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ポケパラ体入>ポケノベ>ホトトギス!>最終話 あたし、新しい歴史作ります!?(前編)
小説タイトル
イラスト:ヨルノトウコ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルホトトギス!【完】 更新日時2014.11.25

最終話 あたし、新しい歴史作ります!?(前編)

小説挿絵 2014年X月X日。

『天国のママ、ううん、お母さま  とんでもない置き土産、してくれましたね。でも、このお土産のお蔭で、あたしは新しい歴史が作れそう……かな?』

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2006年1月12日。

葉の卒業イベントを兼ねたバースデーイベントの後、神9が終結したプライベートパーティー。

皆に祝福されながら、世の中マンガみたいなことが起こるものだと、さくらは気が遠くなっていた。

目の前には様々なタイプのイケメンがいる。しかもその全員から告白されたら、普通の女性なら舞い上がるシチュエーションだろう。しかし、それが現実となると話は別である。

「なぁ、気づいていただろ……、オレはお前のことが好きなんだ」

いつもやんちゃで軽い秀吉の告白は、とても真剣だった。

「あの、俺も……好きです」

明るく素直な政宗の告白はシンプルだった。

「……結婚も視野に入れている」

シニカルな光秀の告白は、想いの強さを感じた。

「一緒にウェディングドレス着る?」

女性らしさと、男らしさを兼ねた謙信の告白は茶目っけがあった。

「……ずっと、……ずっと一緒にいてくれないか。す、好きだ」

そして、幼馴染の千代の告白は見ているこちらが照れるくらい不器用だった。

「……」

まるで恋愛ゲームのような怒涛の告白ラッシュに、めまいがした。

人生には三回のモテ期があると聞いたことがある。さくらは今、そのモテ期に遭遇していた。

(いや、これはきっと三回分をまとめてモテてるのかしら……。分散して、モテ期!!)

幸村から受けた告白に動揺し、固まっているとそれに便乗して何故かその場にいた信長と信玄以外の全員に告白を受けるという事態になったのだ。

どうしていいか分からず戸惑っていると、信長が機転を利かせ、さくらをお手洗いに逃がしてくれた。

とはいえ、一時的な逃げでしかない。ずっとお手洗いにこもる訳にもいかない。

「ど、どうしよう……。こ、告白とか嬉しいけど。どうしていいか分かんない……。ん?」

耳を澄ますと先ほどまで騒がしかった外が静かになった。

「さくら、出てきて大丈夫だぞ」

信長の声に、おずおずと扉を開けた。するとそこには信長と信玄以外の姿はいなかった。

「あ、あれ? 皆は?」

「帰らせた」

不機嫌そうな信長の顔に反し、信玄は面白くて仕方ないという顔をしている。

「いやー凄かった! さくらちゃん、サイコーのモテ期だね!」

ケラケラと笑う信玄にさくらはげんなりとした顔を向けた。

「笑いごとじゃないですよ……。なんですか? 今日エイプリルフールでしたっけ」

「今日はさくらちゃんの誕生日だから違うよ。で、どうすんの?」

急に真剣な顔になる信玄に、さくらは顔を歪ませた。

「どうするって……今は、正直恋愛どころじゃありません。やっと借金を返し終わって、じっくり自分と向き合えると思ったんで」

「ふん。それじゃあそれをそのままあいつらに言えばいい」

「信長、なんでお前が不機嫌なんだよ。あぁそういえばさくらちゃんは、お前の妹に似てるもんな、兄貴気取りか」

からかう信玄に、信長はますます不機嫌な顔をする。

「うるさい」

そんな信長にさくらは複雑な気持ちになり、頭を悩ませた。一度振られているし、信長には好きな女性(ただし、まだ少女)がいるのだ。けれどもこうやって信長が構ってくれるのが、内心嬉しくて仕方ない。こんな気持ちを抱えたまま彼らの告白に応じるのは正直気が進まなかった。けれども、彼らの想いも嬉しい。

(今はまだ想いには応えられないけど、彼らのことはもっと知りたい……)

タイムスリップしてきた武将達と共にホストとして時間を過ごしてきた。しかし、本当の意味で彼らのことを理解したとは言い難いとさくらは思った。彼らの想いに応える為にも、しかし彼らの過ごした時代をもっと知りたい。

「ねぇ……二人とも、あたし決めたよ」

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そして8年後。2014年4月。

「今日が結婚式かぁ」

28歳になったさくらは教会の祭壇後ろにあるステンドグラスをじっと見ていた。式が始まるまでまだ随分と時間があるためか、自由に教会は出入りできた。今日の結婚式は知人だけであげたいという花婿の意向で森にある小さな教会で取り行われる。

