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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.06.02
第2話 あたし、ホストになります!(後編)
1月27日
「ココがほすとくらぶというのか……」
信長は好奇心で目を輝かせた。
「肝心のホストがまだ、一人もいないけどね」
さくらは頭をかいて、答えた。
信長を拾ってから一週間後。
さくらは信長と千代の三人でホストクラブ『ホトトギス』に来ていた。
「家康、これは?」
棚に飾られた酒に信長を見つけると、酒瓶を掴み、千代の目の前に掲げた。
「それは酒です。異国のものですが」
千代はハラハラした様子で答える。まるで子どもに振り回される育児1年目の父親のようだとさくらは思った。
「ほぅ、是非共飲んでみたいものだな」
「あー、信長さん、それはお客様のだから飲んじゃダメ!」
さくらが慌てて止めると、信長は自分の顎を撫で、考え込み始めた。
「……ほすとになったら飲めるのか?」
信長はらんらんと目を輝かせた。
「あ、まあお客さんが信長さんを指名してくれたらだけどね」
さくらがそう答えると、にやりと酒瓶を抱えたまま信長は笑った。
「よし、ここが未来とかなんだか分からんが、分からぬことだらけで面白い! とりあえずほすとという奴になってみるか!」
「え、信長殿!!!?」
「わーーー!!! ありがとう! 信長さん!!!」
思わずさくらは信長に抱きついた。思ったよりも厚い胸板に、さくらはどきりとする。
「ちょっ、さくら! お前! 失礼だぞ!」
慌てて千代はさくらと信長をひきはがした。
「はは、貴様、面白い奴だな。アイツに似ている」
信長は特に気にせず、愉快そうに口をゆがめた。
「アイツ?」
「……名も思い出せぬのだが、未来から来たという女に会ったことがあるのだ」
「「え!!」」
千代とさくらは声を上げた。
「確かきゃばくらじょう?という仕事をしていた。詳しくは思い出せぬのだが」
「……戦国時代にキャバ嬢?」
意味が全く分からない。ますますさくらは混乱したが、深く考えることは辞めた。とりあえず一人ホストが決まったことの方が今は大事だ。
「あぁ、まあよく覚えてないのだが、そいつには会いたいのだ。が、手ぶらで会うのは面白くない。さくら、と言ったか」
「は、はい?なんでしょう?」
「俺を、お前がほすとにしろ。コレは命令だ」
「喜んで!!」
思わず歓声をあげると、千代が冷静なツッコミを入れてきた。
「さくら、水を刺すようで悪いけど、流石に信長殿だけ一人じゃホストクラブは無理だよ」
「うーん……あ、じゃあ!」
さくらは何を思いついたのか、バックヤードからハサミを取り出してきた。
「……え?」
千代が止める間も無くさくらは景気よくハサミで、髪の毛を切り始めた。
「……ほう」
信長はにやりと笑い、千代は顔が青ざめていく。
「ちょっ、さくら、髪!!」
「ねぇ、千代。あたしも、ホストになるわ。これで、ホストは二人ね」
切った髪が部屋に散らばる。腰まであった髪は短く切られ、さくらは少年のような髪型になった。
「……ほんとにホストするの? さくら、客の相手とか出来んの?」
青ざめた顔のまま、千代はさくらに問いかけた。
「女が生半可な気持ちで髪まで切ると思う?」
思わずふんぞり返って答えると、千代は頭を振った。
「はあ……、分かった。僕も、ホストやるよ」
「え、ほんと?」
さくらはパッと顔を輝かせた。
「本当は他の仕事しようと思っていたんだけど、なんかさくら見ていたら不安になってきた。信長殿のことも気になるし、おじさんも心配するだろうし」
そう言って千代は深くため息をつき、散らばった髪の毛を知りとりと箒で掃除し始めた。
昔からなんだかんだ言いながらも千代は面倒見がいいのを、さくらは知っていた。
「ありがとう、千代」
「……どういたしまして」
「いい面構えだな。さくら」
さくらがにこにことしていると、信長が褒めた。
「ああ、けど、今後からあた……俺のことは葉、『ヨウ』と呼んでくれ」
「どんな字だ?」
