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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.10.07
第7話 裏切りとはじまり(前編)
「一体どこまで逃げればいいの……」
ノブナガは泥にまみれた自分を見て思わず愚痴り、足を止めた。
もう限界だ。
一体どれだけ歩いたのだろう。
長政の裏切りを知った後の信長の決断は早かった。長政と朝倉に挟まれることを恐れ、攻め落とした金ヶ崎城もすぐに放棄し、撤退する事になった。近江、滋賀から都、京都、そして更に移動し、美濃の国、岐阜へ向かっている。
寝る時以外はほぼ歩き通しの行軍に、体は悲鳴を上げていた。
「奈々丸様、生きていますか? 死んだら信長様に殺されますよ?」
「秀吉様、い、生きてますよ! けど、どこまで逃げればいいのか」
「弱音を吐く暇があるなら、足を動かせ。余計な事を考えずにな」
「利家様」
落ち込んでいるノブナガに秀吉と利家が声をかけた。
軽口を叩く二人だが、ノブナガよりも顔色が悪く疲労の色が濃かった。
特に金ヶ崎城から退却する際、軍の最後尾を務めた秀吉は酷かった。全身に怪我を負い、あちこちに包帯を巻いているが、返り血と自らの血で白かった包帯が赤黒く滲んでいる。
利家も背中に大きな怪我を負い、夜中は熱でうなされ、ろくに寝ていないようだ。それでもなんとか励まそうとする二人の姿に涙をふき取り、歩き出した。
生きなければ。その為にも逃げるしかない。逃げなければ殺される。そう思うと自然と足も早くなる。
退却時、多くの兵が犠牲になった。戦いは防戦一方で、兵士たちの士気も下がっている。それでも今は逃げるしかない。唇をかみ締め、足を必死に動かした。
(信長様、大丈夫だろうか)
前を行く信長の様子が気になった。大将である信長は特に屈強な兵に守られている。信長自身も鬼のように強いので、簡単に殺される事はないだろう。それよりも長政に裏切られたという事実が、信長の心を深く傷つけているのではと気になった。
一ヶ月にも渡る行軍により、無事岐阜城に着き、ようやく信長達は腰を落ち着ける事が出来た。ノブナガもほっとして数日は体を休めていた。しかし、一週間経っても何も信長からの指示が出ない。家臣達は動揺していた。変わらず仕事する者、何も手がつかない者、反応はそれぞれだが不安だけが、大きくなっていく。
「利家様、信長様一体どうしたんでしょう」
「さぁ、わからん。ずっと部屋に閉じこもりっきりだしな」
「えぇ」
ノブナガは利家とともに軍の現状をまとめていたが、想像以上の被害に心が痛くなった。同い年くらいの兵も命を落としている。改めて戦の痛ましさを感じていた。
岐阜城に着いてから、信長は一度も自室から出てこなかった。食事もろくに食べていないようだ。このままでは衰弱死もありえる。こんな事は初めてらしく、馴染みの家臣である利家も不安の色が隠せないでいた。
(このままじゃ、いけない)
ノブナガは覚悟を決め、信長の部屋に訪れた。
「失礼します」
すっと襖を開けると、信長は縁側に座り月を眺めていた。夜空には細い三日月ぽつりと浮かんでいる。その姿が妙にやせ細った信長の姿と重なった。
「食事食べないんですか」
「あぁ」
信長は振り返りもせず返事する。話を聞くつもりはないようだ。
「長政様のこと、お辛いのは分かりますが……せめて食事だけでも」
縁側を下り、無理やり信長の前で仁王立ちになった。
ようやく、信長は面倒くさそうに目を合わせる。
「その格好で俺の前に現れるな」
消え入りそうな声で信長は、ぼやいた。ノブナガは密かに持ち出していた赤いドレス姿に着替えていた。長政とお市、そして信長と4人で最後に共に過ごした宴での格好だ。信長は見るだけでも辛いのだろう。それでもキッと信長を睨み、反論した。
「いやです。この格好は私の勝負服ですから」
「勝負服」
「えぇ、私達キャバクラ嬢の勝負服です。お客様の心を癒す為に、常に美しく毅然としていろと教えられたので」
「ふん、美しくか。癒すと言っても、こっちの癒しでもいいんだぞ」
そう言って信長は、ノブナガの腕を掴み、乱暴に縁側に押し倒す。
荒い息が顔にかかる。ろくに食事もしていないとはいえ、男性の力には敵わない。
それでもここで負けてはいけないと、ノブナガはもう一度挑むように睨んだ。信長の目は生気を失い暗く、闇しか見ていないような目をしていた。
いけない。こんな顔をさせてはいけない。押し倒された恐怖より、信長という一人の人間を励ましたいという気持ちが勝り、つい手がでた。
ぱんっという頬を叩く音が室内に響く。
「しっかりして下さい、信長様。それに私は体を売るのが仕事ではありません。あくまでも、もてなしで癒すのが仕事です」
声を震わせながらも、そっと信長の体を押すと、信長は興味を失ったかのように起き上がった。
「ふん、もてなしか……」
ほっとしてノブナガは胸を撫で下ろした。背中から汗が流れる。ココで言わなければ終わりだ。
「はい、そうです。信長様、お願いですからこれ食べてください」
そう言うと、用意していた食事を信長に差し出した。
「これは……」
「お市様の小豆で作った小豆ご飯です。長政様のお心は私には分かりません」
唇をかみ締め、言葉を続ける。
「でも、お市様のお気持ちは分かります」
信長の目にほんの少しだけ、生気が戻った。
「お市の気持ち?」
「えぇ、長政様とお市様はとても愛し合っておられます。きっと今もまだ長政様の元にいる事からも分かります」
「あぁ、そうだ。お市も長政も、俺を裏切ったんだ」
ノブナガは耐えられず、もう一度信長の頬を叩いた。
「違います! 考えて下さい! この小豆を送って下さったお市様の気持ちを! 長政様と敵対しても、なんとか信長様の命は救いたかったのです。信長様に生き延びてほしいと思う、お市様の心をどうか受け取って下さい」
ノブナガの言葉に、信長は目を見開いた。お市の行動は長政からすれば、裏切りの行為だ。お市の陣中見舞いの本当の目的に長政も気付いていただろう。にもかかわらずお市の行動を見逃した。それは長政がまだ迷っているという事だ。
「あぁ、そうだな」
ようやく信長の顔に生気が戻って来た。
「奈々、酌をしろ。今日はなんだか飲みたい気分だ」
そう言われて用意していたお酒も取り出した。信長の地元のお酒である。秀吉に頼んで用意したものだ。きっと地元のものが信長に癒しと力をくれるだろう。
「はい、良く呑んで、良く食べてくださいませ。そして良く寝て下さい。明日からいつもの信長様に戻れるように」
「あぁ。奈々。貴様はいい『きゃばくら嬢』だ。……少し手は早すぎるがな」
と、信長は赤くなった頬をさする。ノブナガは顔を青くして謝罪した。
「も、申し訳ないです!」
信長は豪快に笑い飛ばした。

また朝倉義景の義は13代目将軍足利義輝の義から貰っており将軍家とも近い関係で、名門中の名門でした。足利義昭は当初朝倉氏に保護され、上洛予定でした。しかし息子を失った事により悲しみに暮れ、機会を逃すのです。
代わりに朝倉氏に仕えていた明智光秀が信長を紹介し、信長と将軍は上洛しました。信長と義昭の関係が悪化するに連れ、義昭は再び朝倉氏を頼りましたが、もし当初の予定のまま朝倉氏が上洛すれば歴史は大きく変わっていたでしょう。
イイネ!
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