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ポケパラ体入>ポケノベ>ホトトギス!>第6話 『ホトトギス』大ピンチです!(前編)
小説タイトル
イラスト:ヨルノトウコ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルホトトギス!【完】 更新日時2014.07.22

第6話 『ホトトギス』大ピンチです!(前編)

小説挿絵 2003年8月1日

『天国のママへ。 あたし――』

2003年7月

「今日も、お茶かぁ」

秀吉はお客様のいない店内を眺め、目を細めてうめいた。

以前の盛況が嘘のように、ホストクラブ『ホトトギス』は静まり返っている。

「やっぱり、俺許せないよ」

「……葉」

千代は葉に声をかけつつも、売上表に目を落とす。そこには明らかに減った数字が並んでいるだけであった。

『ホトトギス』のお客様が一部の常連を除き、『桔梗』というホストクラブに奪われた。先日雇ったホストのバイトが実は『桔梗』のホストだったらしく、いきなり店内で暴れて『ホトトギス』をパニック状態に陥れた。

そこに『桔梗』のNo.1であり、新オーナーでもある明智光秀が現れ、店内のお客様をうまく丸め込んで連れ去ってしまったそうだ。しかも運悪く、その日はNo.1である信長、オーナーの葉が休み。出勤していたホスト達も想定外の出来事に上手く対処できなかったと千代は悔しがりながら、葉と信長に頭を下げた。しかし、二人は彼を責める気にはなれなかった。

幸い雅などの常連客は来ているが、悪評のせいで新規のお客様が捕まりにくくなっている。正直、このままではジリ貧で閉店に追い込まれる可能性がある。そこで急遽店を閉め、ホスト全員で今後の作戦会議をすることになった。

「……やられっぱなしの人間じゃないわよ」

「わよ?」

思わず出た女言葉を、秀吉につっこまれ慌てて葉はごまかした。

「と、ともかくこっちからも何か仕掛ける!」

息巻いて叫ぶと、秀吉は思案し始めた。

「でも、どうやってやんの? 向こうは光秀はオーナーになったばっかとはいえ、『桔梗』は昔から大阪でもかなり人気のホストクラブっすよ」

千代も深く頷き、秀吉に同意する。

「……俺がいうのもなんだが、光秀は優秀な人材だ」

先ほどまで黙ってソファーに座っていた信長も無表情のまま口を開いた。謀反を起こされ相手なので複雑な気持ちなのだろう。

「情けないな。アンタ達、戦国武将って言い張るなら兵法書の基本、『孫子』は読んだことあるだろ?」

葉の発言に全員がピクリと反応した。歴史好きな葉は日本史だけでなく、中国史も趣味で勉強し始め、最近は孫子の兵法にハマっていた。

「『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』 とりあえず光秀の情報収集からだ!」

息を巻く葉に対し、千代がたしなめる。

「戦争ごっこじゃないんだ、葉」

すると葉は腰に手を当て、反論した。

「分かってる! けど、今このホストクラブ『ホトトギス』の主(あるじ)は俺だ。ココを守る為に、出来る限りのことをすべきだと思う」

「なんか、葉がまともなこと言っているな……」

光秀に裏切られたトラウマが再発していたせいか、いまいち元気がなかった信長が感心していると、千代は首を静かに振った。

「いや、あれはなんか楽しくなってきただけだと思いますよ。信長殿。まあでも昔から喧嘩すると、何故かアイツの喧嘩相手がいつの間にかいなくなるという、恐ろしい現象が」

「何それ怖!!」

「葉ちゃんはおもろいやっちゃなぁ」

葉の過去話を聞いた謙信は身を縮め、信玄はけらけらと笑った。だが二人とも怒りのせいか目は笑っていない。

「で、具体的にはどうすんの?」

憮然とした顔で秀吉が言うと、葉はにやりと笑った。可愛らしい顔に似合わない凄身のある笑顔に一同寒気が走る。

「まあ、基本中の基本。偵察かな」

---

「で、なんでオレと葉が偵察?」

ホストクラブ『桔梗』の前で秀吉がうなった。

「え? 女装が似合いそうだから。他は皆ちょっと身長が」

ホストクラブに侵入するならば、女のフリをして客として行くのが無難だろうと、葉と秀吉が女装して偵察することになった。危ないからと信長と千代は反対したが、葉は無視して決行することにした。

「身長……まぁいいけど、それにしてもスカートってすーすーするなぁ」

ぴらぴらとスカートのすそを指で遊ぶ秀吉の姿は、ブルーのシャツワンピースを着こなしている。愛らしい顔つきとつぶらな大きな目、そして男性にしては華奢な体型のせいでどう見ても女性にしか見えない。しかも女装のプロである謙信がプロデュースということでメイクもバッチリとキマっていた。謙信も来たがっていたが、派手過ぎて偵察には向かないと葉は却下した。

「それにしても、なんて言うか女子力的に敗北感を感じるんだけど……」

「へ? 女子力?」

「いや、なんでもない」

「葉も女装似合うっすね。さすがさくらの双子のお兄様」

葉はシンプルに黒のワンピースに、茶髪のウイッグをかぶっている。メイクも謙信プロデュースの為、本来の葉-さくらの時よりも派手に化粧を施されていた。

「ははは……」

一応女が本職なので似合わなかったら困る。葉はため息をついた。

「じゃあ、いっちょ潜入しますか」

ホストクラブ『桔梗』は東通近くにあるホストクラブ『ホトトギス』とは反対側、大阪梅田の西側、北新地に店を構えている。デフレ時代の今時には珍しい華やかでバブリーな店構えだ。

