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ポケパラ体入>ポケノベ>ホトトギス!>第6話 『ホトトギス』大ピンチです!(後編)
小説タイトル
イラスト:ヨルノトウコ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルホトトギス!【完】 更新日時2014.07.28

第6話 『ホトトギス』大ピンチです!(後編)

小説挿絵 「……なんだコレは」

一ヶ月後、ホストクラブ『桔梗』に出勤した明智光秀は愕然とした。

店にホスト、いやホストだけでなくスタッフが一人もいないのだ。

いくらNo.1とはいえ一人では店は回せない。やむなく臨時休業をお客様に伝え店を閉め、ホストやスタッフの一人一人に電話やメールで連絡するが、誰も連絡つかない。

「どういうことだ?」

光秀は焦って誰かいないものかと店内をうろつくと、一番奥のVIPルームに人の姿があった。

「はろ~光秀さん。お元気?」

そこには茶髪のウイッグにブラックドレス姿で、瓶を片手にシャンパンをあおる葉の姿があった。

妖艶な葉の姿に光秀は一瞬見惚れた。

(誰だ? あの女は。そもそもお客様は全員帰したはずだが・・・・・・)

違和感に気づき、光秀はメガネをかけ直し笑顔を張り付けたまま葉に話しかける。

「あの、お客様、今日は臨時休業で」

「でしょうね。ホストもスタッフもいないんだし」

事情を知ったかのような葉の口ぶりに、光秀は顔を強張らせた。

「お前の仕業か?」

「ええ、光秀さんに今日はご相談があって」

葉はふふ、と笑った。

「……何の用だ」

腐ってもNo.1。迫力のある冷たい表情で葉を睨みつける。

「はは、怖い顔だな。悪い話じゃない。スカウトに来たんだ、光秀」

さきほどの柔らかい口調からぶっきらぼうな男言葉へと葉は意識して変えた。

「この一ヶ月、『桔梗』のホストとスタッフ達について全部調べさせて貰った」

「何?」

「君がどんなに優秀なホストでも、ホストクラブは一人では出来ないだろ。ホスト達には今日は休みだと伝えている。あと、店の電話番号とメアドは変わったからそこから連絡来ても出ないようにと通達している」

「何?」

葉はこの一ヶ月で千代にはインターネット経由で、秀吉には人脈を使って、内部からは幸村と政宗を使って店、ホスト、スタッフの個人情報はもちろん、店の売上、そして光秀の過去も調査したのだ。

葉は愉快そうに唇をゆがめ、光秀に持っていた書類を見せる。さっと光秀の顔が青くなった。

「それは……一体どこで」

「それは企業ヒミツ。光秀、お前『桔梗』に裏帳簿つけて、その金を全部養護施設に渡しているだろ。お前この時代に来てからその養護施設で育てられたらしいな。ホスト達の売上を抜いて支援なんてなかなか歪んだボランティアだな」

葉の持っている書類には裏帳簿の決定的なコピーデータと、養護施設の資料、そして養護施設への振り込みの記録が載っているデータが載っている。優秀なハッカーでもある千代と、目立たないことが得意な幸村が地道に証拠を集めようやく見つけた光秀の弱点であった。

当初の計画では光秀以外のホスト達の弱みを見つけ、全員『桔梗』を辞めさせるつもりだった。しかし、千代がインターネットで光秀の養護施設への援助の噂を見つけ、秀吉が調べてみたところ、思わぬ収穫があったのだ。

ホストが養護施設への援助というと一見美談に聞こえる。しかし裏帳簿で脱税した売上での援助なら話は別だ。現金商売で不特定多数を相手にし、領収書を発行しないことが多いホストクラブは裏帳簿をつけやすいと千代から聞いたことがあった。

無論『ホトトギス』ではしていないが、政宗の話を聞き、もしやと思い一人一人のホスト達の給与と実際のお金の動きをしつこく調べてみると数字が合わず、葉は裏帳簿に気づいたのだ。

葉に指摘され、光秀は顔を伏せた。

「法に触れていることは百も承知だ。けれども、私はそれでも養護施設に、教会に恩がある。幼い姿でこの時代にやってきた私に、シスターと子ども達は手を差し伸べてくれた。無償の愛というものを教えてくれた場を潰したくない」

そう言って光秀は頭を下げた。プライドが高そうな光秀が頭を下げたことに、葉は意外に思い、考え込み始めた。

(そういえば、戦国時代では光秀は優秀だったにもかかわらず、周りとあまり上手く関係を築けなくて謀反をおこしたくらい、ちょっとコミュ症なとこあったぽいしね)

葉の手元の資料にある、光秀と養護施設の子ども達の写真に、光秀はとても満たされた笑顔で写っていた。その養護施設はここ数年の不景気で経営が傾いていると聞いている。

やり方はよくないが、光秀は光秀なりに守りたくて必死だったのだろう。葉は少し光秀に同情し始めた。

「……ほんとは店も潰そうと思ったんだけど、潰すのはやめるわ。裏帳簿も見なかったことにしてやるよ」

「ほんとうか!?」

光秀の顔が明るくなる。

「けど、代わりに条件がひとつある」

葉はにっこりとほほ笑んだ。

---

数日後、『桔梗』は営業再開したが、オーナーであり、No.1の光秀は姿を消していた。同時に『ホトトギス』に対する嫌がらせもなくなり、徐々に客足も戻って来ていた。

「ほんと、葉は凄いな。まさかお客様が戻ってくるなんて」

「意外にやり手っすよね」

営業時間前に更衣室で信長と秀吉は着替えながら、葉の鮮やかな手口に関心していた。元々父親も急な不景気さえなければそこそこやり手の経営者だったと聞いている。単なる歴史好きな夢見がちな少女と信長は葉を見ていたが今回の件で、見る目が変わった。

