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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.06.09
第3話 あたし、ホストはじめます!(前編)
2003年2月10日
『天国のママへ。ホストになるって案外大変みたい』
2003年1月28日
葉達はホストとして研修を始めることになった。
あまりにも何も準備をしていない葉を見かね、千代の判断により、ホストクラブ『ホトトギス』を一旦閉め、27日の1週間後、2月3日に再オープンすることにしたのだ。
そしてその間にホスト経験のある千代に、葉達はみっちりとホストの知識とルールを教え込まれることになった。
「だーかーらー! さ、葉、そうじゃないって」
千代の叱咤に葉はげんなりとした顔をした。
「えぇ~もう、何回目?」
「それは僕のセリフだよ!!」
「意外にほすとという奴は大変なのだな」
「信長殿も、間違っていますから」
「おー、すまん」
ホストといってもお酒を飲んで、お客様と話をすればいいという訳ではない。グラスの置き方、煙草の火のつけ方、会話の応対など接客の基本を叩きこまれていた。
そして最低限の知識を教わった後、次はお店を使って千代がお客様を、ホスト経験のない葉達はホスト側を演じながら仕事を学んでいくことになった。
「葉はほんまセンスねぇなあ。まぁさくらちゃんのお兄様だから特別親切に教えてやるけどさ」
葉が声をかけた青年、豊臣秀吉もホストをすることになった。
ホストの経験はないが、現代に来てから様々なアルバイトや仕事の経験があるという秀吉はすぐにホストの仕事を覚え、千代と同じくホスト以外の知識、葉に社会人として働く為の常識を指導していく。
元々こちらの時代に来てからも、要領は良く頭の回転が早い秀吉は現代に馴染み、ちゃっかり会社勤めまでしていた。だが信長と家康がいるならばとあっさり会社を辞め、彼もホストをすることになったのだ。
「それにねぇ、オレ、恋しちゃったんですよ。さくらちゃんに。オレがこの時代にきたのも、きっとさくらちゃんに会う為ですよ」
「へぇ……」
葉は苦笑いをするしかなかった。根っからの女好きな秀吉のことを懸念し、「仕事場で恋愛沙汰とか面倒になるから」と葉はさくらの双子の兄ということにしていた。
「まぁだから、さくらちゃんのお家が困っているならオレ、ホストとしても頑張りますよ。けど、その為にも葉には立派なホストになって貰わないと。はい、じゃあ続き!」
口調は優しいが、秀吉の指導は厳しかった。
お客様を演じる秀吉の前に、葉はドリンクを置いた。
「どうぞ」
「ちーがーう! ドリンクを置く時は、小指をそえて直接ガンってグラスを置かないで」
「えぇ、そんな細かいとこまで!?」
「オレはホストのことはまだ全て分からないけど、接客業は細かいとこまで気を遣ってこそだと思うよ」
「うぅ~千代~」
葉は、思わず千代に助けを求めてうめくと、千代はメガネを磨き直しながら淡々と答えた。
「秀吉の言う通り。僕もホストを最初した時はマナーを色々と叩きこまれたよ」
「ふむ、色々とせっきゃくぎょうという奴は奥が深いな」
意外にも信長は横で熱心に二人の教えに耳を傾け、真面目にメモをしている。一人、葉だけが落ちこぼれ状態だ。
秀吉は笑顔のまま葉にほほ笑むが、よくよく見ると目は笑っていない。
「はい、じゃあもう一度やってみて」
「はい……」
容赦ないが、出来ていないのだから仕方ないと葉は諦め、素直に従うしかなかった。
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店内でのホストの研修がある程度終わると、今後の『ホトトギス』のお店に集客する為の作戦会議をすることになった。なんにせよ、お客様がいなければ何も始まらない。
大理石のテーブルの上には千代がまとめた過去の『ホトトギス』のレポートが置かれていた。葉は恐る恐るそのレポートの内容を読んだが、さっぱり分からなかった。
「でさぁ、家康はホストの経験はあるみたいけど、お店の運営について具体的に決めている? あと集客とか仕事の割り振りとか」
レポートを見ながら飲食業で店長の経験もあるという秀吉が、千代に尋ねる。本来ならば葉に尋ねることだが、今の葉では答えられないだろうと判断されての質問だった。プライドが傷つき、葉は思わずうつむいた。
「正直、まだそこまでは考えてないかな。簡単なホームページを作って宣伝はしようかと思うけど」
千代が答えると、秀吉は腕を組み考え込み始めた。
「うーんじゃあ、これは提案だけど、とりあえず役割分担だけ先に決めない?」
もっともな意見なので皆頷いた。
