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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.12.02
第11話 長篠の戦い(前編)
木場蔵“おにころし”はお市がキャストになって数か月が経った。
やさしく母性的な美女で信長の妹である『お市』と、勝ち気で姉御肌の美女ノブナガこと『奈々』という対照的な二人の存在が評判を上げ、日に日に店の人気は高まっていった。
「本当にお市様が“おにころし”に来て下さってよかったです」
お市の気品溢れた雰囲気は貴族達にも受け、お市に負けまいと他のキャスト達も美を磨き始め、レベルもぐんと上がった。
京にももう一店舗構えてみないかという話が出る程であった。
「ふふ、わたくしも奈々に声をかけてもらって良かったわ……」
ノブナガは、微笑むお市にほっとした。
一時期笑顔が消えたお市の姿は見ているだけで痛々しかった。
天下人に一番近いと言われている信長の妹に店を手伝って貰うのはどうかと思っていたが、接客上手なお市はキャバ嬢に向いていた。
「いえいえ、本当に助かっています。こちらの時代にきて随分経ちますが、未だに分からない風習とかありますし。経営の面でも支えて貰って助かります」
かつて一緒に宴を共にした時にも思ったが、お市はかなり頭の回転が早く周囲への気遣いも抜群だ。
戦国一と言われる美貌を一目見ようと訪れる客も多く、リピーターも多い。
「ふふ。今までは何かして貰うばかりでしたけど、こうやって自分で働くという経験は初めてでなんだか胸が弾みますわ」
ドレスは苦手だからと着物姿で微笑むお市の姿は、初めてキャバ嬢の仕事で居場所を見つけた自分の姿に妙に重なって見え、涙腺がゆるんだ。
(“club IXA”の皆、元気かな)
教会のシスターや子どもの達の事もつられて思い出す。会いたい。でも会えない。今は目の前の仕事を頑張るしかない。
「さて、今日も頑張って稼ぎますか」
涙をこらえ、今日も木場蔵“おにころし”を開店させた。
**
「あの、これどういうことですか?」
「あぁ、お久しぶりです~」
木場蔵“おにころし”の信長専用の個室に向かうと、信長と何故かすでに赤ら顔で出来あがっている家康の姿があった。
「あぁ、家康の鬱憤が溜まっているみたいで、連れて来たのだが」
信長の面倒くさそうな顔で、全て察した。これは一晩飲みあかしコースになるかもしれない。たまに来客時からお酒を飲んでいるお客様もいる。
けれども、真面目そうな家康が乱れている姿には驚いた。
「あぁ、な、奈々殿でしたか~? いやあ信長殿から美味しいお酒を頂きまして。ふふ、もっと飲みたくなっちゃったんですよねぇ~。付き合ってくれますか?」
「あ、はい。お相手します!」
前回飲んでいた時とは明らかに違う。若干動揺しながらも覚悟を決めて、家康に酒をつぎ始めた。目が据わっている。こういう客は刺激しないに限る。
「自分で言うのもなんですが、わ、私苦労しまして、若い頃は色々な所で人質として渡り歩いて育ったんです」
「はぁ」
「ですが信長殿が、今川を倒してくれたお陰で、ようやく人質人生から! 解放されたんです! だから信長殿には感謝しています!」
完全な酔っ払いだ。信長の方を見ると、無言でゆっくり首を横に振った。それどころか離れて縁側で一人静かに飲み始めた。
(信長様逃げた!?)
内心焦りながらも、うんうんと相槌を打ちながら家康の話を聞き続けた。だいぶ酒臭いが、仕方ない。
「でも、でも! この前の三ヶ原の戦いでは援助に来てくれず、今も武田の勝頼が迫って来ていると言うのに!! 何故信長殿は援軍をしてくれないのですか! この家康! 不肖ながら何度も信長殿の危機を救って来た筈です!」
「お、落ち着いて下さい。家康様」
興奮した家康を慌てて抱き止めると、家康は顔を更に赤らめてノブナガの胸に顔をうずめようとした。
「あぁ、ここ落ち着きますね~」
「ちょっ……」
止めてと叫ぼうとすると、信長が真顔で間に入って来た。そして家康の首に手刀を打つ。
「うっ」
うめき声をあげて家康は気を失った。
「大分酔っているようだな、家康……」
「あ、ありがとうございます、助けて頂いて」
「ふん。貴様ももう少し気をつけろ。ところで、火縄銃を使ったことはあるか?」
信長の突然の問いに、答えに詰まった。
「火縄、銃ですか?」
信長は部屋の隅に置いていた風呂敷に包まれた物を取り出してきた。
「あぁ。貴様は剣術のたしなみもあったし、もしや銃もと思っていな」
信長が手早く風呂敷をほどくと、細長い銃身が現れる。写真教科書にも載っていたが、実物は初めてだ。
「いえ、私の時代では厳しい規制がありまして。取り扱ったことはないですね」
「そうか。この前3,000丁購入したので一人でも使い手が欲しかったのだが」
大量の火縄銃の数に驚きの声をあげた。
「3,000丁!? なんですか、鉄砲隊でも作るんですか」
鉄砲隊と言ってはっとした。まるで目の前で歴史の教科書がめくられていくようだ。
「あぁ、勘がイイな。それとも貴様の未来の知識か?」
信長はにやりと笑った。そうだ、知っている。信長は戦国時代後期、鉄砲隊を作ったのだ。現代の銃とは違い、戦国時代の火縄銃は扱いが難しい。雨に弱く、射程距離も短い。
ただし当たれば確実に敵を『殺せる』武器になる。
思わず鳥肌が立った。
そして鉄砲隊を実践として取り入れたのは、とある人との戦いだ。
「武田軍と戦うのですね」
信長は不遜な笑みを浮かべた。
「あぁ、家康にも泣かれたしな。信玄も死んだ」
信長は火縄銃を構え、ノブナガに向けた。
「戦うのならば、今だ」

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