そして一歩足を踏み入れると、夢のような世界が広がっていた。

「凄い」

「あぁ」

葉と秀吉は感嘆の声をあげた。店の入り口には桔梗をモチーフにした、巨大なロゴの看板が二人を出迎え、更に店内にすすむと輝く巨大なシャンデリア、うず高く積み上げられたシャンパンタワーがあった。調度品もいかにも高級そうなものばかりである。あふれる光と爆音で店内はまるでクラブイベントのようで、気分が高揚してくるが、葉は心を無理やり落ち着かせた。

あまり目立ち過ぎてはいけないので、あえてランキング外のホストを適当に指名し、席で待つ。

暫くすると、二人のホストが現れた。一人は金髪に緑のカラーコンタクトと派手ないでたちで顔もやや濃く派手な美少年で、片目に眼帯をしていた。もう一人は黒髪で地味なスーツとやや暗そうな雰囲気だが顔は非常に整い、甘い造りをした美少年だ。ランク外とはいえ、人気店なことがあって、ルックスはすこぶる良い。葉は流石だな、と妙に感心した。

「御指名ありがとうございます!かわいい人達で嬉しいな~! あ、マサですっ!」

「……ユキです」

「え?」

秀吉が、びっくり顔でホスト達をまじまじと見る。

「え? ばれた?」

顔ばれしたのかと葉は焦って小声で尋ねると、秀吉は首を振った。

「いや、バレるっつーか伊達政宗と、真田幸村っすよこの二人」

「え」

葉はまたかと頭を抱え込んだ。戦国武将もここまで集まると、コントもいいところだ。

「え? なんでオレの名前知っているの?」

マサと名乗った派手な青年は首をかしげながら葉の隣に座り、ユキといった地味な美少年は秀吉の隣に座る。

「……秀吉様、何故女装しているんですか?」

「……幸村。お前こそなんでこの店でホストに?」

そういえば真田幸村は豊臣家に仕えていたことを、葉は思い出した。何故こうも現代に、いや自分の周りに戦国武将が集まるのだろうかと思ったが、深く考えることは諦めた。

「……色々あって」

「え? 豊臣様?」

「政宗、ちょっと声落として」

秀吉は慌てて政宗の口を塞いだ。政宗も秀吉に合わせて、声を落とし、深刻そうな顔をした。何事だろうと葉は息をのむ。

「豊臣様……、女装似合いますね」

「そこ!?」

思わず叫ぶと、今度は葉が秀吉に口を塞がれた。

「……まあいいや。これなら話が早い。幸村、政宗。今日この後アフター頼む」



幸い、光秀は今日休みで『桔梗』におらず、バレることなく秀吉と葉は店を出た。そして政宗と幸村と共に少し離れた地下の喫茶店に移動した。

秀吉は二人に簡単な経緯を説明する。

「で、本題なんだけど、今オレはこの子がオーナーしている、『ホトトギス』でホストをしているんだ。けど光秀のヤローにお客さんを持ってかれて、非常に困っているのだけど」

「それで女装して潜入調査ですか。『ホトトギス』なら、知っていますよ」

男なんだ勿体ないと見つめられながら政宗に言われ、葉は複雑な笑みを浮かべた。

「……聞いたことあります」

幸村もこくりと頷いた。

「知っているなら『桔梗』辞めて、こっち来いよ!」

秀吉が抗議すると、政宗は肩をすくめた。

「いや、でもさすがに豊臣様だけでなく、織田様、徳川様がいるのは知らなかったですよ」

「まあ、いい。とりあえず幸村、『桔梗』の内情を話せ。それでこちら側につけ」

「御意」

秀吉が命令すると、素直に頷く幸村に葉はかえって焦った。

「え? いいの?」

「一応、オレの部下だしね!」

えらそうにふんぞり返る秀吉に、女装姿で言われてもと葉は思ったが、味方が増えるのはありがたい。

「政宗は? こちらにつくか?」

「んー、正直半々です。やっぱりホストを続けるなら『桔梗』は魅力的で。今はお金欲しいですし。光秀はやり手だし」

「だよなぁ」

葉は頷いた。光秀のやり方は気に入らないが、『桔梗』がホストクラブとしては大変魅力的なのも事実だ。

「けど今の光秀のやり方は強引なんで、お客さんからの評判はいいですけど、ホストとスタッフ達からの受けは最悪ですね。売上下がるとすぐクビだし。あと、おかしいことがたまにあるんですよ」

「おかしい?」

「……売上と、実際の給与の金額が微妙に合わない時があるんです。しかも、忙しい時に限ってなので、僕らの勘違いかもしれませんが」

幸村も言葉を続けた。

「数字が? ……もしかしたら」

葉は二人の話を聞いてしばらく思案した後、酷薄な笑みを浮かべた。

「なぁ、二人とも。ちょっと調べて欲しいことがあるんだけど」


続く

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