「……緊張しているのか?」

スーツ姿の千代が、さくらに声をかけた。

「だ、だって。結婚式でこんな大役、初めてだし」

さくらは泣きそうな顔で、千代にしがみついた。

「ほら、ドレス汚れる」

「うぅぅ」

すると千代は仕方ないとばかりに、ぽんぽんとさくらの頭を撫でた。

「大丈夫だよ。今日のさくらは綺麗だ。ほら、『花嫁』の準備があるんだろ、向かわないと」

「う、うん」

慌てて花嫁の控室に向かうと、さくらは途中で見慣れた顔とすれ違った。

「あら~さくらちゃん! あたしがデザインした、ブライズメイドのドレス似合っているじゃない!」

「謙信! これ、ありがとうね!」

謙信がにこにこしながら、さくらに近づいてきた。

謙信はモデルを辞め、念願のアパレル業界のデザイナーへ転身していた。そしてさくらが着ている、ブライズメイド、つまり花嫁の介添え人のドレスも彼がデザインしたものだ。

さくらは花嫁の『介添え人』として結婚式に参加しているのだ。

「おぉ! さくら! 今日はさらに可愛いな! 結婚しよう!」

「秀吉、久々に会ってそれ? 噂だと今彼女が5人いるって聞いたけど。遊びもほどほどにしときなさいよ」

再会早々、プロポーズする秀吉にさくらはあきれた。秀吉は変わらず『ホトトギス』のNo.1ホストとして君臨している。

8年前。さくらは告白してきた全員に、今はまだ恋愛する気分じゃないと断っていた。しかし秀吉は会う度に毎回告白してくるのだ。とはいえ、毎回告白をしてくるのは秀吉だけではない。

「なっ、何故それを」

「……僕が報告しています」

「幸村、お前!! 裏切り者!」

幸村も『ホトトギス』でホストを続け、ナンバーツーのホストとして秀吉の後を追っている。歳を重ねるにつれ研ぎ澄まされた美貌と、淡々とした毒舌に一部女子となぜか男性からもウケているとの噂だ。

「あ、ちなみに僕はまだ誰とも付き合っていません。綺麗な体でさくらさんをお待ちしています」

「幸村、お前もどさくさにまぎれて告白するなよ!」

秀吉が抗議するが、幸村は素知らぬ顔をする。

「ははは……ごめんなさい。あたし行かなくっちゃ」

さくらはどちらの告白にも応じず苦笑いした。

「あ、さくら! あたしとさくらの花嫁ドレスの注文はいつでも待っているわよ!」

謙信はさくらに投げキッスをする。

「あはは~! ありがとう!」

立ち去るさくらに、謙信はため息をついた。謙信がデザインしたぴったりと体にフィットしたドレスは、さくらにとても似合っていた。

「ほんと、綺麗になったわよね、さくら。まだ独身なんて勿体無い」

「……まだ好きなのかな」

幸村はしんみりとした口調で呟いた。

「なんだ、あいつは信長のことが忘れられないのか」

光秀はじっとさくらの背中を見送りながら、眉間に皺を寄せた。

「あれ、光秀、仕事は? 今日参列できないかもって言ってたのに」

いつの間にか来ていた光秀に秀吉は尋ねた。

「店のことは部下に任せてきた」

光秀はホストとしては引退し、オーナーとして手腕を振っている。さくらから引き継いだホストクラブ『ホトトギス』を拡大し、今は10店舗以上のホストクラブを経営している。

「まあ、でも忘れられないってことに関しては皆、人のこと言えんな」

光秀の言葉に、一同深く溜め息をついた。

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花嫁と花婿の控室には信長と彼の元に嫁ぐ『信岡奈々』がいた。

宣言通り、信長はしっかり『奈々』を花嫁として迎えたのだ。

「おお、さくら! 今日はブライズメイドよろしく頼むな!」

「さくらさん、よろしくお願いします」

信長と、隣で幸せそうに微笑む、ウェディングドレス姿の奈々はいつも以上に美しかった。

9年前、まだ幼かった少女は、誰もが振り向く華やかな美女に成長していた。年月とは恐ろしいものである。

そして白いスーツ姿の信長に、さくらは胸が少しどきっとときめいた。

(あぁ、かっこいいなぁ。ってあたしも案外しつこいなぁ)

今日で、片思いは本当に終わりだ。

「いえいえ。二人ともとっても素敵! お似合いの夫婦ね!」

胸の痛みを隠して、さくらは満面の笑みを浮かべた。

二人の後ろからひょっこりとコック帽をつけた政宗が顔を出した。

「さくらさんも可愛いですね!」

「あれ、政宗?」

「ども~、今日の結婚式の料理、俺が作ったんですよ! あとで堪能してくださいね!」

教会の近くにホテルがあるが、そこのコックとして政宗は活躍しているようであった。

「俺がここを選んだのも、政宗の料理が食べたくてな」

「ありがとうございます! そういえばさくらさんは今何しているんですか? ってか俺とさくらさんのウェディングケーキならいつでも作りますよ!」

謙信と同じようなことを言う政宗に、さくらは思わず噴き出した。

「あははは! そうね、今あたしは――あなた達について調べているわ」

さくらはホストクラブ『ホトトギス』を辞めた後、大学を再度受験し、日本史を学んだ。その後院に進み、京都にある国立歴史博物館の研究員として働いている。ホストとして一緒に駆け抜けた戦国武将である彼らの背景に改めて興味を抱き、また違った視点から彼らについて理解を深めたくなったのだ。

研究員の今、ホスト時代のように収入は高くないが、とても興味深い仕事である。当初は2年のはずだったが正式な研究員としての話も来ている。

歴史的資料と向き合い、様々な歴史と照らし合わせ編纂していく研究員の仕事は、以前のホストになる前のさくらなら憧れていた仕事だ。けれども最近は、この仕事に対して違和感が芽生えていた。

ホストとして過ごした刺激的な時間がふとした瞬間によみがえり、さくらを戸惑わせるのだ。

(あたし、本当に今の仕事を続けていいのかな……)


続く

■注意■

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