代に謝られて、秀吉は複雑な気持ちになった。
「いいけど……。こっちもからかい過ぎた。悪かった。家康のあんな顔、初めてみた」
「いや……殴るつもりはなかったんだ。けど、葉を見捨てるとかと言われて……あいつのことになると、訳が分からなくなって、頭が混乱して……ごめん」
戸惑った表情で千代はじっと自分のこぶしを見つめた。
「もしかして家康さ、自覚ないの?」
「自覚?」
千代は首をかしげた。
「いや、葉に恋している自覚。朴念仁の家康が、恋ねぇ」
恋と言われて千代は慌てふためきながら、海で葉―さくらにキスしたことを思いだして顔が赤くなった。
「なっ……」
「まあまあ、じゃオレたち正式なライバルってことだな。ライバルだから言っとくけど、葉、また借金増えたからな」
「え?」
秀吉はこの前の借金取りとのいきさつを千代に話した。話の顛末を聞いて、千代はため息をついた。
「なるほど。新しい借金か……。色々すまん」
「まーいいよ。オレは返済なんていいって言っているんだけど、意地でも借金を返すって聞かないし。まあかわりにNo.1になったらデートしていいって約束も出来たしね」
考えるといっただけで、約束はしていない。けど義理固そうな葉なら時間くらいは作ってくれるだろうと秀吉は思っていた。
デートと聞いて千代はまた苦々しそうに顔しかめるが、諦めたように息を吐いた。
「まぁ正直今もまた殴りたいくらい腹立つが、借金の件は本当に助かった。それに僕と信長殿が『ホトトギス』を辞めたら、葉は秀吉には世話になると思う。……後は頼んだ」
「あぁ任せろ。ついでに葉のプライベートも任せろ!」
秀吉が調子に乗った途端、また千代の眉間に皺が寄った。千代は右手を上げこぶしを握り締めた。
「やっぱもう一回くらい、殴っとこうかな」
「ちょっ、暴力反対! まぁ、家康がホスト辞めるのって本当は将来的に葉を守る為だろ。ホストって長いこと出来る仕事ではないしな。それぞれのやり方でアイツを守ろうぜ」
「……あぁ。頼む」
千代は秀吉の肩を叩くと、更衣室、そして『ホトトギス』から去っていった。
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2004年9月11日
信長と千代が辞めた翌週の定休日。葉―さくらは秀吉に呼び出されていた。約束のデートである。
待ち合わせの地下鉄東梅田の次の駅、南森町駅であった。女性の恰好で来て欲しいと言われ、さくらはシンプルなグレーのワンピースを着ていた。
地下鉄を出て、指定された出口で秀吉を待つが、それらしき人はまだ来ない。
「早かったかなぁ」
待ち合わせは15時だが、今は14時45分である。信長と千代は会社の事業立ち上げの為にホストを辞めたが、同時にさくらの家からも出て行ってしまった。しかも今日は間借りしている政宗と幸村もおらず、急に広くなった居間にいるとなんだか落ち着かなかったのだ。
「よぉ、早かったな。オレの方が早いと思ったんだけど」
待ち合わせ5分前。7分丈のGパンにパンクのTシャツとアクセをつけたラフな格好で秀吉が現れた。
「ん、家にいても落ち着かなくて。今日は何?」
良く見ると秀吉は片手にスーパーの袋を持っていた。
「デートっていったけど、葉はまだオレに対してちょっと警戒しているでしょ」
あえてのしゃれっ気の無い恰好を指摘されているようで、さくらはぐっと詰まった。
「ちょっとね。まぁ、借金の件は感謝しているけどさ」
素直に告げるさくらに、秀吉は苦笑いした。
「あははっ、まぁキメキメでデートするのは今度にして、今日は定休日淋しく過ごしているであろう葉ちゃんと、楽しく飲もうってお誘い♪ 」
「二人で?」
警戒してじろりとにらむと、秀吉は頭をかいた。海の件を忘れてはいない。
「いや、地元、こっちで知り合った友達も来るから。女友達も来るし、政宗と幸村も来るから安心して」
大人数での飲み会と聞いて、さくらは少しほっとした。が、同時に疑問が湧く。
「飲み会にしては、ちょっと早くない?」
すると秀吉はちっちっと指を振った。
「飲み会っていっても店で飲むだけが飲み会じゃないよー! オレ、誰かさんのお陰で、貯金もすっからかんだし。家飲みだよ、家飲み」
さくらはぐっと言葉に詰まった。
「……ごめん」
「ちょっと、冗談だよ! 色々財テクしているから、へーきへーき! それに昔から金無いのには慣れてるし、元々家飲みの方が気楽に楽しめるから好きなんだ。ただ準備が必要になるから、葉にはその手伝いをして欲しいんだけど」
