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New!!
2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.11.25
第10話 告白とくちづけ(後編)
次の日、ノブナガは憮然とした顔で近江の国、岐阜県に向かった。
隠密の使者の為、身軽な旅だ。以前とは違い鎧もなく、馬にも乗り慣れたので数日で近江の小谷城に到着した。見せ掛けの和睦の書状が、ずしりとノブナガには重く感じる。
織田家からの書状を見せるとすぐに門を開けられ、すんなりと城の中に入ることが出来た。最悪捕らえられて殺されるのではと思っていたので、拍子抜けしたまま、長政の部屋に家臣に連れて行かれた。
久しぶりに会った長政は、ノブナガと目が合うとにっこりと笑った。まるで昔からの友人に会ったかのような態度に、面食らう。
「和睦の書状か」
「はい。朝倉軍ではなく織田軍に入るならば、もう一度和睦の機会を与えるとのことです」
なるべく感情をこめないよう、淡々と伝えた。
「信長様の事は尊敬している。素晴らしい武将だ。しかし、わが浅井家は朝倉家と縁が深い。昔からの繋がりを裏切ることは、浅井家の人間として出来ない」
強い口調で主張する長政に、やはりと思った。長政の返答は想定内だ。そして、自分は最悪ココで殺される可能性がある。その前になんとかお市を見つけて逃がさねばと算段していると、長政はまた優しく微笑んだ。
「お市に会いたいのだろう。この話は受け付けないが、その位は許そう」
長政は家臣達を人払いして、お市と子ども達を呼び寄せた。
「お市様!」
「まぁ奈々!! 会えて嬉しいわ。元気にしてる?」
お市は相変わらず美しかった。嬉しそうに顔をほころばせ、ノブナガに駆け寄った。
「えぇ、お元気そうでなによりです。お子様達も皆さん可愛らしくて」
「ふふ、ありがとう。まさか奈々に会えるなんて思わなかったわ」
再会を喜ぶ二人の様子を、長政はじっと見守っていたが辛そうに口を開いた。
「奈々、答えておくれ。この和睦の話は偽りだろう」
「……え」
答えに詰まると、長政は優しくノブナガの頭を撫でた。
「信長様も無茶な事をさせる。気づいていたよ。お市だけでも無事逃す為に、奈々はここに来たのだろう」
ずばりと言い当てられて、何も言えなくなった。お市は今にも泣きそうな顔になり、激しく首を横に振る。
「お市は長政様の元から、離れませんわ!」
お市の悲痛な叫び声に、身が裂かれるような気持ちになる。あぁ、本当にこの二人は愛し合っているのだ。戦国という戦ばかりの時代に育まれた愛は奇跡に近いものだろう。
けれどもその奇跡が今、悲劇になろうとしていた。
「私もお市と離れたくはない。しかしそれ以上にお市には生き延びて、子ども達を守ってほしい」
子どもと言われてお市の顔が強張った。長政はお市の手を握りしめる。
「よいかお市。おそらく私は次の戦で死ぬ。それも仕方ない事だ。信長様だけが悪いという話でもない。ただ時代が、私がいる事を許さない」
お市はうつむいた。涙がこぼれ落ちる。ノブナガもつられて泣きそうになるが、なんとか耐えた。
「頼む、お市。こんな悲しい時代を終わらせるためにも、生き延びてくれ。私や子ども達でも戦は終わらないかもしれない。しかし子どもの子ども、その先の、先の子孫がもしかしたら戦を終わらすかもしれない」
「長政様……」
長政は茫然としたお市を優しく抱きしめ、ノブナガに告げた。
「奈々、お市と子ども達を連れて城から逃げろ。今の時間は目立つから夜にだ。お市達を乗せる馬は用意しておく。だから君はお市を無事に信長様の元に連れて行ってくれ」
「いいのですか? 本当に」
気がつくと、我慢していたはずの涙がこぼれ落ちた。
「あぁ、ありがとう。いいんだ。正直死ぬのは怖い。とても怖い。けど、お市が、子ども達が生きているのならば……」
長政は言葉を詰まらせ、お市からそっと離れた。
「長政様……」
「お市、そして奈々。命令でなくお願いだ。私の分も生きてくれ。そして子ども達を守ってほしい」
言葉が上手く出ない。ただ首を縦に振るしかなかった。
「長政様、お市からもお願いです。戦が終わったらお市を迎えに来て下さいまし!」
長政は、笑みを浮かべたまま、何も答えなかった。
そして1573年8月27日。
20日に織田軍に敗れた朝倉義景が自害して7日後。
最後まで長政は諦めず戦ったが、ついに城を落とされ、そして自ら命を絶った。
とても、とても暑い日だった。
保護され、京に連れ戻されたお市は、それから呆然とただ空を眺めるだけであった。食事もとらず、見る見るうちにやせ細っていった。
「お市様」
「あぁ、奈々。いたのね」
呼びかけに応じる声はひどく弱々しい。しかしノブナガはめげずにお市に近寄った。
「お市様お願いがあります」
「何かしら?」
「私と一緒に木場蔵“おにころし”で働いてください」
「え?」
予測もつかないノブナガの提案にお市は目を丸くしたが、それから何日にも渡る説得により、キャバ嬢デビューする事になった。
それは、後に戦国の時代で伝説となった“木場蔵 おにころし”の誕生の瞬間でもあった。
イイネ!
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