「じゃあオレの独断で決めるよ。キャッチは信長様が主に担当。メインの接客がオレと家康。で、信長様はキャッチが終わった後、仕事を覚える意味を込めてしばらくはヘルプがいいかな」
「そうだね、今はメンバーも少ないから僕は裏方作業もするよ。会計作業とか、レジ閉めとかは経験あるし。フロアー全体のことは秀吉が取り仕切って貰えると助かる」
「なら裏方は頼んだ」
「なあ、俺は?」
千代と秀吉が真剣な顔で相談しているのを見て、居たたまれなくなり、葉はおずおずと切りだした。
千代と秀吉は顔を見合わせ、苦笑した。
「うーんお兄様はしばらく俺らのやっていることを、見ていて」
「まだ使いものにならないから、雑用かな」
秀吉には遠慮がちに、千代には容赦なくいらないと言い切られ、葉はますます落ち込んだ。すると、信長が助け舟を出した。
「俺はこちらの時代についてまだよく分からん。お前らは安全だというが、外で一人なのは不安だ。だったらこの時代をよく知るこいつと一緒にきゃっちに行きたいのだが?」
思わぬ救いの手に、葉は顔を輝かせた。
「信長さん、神!」
「信長殿! あんまり葉を甘やかさないで欲しいのですが……」
千代がたしなめると、まぁまぁと秀吉がなだめた。
「確かに信長様はまだこちらの時代に来て日が浅いですしね。その割には随分落ち着いているみたいなのが気になるんすけど」
「一応これでもこの時代に来てから動揺しているが、それ以上に驚きの方が大きくてな。何を見ても新鮮で面白い。まあでも、まだまだ分からんことだらけだ。だから葉、色々教えろ」
「はいっ!」
こうして葉は信長と共にキャッチを担当することになった。ようやく、本格的にホストデビューである。
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そして1週間後の2月3日。
再オープンの日。夜7時前に二人は店を出て、近くにある梅田東通り入口近くの周辺の交差点に向かった。冷たい夜風に、二人は震えながらもキャッチをしようと立ちすくんでいた。キャッチとはその名の通り、お店の外で道に立ちお客さんを呼び込み、捕まえる=『キャッチ』することだ。
信長はスーツに黒いコート、葉はスーツにトレンチコートを羽織っている。それぞれ洋服は千代が見繕ってくれたものだ。
「あーまだまだ寒い日が続きますね」
葉が両手で体をこすりながら言うと、信長も頷いた。キャッチをしようにも、風が強く体が冷えてそれどこではない。
「あぁ、今、睦月の時期だったか。早く卯月の時期になって欲しいものだ」
「あ、ちなみにですね信長さん、睦月はこの時代1月、卯月は4月って言うんですよ」
「ふむ、そうなのか覚えておこう。他の月は?」
「えっとですねぇ」
あくまでも戦国時代から来たという設定を守るつもりらしい信長の徹底ぶりに葉は感心した。しかし、同じく戦国時代から来たという秀吉もいるし、本当にこの人過去から来たのかも、と少し思ったが、まだ完全に信じることは出来ない。過去の歴史に対してはロマンティストだが、葉は現代に対してはリアリストである。
(というか、もし、もしも万が一タイムスリップが本当なら、なんであたしの周りにやたら戦国武将が集まるんだろう)
当然の疑問を抱きながらも、葉と信長は暦談義で盛り上がった。
が、思わぬ邪魔者が現れた。
「あのぉ」
ピンクのコートと、キャメル色のコートを着た二人組のOLが信長に声をかけてきたのだ。
「む? 俺か?」
信長を返事すると、二人組はきゃあ、と声を上げる。
「あ、あのうお兄さん。アタシ達今から呑みにいくんですけど、一緒にどうですか?」
「ふむ、だったら俺らの店で飲まないか?」
信長が答えると、さらに二人組は歓声を上げた。
「もしかして、お兄さんホスト?」
「わ~! かっこいい!!」
「まあそうだが。店に来るならば案内するが」
「行く行く~!! ホストクラブ最近行ってなかったんだよね」
淡々と信長は答えるが、二人組は気にせず信長の後をついて行く。
「おおう、キャッチ成功?」
葉は思わずぼそりと呟くが、二人組はこちらに目もくれない。二人組は信長に夢中で、葉のことは目に入っていないようだ。
(あぁ、なるほどなぁ)
葉は何故、秀吉が信長にキャッチを担当させたのかようやく理解した。
信長はスタイルもよく、顔立ちも一般の人と比べてかなり整っており、遠くから見ても人目を惹く存在だ。特にこちらから声をかけなくても女性が逆ナンしてくる、と秀吉は踏んだのだろう。
「……ただしイケメンに限るってかぁ」
ふぅ、とため息をつき、葉は遠い目をした。
続く
イイネ!
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