慌てて秀吉が慰めると、さくらはほっとした顔をした。
「分かった。何を手伝えばいい?」
「今オレんちの部屋の片づけを政宗と幸村がしているから、その間の買い出し手伝って」
「分かった」
さくらと秀吉は南森町の駅のすぐそばにある天神橋筋商店街に向かった。平日だというのに商店街は賑わっている。天神橋筋商店街は日本一長い商店街と言われている。さくらと秀吉は人の流れに乗って、飲み物や食べ物を買い集めた。
「お、ヒデちゃん今日は可愛い子連れてんな。彼女か?」
豆腐屋の店員らしき年配の男性が気さくに秀吉に声をかけてきた。どうやら顔なじみらしい。
「ちげーよ。今頑張って口説いてる最中!」
さくらは何も言えず、苦笑いするだけだった。
「おっ。じゃあ頑張れよ! 嬢ちゃん、コイツ女癖悪いし、ケチで、チビかもしれんが、いいとこも頑張って探せばあるかもしれんぞ!」
「おっちゃん、それ、フォローになってないから! そんなことはいいからおっちゃん、豆乳プリン! 今日6個ね」
「はいよー嬢ちゃん用に1個サービスしとく!」
そういって男性は手際よくプリンを箱に詰め、秀吉に渡した。
「ここのプリン、うまいんだよ」
秀吉はプリンの蓋をあけ、スプーンと一緒にさくらに渡した。さくらは受け取り、プリンを口に運んだ。ふわりと優しい甘い味が口の中に広がる。
「美味しい!」
「だろ! これ食べさせたかったんだよねー!」
嬉しそうに笑う秀吉の姿はとても無邪気で、どこにでもいる元気そうな今時の若者にしか見えない。
さくらは小さな頃から家にじっと籠もって本ばかり読んでいたせいか、快活な秀吉のような青年とのやり取りはとても新鮮に感じた。
「なんか、秀吉って凄いね。ほんと、どこいっても生きていけそう」
ぽつりとさくらが言うと、にかっと秀吉は笑った。
「まーな! じゃ、うち行くか! 政宗と幸村も待ってるし」
秀吉のマンションは商店街の入り口近くにあった。部屋は一人暮らしにしてはやや広めの1LDKだがインテリアは本棚とパソコン、あとはバンドのポスターが貼られている位のシンプルなものだった。
「部屋、綺麗だね」
さくらが感心すると、げっそりとした幸村と政宗が顔を出した。
「……僕らが部屋片付けたんですよ」
若干不満そうな顔で幸村が言うと、政宗も激しく頷いた。
「そーですよ! 豊臣様ずるいです! 俺達に掃除押し付けて、葉オーナーとデートなんて。俺も葉オーナーとデートしたいですよ! こっちはエロ本整理で大変だっ……痛! 殴らなくてもいいじゃないですか!」
「お前ら余計なこと言うな! ホラちょっと休憩がてらプリン買って来たから、黙れ!!」
「やったー! あそこの豆腐屋の豆乳プリン、俺好きなんです!」
政宗は嬉しそうにプリンを受け取った。幸村もちゃっかり受け取り、食べ始めていた。
「……オーナー、今日は女性の姿なんですね」
プリンを食べながら幸村は珍しそうにさくらを見た。
「ん、まあ。秀吉に言われて。変?」
「変ではないです。可愛いですよ」
さらりと褒められ、さくらは顔を赤くした。
「あ、ありがと」
「あの……ちょっといいですか? 仕事のことで相談が。二人きりで話したいんですが」
「何?」
幸村は素早くプリンを完食すると秀吉に仕事のことでと断り、さくらをマンションのエントランスに連れだした。
「相談って?」
何か幸村もやりたいことが見つかったのだろうか。そう思い、さくらは尋ねると、幸村からは思いがけない答えが返ってきた。
「僕はホストを続けます」
淡々とした表情で、幸村は告げた。
「そう、それは助かる!」
ほっとさくらが胸をなで下ろすと、幸村はすっと目を細めた。
「でも、その為にはオーナーにお願いしたいことがあります」
「何?あたしで出来ることならなんでも」
さくらがとんと胸を叩くと幸村は唇を一瞬かみしめ、強いまなざしでさくらを射抜いた。
「オーナー。いえ、さくらさん、でしたよね。貴方は早く店を、ホストを辞めてください。『ホトトギス』の為に」
「え?」
予想外の言葉に、さくらは声を失った。
葉がホストをはじめて1年と9カ月。残り借金1億9,200万円。
続く
イイネ!
3人がイイネ!と言っています。
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