強敵をつぶす為に情報を集め、周囲を味方につけ孤立させるというのは戦での基本中の基本だが、まさか平和そうなこの時代でその戦略を見るとはな、と信長は思った。血で血を争う以外の戦がこの時代にはあるのかもしれない。そう思うと、信長の中でわき上がる思いがあった。

「おはようございます!! あ、信長さんに、秀吉!紹介するね。『桔梗』から新しいホストスカウトしてきちゃいました」

噂の主である葉がとある人物達を連れて来て『ホトトギス』に出勤してきた。

「は?」

秀吉と信長は目を丸くした。

「ええと伊達政宗さんと、真田幸村さん、あと明智光秀さんです」

ニコニコと笑う政宗、無表情な幸村、そして居心地悪そうな光秀が葉の背後から姿を見せた。あっけにとられ、信長は声を失った。

「……葉、政宗と幸村はともかくさぁ」

秀吉がつっこむと、葉は極上のスマイルを浮かべた。

「優秀な人材は必要だろ。それに人は城っていうし!」

「おお、それ俺の書いた奴か!」

信長の背後から現れた信玄が嬉しそうに葉に声をかけた。

『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』

武田信玄が残した軍学書の言葉である。勝敗の決め手は人の力。葉は光秀の力を借りることに決めたのだ。

「人を上手に使ってなんぼだよ」

葉はにこりと笑った。

---

さくら-葉がホストをはじめて約1年後。

ホストクラブ『ホトトギス』は規模こそ大きくないものの、かつての活気を取り戻し、30人以上のホストが在籍する中堅クラスのホストクラブになっていた。

葉もホストとして売り上げを伸ばし、オーナーとしての収入とホストとしての収入を合わせて月に500万近く稼ぎ始めていた。借金返済にほとんど当てたため、手元にはほとんど残らず借金もまだまだあったが、葉なりにホストとしてのやりがいも感じ始めていた。

そして、2004年1月12日。

ホスト、葉としての初めてのバースデーイベントが行われた。しかも謙信の指導のもと、何故かホストは全員女装姿である。謙信のメイクアップアーティストばりのメイク技術で、全員暗がりの中では美女に見えなくもない。葉は信長から以前プレゼントされた洋服とウイッグを身につけていた。

店内の真ん中にあるテーブルにシャンパンタワーと、ケーキがどんと置かれる。ケーキは雅からの差し入れだ。

「21歳誕生日おめでとう、オーナー! 女装かわいいですよ!」

「おめでとうございます!!」

「葉さん、おめでとうございます。今日も可愛いですね!」

口々にホストとお客様がお祝いの言葉を葉に告げていく。

「おめでとうはいいんだけど、何で今日は女装なの?」

「家康がいいだしっぺだ」

妖艶な美女に化け、赤いチャイナドレス姿の信長が、千代-家康を指差す。元々中性的な顔立ちなので、信長の女装姿は様になっていた。

「……誕生日くらい、女の姿でいたいだろ」

千代が耳元で囁いた。千代は女性用ジャケットにスカートを身につけOLのような格好をしている。顔立ちも薄いせいか、妙に女装もハマっている。

秀吉はセーラー服、信玄はナース服、謙信はボンテ-ジ服と一部は個性的だが、他のメンバーはワンピースや、シンプルなドレスと女装姿を楽しんでいた。お客様達にもウケているようでほっとした。

「普段もそのくらい優しくしてくれると嬉しいのだけど、でもありがとう」

素直にお礼を述べると千代は赤く顔を染めた。どうやら照れてるようだ。

「誕生日だからね。で、なんか欲しいものある?」

「うーん、そうだね。休みと、旅行に行きたいくらいかな?」

借金返済の為、今特に物で欲しいものはないというつもりで答えると、千代はあっと声をあげた。

「じゃぁ旅行、行く?」

「え?」

思わぬ千代の提案に葉はとまどった。

「旅行!! 最近してない! 休みたい!」

旅行と聞きつけた秀吉が駆け寄ってくる。

「あ、俺もいきたいです! 葉オーナー!」

「……行きたい」

政宗も手を上げ、幸村もちゃっかり便乗してくる。

「え?」

千代は話を続けた。

「誕生日祝いも兼ねて。折角だしどう?」

するとそこに信玄が割りこんできた。

「お、なんか面白そうな話をしてるな。じゃあ折角なら神9のメンバーで慰安旅行持兼ねて行くのはどうだ? 他のメンバーが葉ちゃんの旅費おごる形で」

神9とは、信長、秀吉、家康、信玄、謙信、幸村、政宗、光秀そして、葉達を指した通称である。

『ホトトギス』の中でも偶然か必然か主要の売上メンバーとなり、神9と尊敬とやっかみを込めて他のホスト達から呼ばれていた。

「行く!!!」

おごりという言葉の魔力には勝てない葉であった。


葉がホストをはじめて約1年。残り借金4億円8,220万円。


続く

■注意■

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