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2014.12.01
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ホトトギス!【完】
2014.06.30
第4話 あたし、恋されちゃいました!(後編)
次の日、『ホトトギス』閉店後に一人で店に訪れてきた女性に、秀吉と千代は顔を強張らせた。
「……で、あの人、まじで謙信なの」
葉が聞くと、秀吉はうめき、千代の顔は強張っていた。
「……うぁあ」
「……化粧上手くて気づかなかったけど、よくよく見たら確かにあれは謙信だなぁ」
「ふーん」
女性にしか見えないその人物に、つかつかと葉は近づいた。
「ねぇ、あなた上杉謙信?」
すらっとした肢体。腰まである長い髪、ぴっちりとしたボディコンスタイルのワンピースをきた女性は信長の隣の席をキープしたまま頷いた。
「えぇ、そうよ」
顔は驚くほど整っており、信長にも見劣りしないどころか、信長を凌ぐ美しさだ。まるでスーパーモデルのような容姿だが、声は間違いなく男性のものであった。
「ふぅん、まああなたが上杉謙信でもなんでもいい。うちのホストにならない? そんな女性の恰好をしないで」
女性の恰好というと、謙信は葉を睨みつけ、眉間に皺を寄せた。
「失礼しちゃうわね! アタシは女性になった訳じゃないわ。体は男のままよ!」
「じゃあ何で女性の恰好しているんですか?」
男性の恰好をしている自分が言うのもなんだけど、と思いながらも聞くと謙信は誇らしそうに胸を張った。
「アタシ、美しいでしょ?」
「えぇ、まあ」
確かに謙信はそんじょそこらの女性より格段に美しい。それは間違いないので頷いた。
「だから、より美しい存在になる為に女の恰好をしているの。女とか男とかどうでもいいの、ただただ世の中の為にも美しくありたいの!」
独自の美学を主張する謙信に葉はあっけにとられたが、別に心から女になりたいという訳でもなさそうであった。謙信の行動の指針は『美しさ』。
ならば説得の余地はあると、謙信の隣で美しくスーツを着こなす信長の姿をちらりと見た。男の色気を漂わせる彼も、また美しい。
「男にも、男の美があると思うんだけどなぁ」
確かに女の姿の謙信は美しい。けれども、男の姿の謙信も美しいような気もする。
「なっ、だって男だとお化粧もできないじゃない!」
謙信が反論すると、葉は力説し始めた。
「違う! 分かってない、男の美を! シンプルにメイクで飾らないからこそ、生まれる美もあるはず!」
「っ! 」
自分でも訳の分からないことを言っているなと思ったが、美と言った途端、謙信はピクリと反応した。
いけるかもしれない。葉は畳みかけた。
「華美な物ばかりが美と思っていたら、間違いだ!! 侘びと寂、そしてシンプル・ザ・スーツ! 本当の美をまだあなたは楽しんでいない!」
千代と秀吉は冷めた様子で傍から見守っていた。
「いや、スーツとワビサビって、違うだろ。利休が聞いたらぶちきれる」
「いや、あいつも変なとここだわり深かったから葉の話も納得するかもしんねぇっすよ」
と、千代と秀吉はそれぞれズレた突っ込みをするが、さらに上回るズレた人物がいた。
「シンプル・ザ・スーツ……。深いわね」
謙信は葉の勢いと本当の美という言葉にすっかり惑わされていた。
「いや深くない、深くないっす! 思いっきり浅いから!」
秀吉は思わず突っ込んだ。
「スーツにそんな美があったとは、なるほどな……」
さらにズレた人間である、信長はメモまで取り始めていた。
「いや、信長殿、そこも納得しないで!! 結構天然なんだから、この人ももう!」
千代も呆れた顔でメガネをかけ直した。
そんな秀吉と千代のツッコミを無視して、謙信はうち震えていた。
「アタシ、まだまだ美の伝道師として未熟だったわね。分かったわ、アンタのホストクラブ入ってあげる、そして女の美と、男の美の両方を極めるわ!!」
そう言うと謙信はがっちりと、葉の手を握り締めた。
「是非! きわめて!そしてお客さん捕まえて!」
変なところで乗せ上手な葉である。
「ふむ、あいつなかなか才能あるな」
信長は感心したかのように、そんな謙信と葉の姿を見ながら頷いた。
「へ? 何がですか、信長殿」
いつの間にかちゃっかりと千代は信長の隣に座っている。
「人を巻き込み、相手をその気にさせるのがうまいな。俺には出来ん芸当だ。俺は一人で、何でもやっていたしな」
そう言って少し寂しそうな笑顔を信長は見せた。部下に裏切られ、殺された信長にとって、自分が動くのではなく、人を動かし魅了する葉の姿は複雑なのかもしれない。
「信長殿、私は信長殿に助けられました」
「あぁ」
「そして、幕府まで築くことができました。なので、後悔はありません。あったとすれば、あなたの下で最後まで天下を取れなかったことです」
