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2014.11.25
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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.11.10
第14話 あたし、新しい道に進めません!?(前編)
2006年1月12日。
『天国のママへ あたし……どうしたらいい?』
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2005年11月。
葉と秀吉は『ホトトギス』の事務室で真剣な顔で向き合っていた。秀吉は分厚い封筒に入った札束を、手慣れた様子で数えはじめた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…………はい、確かに全て返して頂きました!」
かしこまって報告する秀吉に、葉はほっとした表情を見せた。
「ありがとう、秀吉」
「いえいえ。別に返さなくても嫁に来たらチャラにしたのに」
にやっと笑う秀吉に葉は、はいはい、と軽くかわした。
「それにしてもホスト辞めちゃうの、勿体ないな。折角No.1になったのに」
1月12日さくら-葉の誕生日、ホストクラブに関わってから3年目のバースデーイベントで正式に卒業することが決まった。
ホストになるきっかけは父の借金だった。その借金が無くなったことで、葉のホスト生活も終わる。葉はホストの共同オーナーとして名前だけは残すが、実質ほぼ全てをオーナー経験もある光秀に譲ることを決めていた。
『桔梗』時代の光秀は冷たく、孤高だった。けれども、『ホトトギス』に来て光秀は変わった。葉にホストとして大切なことを教えてくれた彼ならばきっと『ホトトギス』も立派に育ててくれるだろう。
最初は、千代、信長、葉、そして秀吉の4人始まった『ホトトギス』。今では100人近くが在籍している。父が切り盛りしていた、かつての『ホトトギス』の輝きを取り戻しつつあり、大阪一のホストクラブとして認められる存在になったのだ。
「ん、でも、もう限界だと思うんだよね。前も倒れて、光秀さんに色々仕事お願いしちゃったし」
「あー、売上が上がり始めてから、葉は確かに良く倒れてたな。勉強会とかさぁ、仕事しすぎじゃね」
心配そうに秀吉は葉を伺った。
葉は自分が得た知識や経験を独占せず、積極的に勉強会なども行っていた。その結果、『ホトトギス』のホスト達の接客の質は競合ホスト店とは比べものにならないものとなった。しかし、評判が上がり、お客様が増えれば増えるほど葉の負担は増えていく。
それに幸村も変わらず葉がボロを出さないか、常に目を光らせている。けれどもそんな視線に負けるもんかと思い、葉は無理を押し通してきた。
ただでさえオーナーとホストの二つの仕事をこなすことは、普通の男性でも負担は大きい。さらに女性である葉にはかなりきつく、今まで気力で耐えていたが、No.1になる直前あたりから体は常に悲鳴を上げていた。
「まあね。折角だからちょっと休みたい、ってのもあって。今までずっとホストに時間を使って来ちゃったから他のこともしてみたいと思うのもあったり」
「ふーん、他のことって?」
「それは……まだ具体的に決まっていないんだけど」
唇をかみしめる葉に、秀吉は優しく頭を撫でた。成人を迎えてから約3年、ストイックにホストの仕事をこなして来たのだ。いざ自由になると今更何をしていいのか、葉は分からなくなっていた。
「まあ、焦らずにゆっくり決めたらいいんじゃない?」
「うん……秀吉は? 今後どうするの?」
「オレはホストを続けるよ。『ホトトギス』にずっといるか分からないけど、この仕事は奥が深いなと思う。最初は接客は得意だし、人を観察出来るし、女性といくらでも話せるし、儲かるし、っていう軽い動機だったんだけど」
「うん」
ふふっと軽く笑って、秀吉は部屋に貼られたランキング表を見る。
「オレ、葉にNo.1を獲られて今回すげぇ悔しいんだよ。まあ勿論取り返すけど、光秀だっているし、幸村だって最近売上を伸ばしている。カッコイイだけでも、勝てないし、喋りが上手いってだけでもダメ。面白い世界だよな。本当の意味で、ずっとNo.1でいるためには相手の心を掴まなきゃいけないんだよな。すげぇやりがいがある」
秀吉の目はいつになくきらきらと輝き、葉の目にもとても魅力的に見えた。
「あたし、見る目あったのかも」
「え?」
自然と女言葉に戻った葉に、秀吉はどきりとする。
ほほ笑む葉は、ショートカットで男性用のスーツを着ているのにもかかわらず、いつになく艶っぽい顔をしている。
「だって、あたしが最初にスカウトしたホストは秀吉だもの。見る目、あるでしょ」
「葉……いや、さくらちゃん……」
自信に満ち溢れた葉の笑顔に秀吉は魅せられ、自然と葉を抱き寄せた。
「え? 秀吉?」
「ごめん、許して」
そう言って葉の前髪をかき上げ、おでこに唇を落とした。
「え?」
葉は慌てて秀吉から離れる。
「な、何するの?」
「いや、キスしたくなっちゃって」
「なっちゃってじゃないよ!」
おでこを両手で抑え、葉は真っ赤になって抗議する。
「一応さ、唇は我慢しようと思ったんだよ。オレえらくない?」
胸を張り、いばる秀吉に葉は怒鳴った。
「えらくないわよ! バカ!!!」
『ガタッ』
ドアの近くで物音がした。
「誰?」
「あ……すみません、オーナー。秀吉さん、覗くつもりは……」
そこには最近ホストになったばかりの、新入りバイトが慌てふためいた様子で立っていた。
「あ、いや」
葉はキスされたところを見られたこと気づき、頭が真っ白になった。
(ど、どうしよう。いまの、なんか誤解され……あ、それよりあたし、今女言葉だったかも)
なんと言い訳すべきかと迷っていると、秀吉は堂々とした様子でひらひらとバイトの子に手を振る。
「いやー見られちゃった?」
「え?」
茶目っけに答える秀吉に、葉は焦る。バイトは恐る恐る口を開く。
「あ、あのオーナー、秀吉さん。前からオーナーが女性って噂あったのですけど……」
「え?」
葉は真っ青になった。絶体絶命である。
「あ、あれね。分かる、分かる。葉は女性みたいに可愛らしいしね」
頷く秀吉に、葉はますますパニックになった。
「え、ちょ、秀吉」
「だから今、女性の新しい口説き方を葉相手で練習してたんだよねー。でも葉は照れちゃって、君、代わりに相手してくれる? 結構可愛い顔してるよね。」
秀吉はバイトにじりじりと近づいていった。
「えっ、あっ……。し、失礼します!」
バイトは脱兎のごとくその場から逃げだした。
「……ご、ごまかせた?」
「その代わりにオレがゲイだという噂が明日から立つかも知れないけど」
遠い目をする秀吉に反して、葉はほっと肩をなで下ろした。
「ありがと! いや、でもコレ、秀吉のせいか」
ははっと秀吉は笑った。
「その前に葉も女言葉になっていたしねぇ」
秀吉に指摘され、葉はうなだれた。
「ううっ。気をつけるよ……」
「……やっぱり、潮時なのかもね。前は絶対女言葉なんて出なかったのに」
「……バースデーイベントまでは気をつけるから」
続く
イイネ!
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