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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2014.01.06
第13話 本能寺の変(前編)
西暦1582年。
ノブナガを失った後の、信長は更に破竹の勢いで天下統一に邁進していた。
「天下統一まであと少し……か」
信長は誰もいない、安土城の天守閣の中で呟いた。
一番高い場所である天守閣から見下ろして見える町並みは、とても活気に溢れていた。
経済を活性化させる為に不必要な関所を撤廃し、商人達が集まりやすいようにしている。
また商売の同業者同士が組む座という利益を独占していた組合を解散させ、自由に取引が行えるよう楽市楽座を行った。
お陰で戦乱の世だというのに安土城下町に住む者達は活き活きと過ごしていた。
華やぐ町や民に反して信長は孤独感に襲われていた。
この町も、城も作ったのは信長自身だ。秀吉、利家といった重臣達は全国に散らばり、信長の支配地を増やしている。
領土は増えていくのに、日に日に一人で過ごす時間が増えていた。
天守閣の下で小姓の蘭丸達をはじめ、多くの配下が控えているが彼等は必要以上に近づこうとはしない。
「大嫌いとかいう奴もおらんしな」
信長に対して、誰も本音でぶつかって来ない。
ノブナガが消えた後、血なまこになって探したが結局見つからないままだった。
唯一残されたロザリオが、胸元で揺れる。
ノブナガを失った悲しみを忘れるかのように、信長は更に天下統一に力を尽くしたが、周りの態度がここのところがらりと変わっていることに気がついた。
誰も彼もがいつも信長の顔を伺っているのだ。
その態度に苛々してしまう。裏では信長に対して不満を溜めているのも知っている。
けれども誰も、信長には直接言わないのだ。
「最近の信長様はおかしい」
「あぁ、もうやりたい放題だ」
「いつわしらも殺されるかも知れん!」
家康の妻と息子の自害命令。
堺の商人達との権力争い。
天皇家のいざこざ。
高僧の火あぶり。
そして神の宣言。
頭がおかしくなった、気が触れただの言いたい放題だ。
本当は一つ一つ理由があるのだが、世間の人々や臣下達も表面での出来事しか判断しない。中には全く違う事実も、まるで真実のように語られている。
人の上に立つという事は敬われるが、それだけ同時に憎まれる場面も増える。
信長自身も覚悟はしていたが、やはり複雑だ。
何故皆そんなに恐れるのか。
いくら優れているからとはいえ、たった1人の人間でしかない。
誰も本当の信長を見ていない。
信長が望んだのはただ一つ。自分の死を望んだ母。反乱を起こした弟。
家族がいがみ合うような悲しい事が起きないよう、平和な国を望んだだけなのだ。
家族と平和に、幸せに暮らし、愛し支え合う。この単純な事が、いくら権力を握っても出来そうにもなかった。
天下統一は望んだものだ。いくらでも人から憎まれようと構わない。
けれども誰からも理解されず、愛されないのはとても哀しい。
脳裏にノブナガ、奈々の顔が浮かんだ。
信長が権力や天下とは別に、唯一妻として望んだ女だ。
利用価値があると言い訳して、無理やり傍に置こうとした。すると彼女は姿を消したのだ。
初めて会った時は、気の強そうな面白そうな女と思った。この女は使えると思ったのは堺での宴の時だ。肝の据わり具合に驚いた。
そして初めての戦での死に物狂いに生きようとする姿。木場蔵での活躍。一人でいるとふとノブナガを思い出してしまう。
怒ったり、笑ったり、泣いたり、喜んだりとくるくると変わる表情を思い出すだけで愛おしい。
「失ってから、気づくとはな」
信長は目を閉じた。失ったものは戻ってはこない。
この感傷的な甘えた気持ちを捨てなければ。
「信長様! 秀吉様から援軍の要請です!」
階段を駆け上がって来た蘭丸が息を荒らしながら、信長の想いを断ち切るかのように告げた。
「あぁ、分かった。今行く」
今更戻れない。心を鬼にして、一人で天下を獲るしかないのだ。
***
「申し訳ございません! 信長様!」
頭を下げ、体を震わす明智光秀の姿に信長はうんざりとした。
まただ。
元々明智光秀の能力を高く買っていた。足利義昭の下で仕えていた光秀は実力に反し、くすぶっていた様に見えた。
自分ならもっとうまく活用させるのにと思い、声をかけたのだ。
最初の頃こそ光秀は信長の下で生き生きと働いていたが、信長が権力の座を握れば握るほど態度が卑屈になり、空回りしていた。
昔は気さくに話しかけてきたのに、どんどん媚びへつらい、伺うようにこちらを見ている。本来の光秀の良さ、理知的な面が徐々に失われていた。
今日も安土城で家康をもてなす祝いの席で、かつての光秀ならありえない失敗をした。
「もう良い。さがれ! 貴様は宴の世話役を外れろ」
そう言い捨てると、光秀は絶望した表情を顔に張り付けていた。信長は眼を背けた。その表情を見るのはもう見飽きた。もう、何も見たくない。
申し訳ございません、申し訳ございませんと言う光秀の哀しげな声が聞こえてくる。
「毛利を攻めている秀吉の元へ援軍にいけ」
そう命じると、信長は自分の部屋へ戻って行った。
「あぁ、今度は私が殺される……」
取り残された光秀が哀しげな声で呟いたのを知らずに。

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