目次
-
2013.07.16
-
2013.07.22
-
2013.07.29
-
2013.08.05
-
2013.08.12
-
2013.08.19
-
2013.08.26
-
2013.09.02
-
2013.09.09
-
2013.09.17
-
2013.09.24
-
2013.09.30
-
2013.10.07
-
2013.10.15
-
2013.10.21
-
2013.10.28
-
2013.11.05
-
2013.11.11
-
2013.11.18
-
2013.11.25
-
2013.12.02
-
2013.12.09
-
2013.12.16
-
2013.12.24
-
2014.01.06
-
2014.01.14
-
2014.01.20
-
2014.01.27
-
2014.02.03
-
New!!
2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.07.16
第1話 二人のノブナガ(前編)
永禄11年、西暦1568年9月26日。
織田信長が足利義昭を連れ、京都に上洛した日と言われている。
信長の本格的な天下統一が始まった日でもあった。
そして、記録には残されていない信長と、とある女の出会いの日でもあった。
信長は上洛したその日、自室にその女を呼び付けた。
部屋の中で信長と女は二人きり。
「貴様、名をなんと申す」
胸元が大きく開いた、燃え上がるような赤い『どれす』に女は身を包んでいた。この時代にはまだ存在しないものだ。
首からロザリオを下げた女は、ぐっと信長を睨みつける。
「信岡奈々(のぶおか なな)よ。皆からは『ノブナガ』と呼ばれているわ。信長公――」
2013年9月26日
港町、神戸。
ファッションや食べ物、スポーツなど常に最先端のものを受け入れてきた街である。
そんな神戸の中心街、三ノ宮から少し離れた山手に坂をあがって行くと、マリア教会という小さな教会がある。
教会は養護施設も兼ねているため、子どもたちの騒ぐ声でいつも賑やかだ。
シスターが6人、孤児が12人ほど共に住んでいる。子どもたちの年齢は赤ん坊から15歳とバラバラだ。
親はいないが皆、自分の立場を嘆く事なく明るく笑顔で日々を過ごしている。
礼拝堂と住居棟の間にある庭で、幼い子どもたちはそれぞれの時間を過ごしていた。
礼拝堂の鐘が鳴る。12時を知らせる鐘の音だ。
「ノブナガー!!! もうお昼だよー!」
子どもたちは、住居棟の2階のとある窓に向けて叫んだ。窓には桃色の女の子らしいカーテンがかかっている。だがカーテンは開かれる様子はない。
「ノブナガ、まだ寝ているのかな?」
「昨日も“あふたー”ってシスターたち話してた!」
「“あふたー”って?」
「お客さんと、遅くまで飲むことでしょ?」
「でも、今日“どうはん”があるから、起きなきゃ! ってノブナガ言ってたよ」
「じゃあ部屋に行っちゃう?」
「行こう、行こう! ノブナガの部屋のひらひらのドレスみたい!」
子どもたちはそう言うと、顔を見合わせて住居棟の階段を駆け上がる。そして廊下を走り、2階の一番奥にある部屋のドアを開けた。
「おはよー! ノブナガ!」
先頭を切る女の子が部屋の隅にあるベッドにダイブした。
「うっ、ムツキ。重たい……」
ベッドの中からうめき声が聞こえる。首からロザリオを下げた女が起き上った。目が大きく意思の強そうな、派手な顔立ちの美人である。
「ノブナガ! おはよう!」
「おはよう、ムツキ、きさらぎ、弥生。起こしてくれて、ありがと。ただ、もーちょっとだけ静かに起こして……」
ノブナガこと信岡奈々はそう言って、二日酔いの頭を抱え込んだ。ノブナガは本名をもじって歴史上の戦国武将、織田信長からつけられたあだ名だ。皆、奈々の事を当たり前のようにそう呼ぶ。
「えーと、スーパーでの買い物はよし。帰ったら弥生の洋服直しと、あとサツキの宿題の手伝いかな」
ノブナガは教会の前でメモを片手に、ぶつくさとつぶやく。携帯を見ると、もうすぐで17時だ。
「ヤバい、はやく宿題終わらせて準備しないと!」
もー、今日も忙しい~と文句を言いながらも、ノブナガはどこか楽しそうだ。
ノブナガには両親がいない。いつも身につけているロザリオと一緒に、教会の前に捨てられていた。赤ん坊の頃からシスターたちに育てられ、20年の歳月を過ごしている。通常、教会に住む子どもたちは15歳を超える前にはほとんど里親に出される。
ノブナガも里親に出される予定だった。ところが人見知りと気性の荒い性格が災いし、シスターたちにしか懐かず、教会でずっと暮らしている。高校を卒業してからは、独立しようと様々なアルバイトをしていた。
ところが、周囲と揉めて職場を辞めてばかりだった。
原因はノブナガの育ちと、教会をバカにする周囲の発言と態度だった。ノブナガは学生時代剣道部だった為、喧嘩も強く、正義感が強過ぎた。不条理な職場のもめごとがある度に相手に手を出して、すぐクビになり、今のアルバイトだけが続いているのだ。
ノブナガはサツキの宿題が終わると、自室に戻り手早く準備をする。いつもはジーパンにTシャツ姿が多い。今日は同伴のため可愛らしいシンプルな白いワンピースだ。
