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ポケパラノベル
ポケパラ体入>ポケノベ>ノブナガ>第8話 再び京へ(前編)
小説タイトル
イラスト:ミカミ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルノブナガ【完】 更新日時2013.10.21

第8話 再び京へ(前編)

小説挿絵 1572年6月。
季節は春から夏に移り変わっていた。
姉川の戦いは合流した徳川軍の奮闘もあり、無事辛勝出来たらしい。と言っても織田軍と朝倉軍は未だ拮抗状況のようだ。
それでも勝利は勝利に変わりはない。何とか危機は乗り越えられた。
「いやいや、こうやって勝利の美酒を味わえるのはありがたいですな」
織田信長の同盟相手、徳川家康は顔をほころばせ杯を仰いだ。勝利を収めた後、義昭に報告しに京都に向かってすぐ信長軍と徳川軍は体制を整える為、岐阜城に戻って来た。そして“木場蔵 おにころし”でお祝いの宴が開かれたのだ。
家康とノブナガは初対面であるが、教科書でいつも見ていた人物との出会いに、内心興奮した。教科書の家康の自画像は老いて太り、丸々とした人物であった。が、今目の前にいるのはまだ20代の若者だ。
顔こそやや丸みを帯びているが、細身でしなやかそうな体つきをした爽やかな好青年であった。常ににこにこと笑みを浮かべる優しげな家康に、ノブナガは好感を持った。
(結婚するなら長政様とか、家康様みたいな優しそうな人がいいなぁ)
そう思いつつも、長政の事を思い出すと胸が痛んだ。好意を持った相手でも、いつ敵になるか分からない。それが戦国の世だ。
「はは、家康のおかげだな」
「いえいえ、それにしても木場蔵というのですか? ここは。皆さんとても美しく、そして酒もうまい。初めて見る形の着物を着ていますが……」
「家康様、ドレスという召し物になります」
空いた家康の杯にお酒を注ぎながら、ノブナガは答えた。
「あぁ、南蛮の着物らしい。珍しいだろう」
信長はお酒をあおり、自分にも注げといわんばかりに杯を差し出したので、慌ててお酒を注いだ。今日はなんだか信長の飲むペースが早い。
「『どれす』ですか。初めて見ました。皆さん凄くお似合いですね。ただ少し肌見せが過ぎるのでは」
そう言って家康は顔を少し赤らめた。新鮮な反応に微笑ましくなった。純な人だ。とても勇ましく戦う武将には見えない。ドレスの露出に信長は特に反応しなかったし、秀吉はむしろ堂々と胸を見てくる。利家は「『どれす』と着物の時では胸の大きさが違うな」とセクハラ発言をしてくる。
(可愛い人だなぁ。この人がまさか、ねぇ)
家康の未来を知っているノブナガは苦笑した。もっと話をしてみたいと思ったが、信長がずっと家康と熱く語っていたので、それ以上特に会話を交わす事なく宴は和やかに終わった。
次の日、現在の愛知県東部にあたる三河の国に家康は帰国した。去っていく家康の姿を遠目で見送りながら、後に世の中を大きく動かすであろうまだ若く頼りない背中を、内心複雑な思いで見送った。


そしてそれから二年。
あちこちで信長は戦を繰り広げるが、戦況は一進一退を繰り返していた。信長は民衆に対しては寛大な主ではあった。しかし敵に対して容赦ないせいか各地で敵を作り、常に反感を買っているようであった。
「倒しても、倒してもまた敵が現れる。まるで死なない妖怪と戦っているようだ」
長く辛く、そして変わらぬ戦続きの日々。“木場蔵 おにころし”に訪れる度に、いつも強気な信長も流石に弱音を吐いていた。それも仕方ない事だとノブナガは思った。敵対していた朝倉・浅井長政だけではなく、当時巨大な兵力も持っていた比叡山延暦寺や本願寺とも戦を繰り広げていた為、休戦と開戦を繰り返していた。
更にそれ以外に全国各地から、信長に対して不穏な動きがあるようだと知将である秀吉も頭を抱えていた。普段こそ信長は平然としていたが、あまり飲まなかった酒量が以前より明らかに増えていた。
なんとか助けたいと思うものの、ノブナガには利家のような武力、秀吉のような知力も無い。出来るとすればせいぜい“おにころし”に訪れる織田軍の武将達をもてなし、士気を上げる事ぐらいだ。どうすればもっと皆を励ませるかと、“おにころし”のキャストやスタッフと日々打ち合わせをした。
「食事もお酒も精一杯用意できる美味しいものを用意していますし、後はやっぱり、美女じゃないですかね。おもてなしは、ノブナガ様に言われて頑張っていますけど……」
夫と子どもを失ったという一番年配の女性スタッフお菊の意見に、ノブナガは頷いた。確かに皆やる気と愛矯はあるが、いまいち華があるとは言えなかった。
自分も美人とは言われるが、どちらかというと男顔でキツく甘えたい男達からはどうにもウケが悪い。女らしくそれでいて上品な美しいキャスト、と考えてふとある人の顔が浮んだ。
「お市様がいたら、間違いなく男達の士気が上がるよなぁ」
が、慌てて頭を振る。お市は長政の元にいる。それはとても出来そうにもなかった。そんなノブナガの苦悩をよそに、“木場蔵 おにころし”の評判は上々であった。
すると休戦の為に京に戻ろうとする信長から、とある命令が下された。
「奈々よ、お前も俺と一緒に来い。そして京にも木場蔵“おにころし”を作れ」
「え? 岐阜城のは?」
「他の者に任せろ。大丈夫だ。地獄を見てきた女達だ。お前がいなくとも上手くやる」
確かに戦乱の世の中を生きているせいか、平成に生きる女達よりよっぽど肝が据わっている。指名やキャストごとの売り上げのランキングなど女性同士を競わせる仕組みを整えたところ、良い意味で岐阜城の“おにころし”の店の者たちはやる気に溢れていた。
「はぁ、まあ心配はしていませんが。何故?」
「京の武将達の気晴らしの場がほしい、と」
「と?」
「岐阜城のは、俺の軍の者だけが利用する場所だったがな。京の木場蔵は武将や貴族達も呼び、社交の場とする。そして気が緩んだそいつらから話を聞き出せ。様々な情報が集まるようにしろ」
にやりと笑う信長の姿に、ぞっと背中が寒くなった。この人の考えはいつも一歩も二歩も先も行く。
「かしこまりました。信長様」
逆らう事なんて出来ない。久々に信長に対する恐怖が芽生える。と同時に、尊敬の気持ちも芽生えて来た。
(もし、信長様が平成の時代に生まれていたら……)
一体、どんな世の中を作っていくのだろう。そう思わずにはいられなかった。 



コラム画像
8回目コラム  『何故浅井長政が裏切ったか』真相は?
さて小説も急展開になってきましたね! 信長は長政に溺愛していた妹、お市と政略結婚させ信頼していました。しかし浅井家と朝倉家古い同盟関係でした。長政は信長に板挟みを避ける為、朝倉氏を攻めないように頼みましたが、朝倉氏が信長に刃向かったので、信長は朝倉氏を攻めます。
そして浅井軍は古くからの同盟を重んじ信長軍を攻撃します。ここら辺は諸説あるのでなんとも言えませんが、長政が裏切ったと言うより、そもそも織田家と同盟関係ではなかった、長政ではなく父に言われなどと、真相は歴史の闇の中です。

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