千代の言葉に、信長はじっと千代を見つめた。
「家康……」
「光秀だけが、部下ではありません」
「ありがとう」
そう言って信長は笑い、家康の頭をぽんぽんと撫でた。
熱く握手を交わし合う謙信と葉と、信長に撫でられ赤くなる家康。
「何このBLな空間……」
店内で二組の男同士の様子に、一人席を離れていた生粋の女好きな秀吉は一人げんなりしてた。
「あ、そうそうアナタ、ホストまだ他にも探しているの?」
興奮冷めやらぬ様子の謙信は握手をしたまま、葉に尋ねてきた。
「あぁ、まだ人は足りないと思う。謙信、誰かいい人知ってるの?」
「この前、大阪駅近くの陸橋の下で、ライブやってる信玄、見かけたわよ」
信玄という名前に、葉はもう諦めた。
「もう、源頼朝が来ても義経が現れても驚かないわ……」
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次の日、葉は信長、千代、秀吉と出勤前に信玄が現れるという大阪駅前の陸橋の下を訪れた。
すると陸橋の下にやたら存在感のある男がギターを抱えて立っていた。顔の系統的にはアッサリ顔の千代とやや顔が濃い目の信長の中間で、薄くも濃くもない。まさに正統派の男前で、謙信とは、また違った圧倒的な華がある男だ。
「あれ、信玄だ!」
秀吉が驚きの声をあげると、信玄と呼ばれた男は手を振ってこちらを向いた。
「よぉ~秀吉、それに家康に、信長か。この時代でもお前ら見るとは思わなかったぜぇ」
「久しぶりだな、信玄」
動揺する様子もなく答える信長の姿に、葉はついに諦めた。
あぁ、本当に武田信玄なんだ。そうなんだ、そういうことにしよう。深く考えるのを辞め、葉は信玄の元に近づき単刀直入に切り出した。
「あの、俺、ホスト探しているのですが、信玄さんホストしません?」
半ばやけくそな言い草に、千代は眉をひそめ、咎めるような表情をしたが葉は無視をした。
「やぁ、お嬢ちゃん。ホストクラブで歌っていいのか?」
思わぬ質問と、お嬢ちゃんと言われたことに内心動揺したが平静を装い答えた。
「俺は男です。女顔なので良く間違えられますが……。ええとまあ一応防音もしてありますし、その日売上げNO.1の人は最後に歌を歌っていますから、大丈夫ですよ」
葉の答えに、信玄はにこにこと顎を撫でながら笑った。笑うとさらに男前だなぁと、思わず葉も見惚れる。
「じゃあ、なるわ~」
即答の信玄に、秀吉と千代はかえって慌てていた。
「軽!」
「えぇ、いいんですか? 信玄殿」
「歌えればオレはどこでもいいんだよー!」
豪快に笑う信玄に、信長が歩み寄り手を差し伸べた。
「……よろしく」
「あぁ」
今までに見たことのない酷薄な笑顔を浮かべる信長に、葉はぞっとした。ようやく彼が第六天魔王だと言われていた織田信長であると確信めいたものを感じ、ようやく信じれるような気になってきた。
「……なんかもう借金とか、父さまの失踪とかどうでも良くなりそうだわ」
だがそれ以上に、葉にとって衝撃的な事件が起こるのであった。
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2003年5月2日
そしてさらに1ヶ月後。ゴールデンウィーク前の金曜日を迎えた。大型連休前のせいか、客は浮足立っていた。
「今日も雅さんくるだろ」
「あぁ、そろそろだね」
千代に言われ、葉は頷いた。
雅は毎週金曜日の夜、葉の元に訪れていた。まだまだNO.1には程遠いが、雅のお陰で、売上は上がり、葉の売上げの半分を支えていた。
オーナーではあるが、ホスト一人一人空の売上げが全て貰えるわけではない。勿論彼らにも売上げの一部を渡している。オーナー兼ホストの為売り上げが全て入る直接の指名は、葉にとってありがたかった。
その日の金曜日もいつものように雅に指名され、席に着いた。
「こんばんは、雅。すっかり常連だね。でもこんなGW前に来なくても誰かと遊んだり、旅行いかないの?」
しかも同世代で優しい雅の存在は葉にとっても癒しでもあった。
自然と浮かぶ笑みを向けると真剣な顔で、雅が頬を紅潮させながらじっと見つめてきた。
「いいえ。わたくしは旅行にいくより、葉さまに会いたいですわ。それに葉さま、相談があるのです」
「相談? 何? 俺で力になれるなら」
「えぇ、葉さまにしか力になれないことです」
熱を帯び、潤んだ目。風邪でもひいたのだろうかと、心配すると、雅は葉の手を握り締め、今にも消えそうな小声で囁いた。
「……わたくしは、九条寺 雅は、葉さまが好きです」
「……へっ?」
葉がホストをはじめて3カ月。残り借金4億円9910万円。
続く
イイネ!
7人がイイネ!と言っています。
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