胸元にはロザリオが光る。
「ノブナガ」
教会から出ようとすると、呼びとめられた。修道院長が立っている。髪は白髪で、顔はしわだらけだが、いつも優しい目で微笑みをたやさない。ノブナガにとって母のような存在である。
「今から出勤かい?」
「はい、院長。今日は同伴です」
ノブナガは、ほほ笑んだ。
「いってらっしゃい。いつもありがとうね。あなたは今日も私の自慢の娘よ、ノブナガ」
院長は自分より背の高いノブナガに手を伸ばし、抱きしめる。
ノブナガも、やせ細った院長を抱きしめ返した。
「ありがとう、院長。今日も頑張ってきます」
キャバ嬢、ノブナガの出勤である。
「あ、店長! ノブナガきたよ~!」
「あら、ノブナガ姫。今日も同伴、おつかれさま。えらいわぁ。今日もかわいい私の姫」
店長と呼ばれた少しふとめの女性アイがノブナガに抱きついた。歳は40半ばくらい。“club IXA(クラブ イクサ)”はこの店長かつ女経営者である、アイの店である。
店は神戸、三ノ宮の繁華街の少し山手側で、教会からも近い。店には50人ほどのキャバ嬢が働いている。
規模は決して小さくない。内装もきらびやかではあるが、品よく落ち着いている。店長のキャラクターのせいか皆愛矯良く、フレンドリーで可愛い子が多いと、評判の店だ。
ノブナガにとっては今までの仕事とは違い、働きやすい職場だ。
店長がキャバ嬢一人一人を「姫」と呼ぶのは、この店独特のルールである。店長いわく女の子は大切に扱うべき店の『お姫様』という意味を込めているそうだ。そのせいか接客や売上に関しては厳しいが、待遇はかなりいい。他店から働かせてほしいという人も来るそうだ。
「ノブナガ姫が働き初めて、今日で9ヶ月かしらぁ。ほんとアナタ綺麗になったね~」
店長は笑いながら、控室で着替え終わったノブナガの背中を景気よく叩いた。
「ほんと! しかも今、蘭よりすごいもんね! ウチの王様でナンバー1だもんね!大好き!」
店長の隣にいた小柄の可愛らしい美少女、蘭が無邪気に笑い、ノブナガに抱きついた。
「王様じゃなくて、女王だよね? まあでも確かに前はほんと男みたいでしたもんね。わたし」
ノブナガは苦笑した。壁にかけられた鏡に映った自分の姿を見つめた。
綺麗に整えられた髪。マスカラがたっぷり塗られたまつ毛。ふっくらとした唇は口紅で桜色にそまっていた。ロザリオと、ダイヤのネックレスは胸元を彩り、お気に入りの真っ赤なドレスは、派手な顔立ちのノブナガによく似合っていた。
我ながら、今日もなかなかの美女だ。ノブナガは内心ガッツポーズを決める。無論、表情には出さず、妖艶な笑みを絶やさない。
「ほんと、綺麗になったわねぇ。ノブナガ姫」
店長は感慨深げにうなずいた。店長との出会いは四月にさかのぼる。その頃ノブナガは居酒屋で働いていた。
ある日酔っ払いに絡まれている女の子を助けてあげたのだが、その女の子が蘭だった。
おびえる蘭を“club IXA”まで送ってあげた時に、店長に声をかけられたのである。
「ねぇあなた。職場クビになったんだって? よかったらうちで働かない?」
ノブナガは思いがけないスカウトに戸惑った。髪の毛もショートカットで身長も高く、その頃はよく男に間違われていた。そんな自分がキャバ嬢になるのが想像できなかったのだ。
「キャバ嬢なんて無理!」
「いける、いけるわよぉ。私、人を見る力には自信あるの」
「そうそう、店長の言うとおり! ノブナガイケメンだし、付き合いたい!」
「いや付き合わないよ……」
そう言いながらも熱心な店長と蘭の口説きに、心が揺らいだ。
(私が稼げたら、みんなに美味しいご飯たべさせてあげられるかも……)
ここ数年不景気のせいか教会への寄付も減っている。目に見えて暮らしは厳しくなっていた。わずかなアルバイト代を無理やり院長に渡していたが、とても足りそうになかった。年々大きくなる育ちざかりの子どもたちの事を考えると、今後はもっと収入が必要だろう。
その矢先のスカウトである。仕事の話はありがたい。
しかし自分に務まるのか自信はなかった。それでも気になることが一つあったので聞いてみた。
「あの、キャバのお給与って、やっぱりいいの?」
「ぶっちゃけいいわよ」
そっと店長は金額をノブナガの耳元でささやいた。今まで聞いたことがない金額に、目を輝かせる。
「是非働かせてください!」
結構現金な性格である。

さて歴史に興味がないよ! と言う方も『織田信長』の名前は聞いた事ありませんか? 1534年、今から479年前の人物です。
元々戦国時代、尾張という愛知県西部の小国の武将でした。
大変優れた人物で一族内の争いに勝ち抜き、桶狭間の戦いで大国の主今川義元を破ると、一気に天下統一に名乗りを上げました。
うつけ者と呼ばれ大変豪快なイメージが強いですが、その裏で様々な努力と先見性を発揮し、乱世を生きた人物です。
信長の生き様を是非小説で楽しんで下さいね。
イイネ!
20人がイイネ!と言っています。
■注意■
- ●この小説はすべてフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
- ●この小説の著作権は「ポケパラ」にあり、無断転載(部分引用含む)は禁止です。
- ●無断転載を行った場合、著作権法の違反となります。


