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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2014.02.10
第15話 もう一度天下を(後編)
誘われるまま信長とデートする羽目になった。
子ども達の面倒は同室のシスターにお願いすると、楽しんでと笑顔で手を振られた。
「ど、どこ行くんですか?」
キャバクラ嬢にも関わらずノブナガは、同伴以外でデートらしいデートの経験はない。
「ここだ」
「ってデートって改装中のうちの店ですか? あの、デートの意味知ってます?」
club“IXA”工事中のブルーシートが張られ、中の様子は良く分からない。
「知ってるぞ。まあ、こっちに来てから色々な女とデートして、色んな所にも行ったが今日はここが一番いいかなと思ってな」
信長はブルーシートを払い、手招きした。他の女とデートと聞いて複雑な気持ちになる。
(相変わらずモテるなぁ。というかこっちの時代に順応しすぎじゃない!?)
「随分とこちらの時代でもお楽しみで」
毒気を混ぜて伝えると、信長は首をすくめた。
「まぁこっちに来て随分経つからな。そりゃ女とデートくらいする。ほら拗ねるな、こっちへ来い」
しぶしぶブルーシートの中を潜る。が、真っ暗だ。
「何も見えません」
「ちょっと待て。電気を今つける」
パチッと電源が入る音がして、店内が一気に明るくなった。
「な、なにこれ凄い!」
club “IXA”の店内は見事に生まれ変わっていた。
高級感溢れる黒を基調とした室内にビビッドな赤がポイントに使われている。広さも倍以上になり家具や照明もグレードアップしている。
見事な調度品が飾られシャンデリアは華やかに輝き、幻想的な世界を演出していた。
「中々いいだろ」
「えぇ、とても素敵です」
素直に感心しソファに座った。すると向かい合わせに信長が座る。
「あの、信長様教えてください。一体何故この時代にいるのか」
勇気を出して尋ねた。信長はぽつりぽつりと話し始めた。
明智光秀に裏切られ、本能寺の変が起こった夜。
信長は諦めて命を絶とうとした時、雷が落ち、白い光に包まれたそうだ。
「!? 私も同じです!」
「……やはりな。まあそれから俺は今から10年前、つまり2003年だな。この時代に来た」
「10年前!?」
「しかもなぜか若返っていてな。お前もこっちにも戻ってからも出会ったままの姿だし。タイムスリップの反動かもしれん。詳しくは分からんが。こちらに来てからは驚きの連続だった」
私から未来について話を聞いていたとは言え、やはり最初は衝撃だったらしい。
戦がなく、夜でも明るく輝くたくさんの光。電車や車、飛行機。電話にテレビ。
ありとあらゆるものが信長の時代とは大いに変わっていた。
暫く路頭に迷い街中をふらついていたところを偶然ホストにスカウトされ、ホストクラブでバイトをしていたそうだ。
最初は戸惑ったが信長の高飛車な性格がハマり、そこそこ売れっ子になったそうだ。
数年働いた後、意気投合したホストと共に店は辞めたらしい。
そのホストが会社を作る為に水商売していた事を聞きつけ、面白そうだと思った信長は一緒に起業したそうだ。
「なんていうか……。相変わらず逞しいですね」
「パソコンは面白い。新しい物を学ぶのは元々嫌いでないしな」
元々新しいもの好きな信長にはIT業は性に合っているようだ。
そういえばこの人朝早く起きて学問や武道に励んでいたような気がする。天下統一直前まで行った男はやはり違うとしみじみ思った。
それにしてもホストクラブで信長の接客を受けた相手は、戦国時代から来た織田信長だとは思っていなかっただろう。
「はぁ、それでITの会社とキャバクラの経営も?」
「最初に貰ったのがキャバクラのWEBサイト制作でな。ついでにその店をコンサルしたら大当たりして、店の経営も始めたんだ」
戦国時代に居た時に信長が現代にいたら社長になってそうとは思ったが、まさかここまで成功するとは思わなかった。
あの後調べたが通称“KC カンパニー”、正式名称“キヨス・キャッスル カンパニー” は今話題のIT企業とマスコミにも取り上げられていた。国内のみならず海外にも進出の噂もあるらしい。
「キヨス・キャッスルって清洲城ですよね。私と会う前に信長様が居城としていた」
「あぁ、あの頃から再出発するという意味も込めて、この名前にしたんだ」
戦国時代から現代からの再出発。たった10年でこの平成の世でも地位を築きあげた信長の能力は恐ろしいものである。
「ほんと、信長様凄すぎです」
「たまに俺も自分の才能が怖い」
信長は豪快に笑い飛ばした。時代が変わっても変わらない。むしろ少し柔らかくなった信長の様子にほっとした。
「なんにせよお元気で、こうやって会えて嬉しいです。戻ってから、もう会えないと思っていましたから。でもお市様、利家様、秀吉様、そして家康様にももう一度会いたかった……」
