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ポケパラノベル
ポケパラ体入>ポケノベ>ノブナガ>第1話 二人のノブナガ(後編)
小説タイトル
イラスト:ミカミ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルノブナガ【完】 更新日時2013.07.22

第1話 二人のノブナガ(後編)

小説挿絵 ノブナガは働き始めたその日から、店長と蘭に徹底的に鍛え上げられた。さすがに短髪にノーメイクではキャバ嬢にはなれない。
「ノブナガ~! 姿勢が猫ちゃんの背中、えっと猫背だよ~! 腹筋さんもきゅっとしめて~!! 髪が伸びるまでカツラちゃんね!」
「下着にスポブラはだ~め! パッドで胸つめちゃお~」
と無邪気だが、蘭は的確なアドバイスをしてくれた。
「ほら、姫。ネイルが禿げてる、きちんと塗りなさいね」
「姫、お客さまへの笑顔は口角をあげて。射殺すような目で見ちゃだめよ?」
「香水は、ふわっと香りを残す程度。石鹸のかおりがいいわ。同伴で食事する時はなるべく控えて」
と店長は優しく、女らしさに磨きをあげるように注意してくれた。
がさつなノブナガにはかなりきつかったが、それでも必死で二人についていった。確かに二人は厳しい。けれども一度たりとも施設育ちである事、教会の事や子どもたちの事をバカにしなかった。
それどころか、必死に教会の生活を支えようとするノブナガを気遣った。
「あ、ノブナガ。このお菓子、子どもたちにどう?」
「ノブナガ姫~。教会の院長、お元気かしら? よかったらこの果物いかが?」
こんな職場は初めてだった。ノブナガは感激し、身を粉にして働いた。
「えっと、近藤さんの好きな煙草はAのメーカーで、斎藤さんの1杯目はビール、2杯目は出身地のお酒だっけ」
キャバ嬢といえば一見華やかに見える世界かもしれない。だが実際はお客様があっての仕事である。ノブナガはすぐにその点に気づき、接客した相手の情報を「記憶」するようになった。
どんな相手にも平等に扱うノブナガのファンは増えていった。
そしてついに売上でナンバー1だった蘭を抜いた。ノブナガは見事“club IXA”のトップとして君臨したのである。
「ノブナガ姫、御指名よ――」
店長に声をかけられ、思い出に浸っていたノブナガは軽く自分のほほを叩き、ロザリオを握りしめた。
「さて、今日も頑張って稼ぎますか」



「お疲れさま―!」
「姫たちおつかれさま。皆気をつけてかえってね。あ、ごめんなさい。ノブナガ姫は残って」
「? ハイ。わかりました店長」
店長に誘われるまま、ノブナガは店の2階に上がった。2階は店の事務方や衣装ルームなど、店の舞台裏だ。
それなりに儲けているはずなのに、華やかな1階に比べて2階は随分シンプルである。まるで普通の会社の事務所のようだ。
店長はそのうちの一室、社長室にノブナガを招いた。
室内はモノトーンのインテリアでまとめられている。ブラックの仕事用の机とイス、本棚、そしてキャビネットが備え付けられ、小さな2人掛け用のソファの前に背の低い丸いテーブルが置かれているだけである。
棚には書類が綺麗に分類され、机の上にはデスク型のパソコンが一つ、そしてキャビネットの上にはスキャナ兼コピー機が置かれていた。
「ここだけみると、キャバクラっぽくないですね。相変わらず」
「初めてノブナガが店に来た時もそう言ってたわね」
店長は仕事用のイスに座り、ノブナガをソファに座らせた。
「そうでしたっけ。で、何かお話ですか?」
最近は大きなミスはしていない。ただ何か気づかないところで、見落としがあったのだろうかと、眉間に皺を寄せた。
「ああ、別に注意とかじゃないわよ。ほんと見ために反して真面目よねぇ。これに出てみない? っていう単なるお・さ・そ・い★」
店長は机の引き出しから、A4サイズのポスターを取り出すと、ノブナガに手渡した。
「えっと、『全日本キャバクラグランプリ』? って何ですかコレ?」
「カンタンにいうと、各地のナンバー1キャバ嬢が集まって、日本イチのキャバクラ嬢を決める大会よ」
「はぁ」
へーそんな大会あるんだと、キャバ歴の浅いノブナガは感心した。手元のポスターに視線を落とす。
「店長、まさかこれに出ろって言うんじゃ……?」
店長はにっこりと満面の笑みを浮かべた。昔、ノブナガをスカウトした時と同じ顔をしている。あ、これは嫌な予感がするとノブナガは思った。
「ええ、そうよ」
「嫌です!」
間髪入れずに答える。
「えーなんでよ~」
「なんで、って私がこんな大会でも恥かくだけです! お店にも迷惑かけますって!」
「だいじょーぶよ☆」
「大丈夫じゃないですっ!」
ノブナガは叫んだ。確かにキャバ嬢としての接客スキルには自信がある。
ただこういう知らない人にさらされる場に出るのは嫌だった。目力があり過ぎて、初対面の人間からは評判が悪いのだ。「初見殺し」という有り難くないアダ名までつけられている。
「こういうのは、蘭が出た方がいいですよ……」愛想の良さでは、蘭が店ではナンバー1だ。
「蘭、前に出て優勝しているのよ~。優勝者は出られないの。それに」
今のナンバー1はアナタだしと、店長は笑った。
確かにその通りだ。
「でも……」
それでも反論しようとすると、店長はにやりと笑った。
「優勝したら賞金は100万円。なんなら時給も大幅アップしてあげるわよ」
賞金100万円と時給アップと聞いて、ノブナガの心は浮き立った。教会の子どもたちの顔がよぎる。彼等のことを考えるとやるしかない。
「やります。やらせて頂きます! 絶対優勝します!」
「じゃ、よろしくね♪」
こうしてノブナガは『キャバクラGP』に出場する事が決まったのである。

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