信長が問うと、葉は空で字を書き始めた。
「植物の葉っぱという字で、葉。いいだろ?」
「……その名はどこから?」
千代が掃除をしながら代わりに答えた。
「おじさんの名前だね」
「……父親の名前か」
「あぁ。今まで千代の言う通り、あた、俺は父さまに対して、ロクに家族らしいことをしてこなかった。まあ借金とか凄く迷惑な話だけど、やっぱり父さまのことは一応心配だ。これも親孝行と思って、代わりに借金を返す!その為にも俺がホストやるぜ!!」
さくら―いや葉はそう高らかに宣言した。ホストについては全く何も知らないが、何故か上手くいくだろうという妙な確信があった。
「……本当に大丈夫なんかなぁ?」
葉の不敵な笑顔を見つめ、千代はまた大きくため息をついた。
――――
その後、葉達は店内を掃除や準備を行い、お店の体裁をある程度整えた。そこで試しにその日の夜に仮オープンをしてみようということになったのだ。
三人はスーツに着替え、千代の指導のもと、ホストらしい恰好で『ホトトギス』にいた。が、お客は一人もいなかった。
「暇だなあ」
「……一つ、確認だけどさ。さくら、いや、葉はホストについてどこまで勉強してきた?」
千代に尋ねられ、葉はきょとんとした顔で答えた。
「え?お店でお客さんとお酒を飲むのが仕事かと……」
「……キャッチとか、チラシ巻いたりとかした?」
「キャッチ?」
初めて聞いた言葉をそのままオオム返しすると、千代は頭を抱え始めた。
「ほんとにもう、おじさん、流石に恨みますよ!!」
「ええと、とりあえずキャッチって何をすればいいの? 千代教えて?」
首をかしげて尋ねると、千代はがっくりと肩を落とした。
「今からキャッチに行っても、もう遅いよ。もう! しばらくホストについて勉強会するよ! あまりにも葉は無知過ぎる」
「安心しろ、俺も全く知らん」
堂々と答える信長に、千代は噛みついた。
「信長殿もホストするなら、知って下さい!」
「ってか、なんで千代は知ってるの?」
ふと、前から気になっていた疑問を口にした。
「…たまにおじさんに言われて、店手伝ってたんだよ」
千代はノートを取り出し、二人の前に座り込んだ。
「いい?じゃあ説明するけど、まずホストってのはね……」
千代が口を開いた瞬間、店の扉が開き、一人の青年が、店に入ってきた。
「こんばんわー!!! あ、あれ?あの女の子は?」
「あ!」
葉は思わず声をあげた。青年は以前梅田で声をかけた人物だった。青年は名刺を片手に店の中にずんずんと入り、葉に近づいてきた。
「ん? 男ばっか? あの子はいないのかな?」
が、どうやら青年は葉がさくらであることに気づいていないようだ。
「あ、あの」
葉として名乗ろうとすると、千代が慌ててさえぎるかのように青年との間に入ってきた。
「要件は?」
「あー、この前逆ナンされた子にこの名刺を渡されてさ。んー? あ、あれ? お前どっかで……!あー!!」
青年はじっと千代の顔を凝視し、声をあげた。千代も最初は眉をひそめていたが、青年の顔を見つめ返した。
「……もしかして秀吉?」
「ちょっ! まさか家康? お前もこの時代にいたの? ちょっ、ウケるんですけど!!」
秀吉と呼ばれた青年は吹き出し、腹を抱えて笑い始めた。
そして、信長が秀吉に向かってひらひらと軽いノリで手をふる。
「お、秀吉じゃないか」
「あれ、信長様も!? なんでスーツ着てるんすか?」
「いや、ほすとという奴をやろうかと思ってな」
「え?」
三人の様子に戸惑っていると、千代が青い顔して葉の腕を掴み、バックヤードに連れ込んだ。
「ちょっ、な、何よ!」
「……いいか葉、絶対あいつに自分が女だと、さくらだと言うなよ」
千代はため息をついて、葉にそう告げた。
「え? なんで?」
尋ねると、千代は首を振った。
「俺の勘違いじゃなきゃ、あいつは豊臣秀吉本人に間違いない」
「……はい?」
家康に、信長、そして秀吉の登場に、葉は口をあんぐりと開けることしか出来なかった。
借金は、残り5億円。
続く
イイネ!
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