遠い昔の人々の姿が、まるで昨日会ったかのように思い浮かぶ。
「ああ、こちらに来てから色々調べたが、お市は本能寺の後、大変だったみたいだな。だが頑固な俺の妹らしい。秀吉の奴はまさか俺に代わって全国統一して海外まで攻めるとは思わなかった。が、一番の驚きは家康だ。あいつこう言っちゃなんだが、真面目で義には厚かったが、割とぱっとしなかったぞ。まさか264年も続く幕府を作るとは」
複雑そうな顔で信長は顔をしかめた。その様子に思わずくすくすと笑ってしまった。
「えぇ。だからもうちょっと酔っ払ってない家康様とお話したかったですね。あと……出来れば貞とか教会の子達にはお別れを言いたかった」
あまりにも突然過ぎる別れを思い出し顔を曇らせた。すると信長は真面目な顔をして話を続けた。
「お前が消えた後も木場蔵で働いていた女達が、子ども達をきちんと見ていてくれてたぞ。放火した奴は捕まえておいた。武田軍の忍の残党で、奴らの逆恨みだ」
勝頼の常に傍にいた忍達の姿を思い出す。
「武田軍……」
「あぁ。俺が居なくなった後の子ども達は直接知らんが」
そう言って信長は本や書類を取り出した。本は随分と古びている。
「これは?」
「貞に関する歴史的資料だ。勿論必ずしもすべて真実という訳ではないが、現代に生きる俺達に残された知る手段だ」
読んでみろと、言われ恐る恐る手を伸ばす。
本や書籍には貞が信玄の娘、貞の伯母にあたる松姫に引き取られたと書かれていた。恐らく信長がいなくなった後のことだろう。
そして家康の配慮により名家であった高原宮原家の正室になり跡継ぎを産み、81歳で亡くなったと書かれている。
戦乱を極めた時代にも関わらず逞しく生き、天寿を全うしたようだ。
(勝頼様……お約束通り、貞に未来を託しましたよ)
「貞……」
たまらず本を抱き締めながら、涙をこぼした。戦国時代で自分は戦乱を止めるのは出来なかった。
けれども歴史の片隅で泣いていた子ども達を救えたというのならば、自分がタイムスリップした甲斐もあろう。
「奈々。お前のお蔭だな」
信長はノブナガの傍に近づき抱き締めた。
「信長様?」
「俺もずっとお前に、会いたかった」
思わぬ告白に、身を硬くする。
「結婚してくれ。そして俺の傍にいて欲しい」
「……私が今日本一のキャバ嬢だからですか?」
キャバクラを経営するならノブナガの存在は知っていたはずだ。信長が近づいて来たのもまた利用価値があるからではないかと、疑った。
信長は深くため息をついた。
「確かに貴様の天職はキャバ嬢だと思う。俺が経営している店の指導をして欲しいというのも事実だ。この時代にもビジネスという面白い戦があるしな。戦国では果たせなかった全国統一を今度こそ叶えたい」
にやりと笑う信長の姿にやっぱりと思い、がっくりとする。本当に人を利用するだけしか考えてない。ある意味信長らしいと苦笑したが、信長は言葉を続けた。
「けど、戦国時代では出来なかった……愛する者と幸せな家庭を築くという夢も共に叶えてくれないか」
母に憎まれ、弟に反逆された信長。両親に見捨てられたノブナガ。
運命の悪戯で出会ったのは偶然。
けれども、生まれた時代が違えど、彼らが惹かれあったのは必然かもしれない。
「はい。あの、私でいいんですか?」
きらりと光る薬指の指輪。それは現代に生きる二人の愛の証。
「お前『が』いい。俺と共に戦える女はお前くらいだ」
信長が握り締める鈍く光るロザリオ。それは時を越えた二人の絆のカタチ。
「私も、信長様がいいです。信長様じゃなきゃ嫌です」
涙をこぼしながら真っ赤な顔で言うと、信長は優しく頭を撫でた。
「よし、じゃあマリア教会を建て直して今度こそきちんと結婚式をあげよう。それに子ども達も今のアパートでは辛いだろう」
「え? だ、駄目です! ありがたいですけど、そこまで甘えるわけには……」
すると信長は不敵な笑みを浮かべた。
「貴様、俺を誰だと思っている? 俺は天下人、織田信長だ。金なら俺が出す。天下を治める人間は民の幸せを、そして愛する女の幸せを考えねばな」
愛する女という言葉に、また涙が止まらなくなる。
「ありがとう……ございます、本当にありがとうございます」
「奈々。貴様は貴様らしく全力で生きろ。そして日本一の、世界一のキャバ嬢として俺と共に来い」
「はい!」
ノブナガと信長の新たな戦いの場、生まれ変わったclub “IXA”で二人は愛を誓い、初めて唇を重ねた。
平成から戦国へ、歴史をさかのぼったノブナガ。
戦国から平成へ、時代を超えて来た信長。
二人の『ノブナガ』がまた新たな歴史を1ページを作るのは、もう少し未来のお話。
終わり
イイネ!
6人がイイネ!と言っています。
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