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ポケパラノベル
ポケパラ体入>ポケノベ>ノブナガ>第4話 小姓生活(後編)
小説タイトル
イラスト:ミカミ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルノブナガ【完】 更新日時2013.09.02

第4話 小姓生活(後編)

小説挿絵 「奈々丸、遅い」
信長と食事が終わった後、ノブナガは利家の部屋に向かった。相変わらず無表情な利家は、書物を抱えて睨みつけて来る。
「すみません、信長様に捕まっていて」
信長の名前を出すと、利家は眉間にしわを寄せた。ある意味とても分かりやすい人だと思った。

「……とりあえず、これを日付順にまとめてくれ。それが終わったらまた指示を出す」
そう言って大量の調査書の紙をノブナガに手渡した。
「かしこまりました」
ノブナガは黙々と書類を整理して行く。利家との時間は、信長とは違った緊張感がある。
早く仕事を終わらせようと思い真剣に取り組んでいた。
二人の間に静寂の時間が流れる。が、そんな沈黙を破ったのは意外にも利家の方だった。
「そなたはもう、信長様と寝たのか」
「……は?」
思いもよらない利家の発言に耳を疑った。
「今、なんて?」
思わずタメ口になる。
「いや、だからそなたはもう信長様と寝たのだろうと。先ほどもそうだろう?」
誰が朝っぱらから鷹狩り帰りの汗まみれの男と寝るんだよと、内心突っ込んだ。ところが利家の顔は真剣そのものだった。
「食事を一緒に食べただけですけど」
「ほんとか?」
「ほんとですって! なんで私と信長様が寝ないといけないんですか」
しかし、と利家は引き下がらなかった。
「そなたは異邦人や天女と呼ばれておる。信長様の跡継ぎとなる子どもを産むために天が使わした存在ではと皆言っておるぞ」
「天女……」
髪の毛が茶色いせいで、外国人といわれるのはまあまだ分かる。が、天女という単語に吹き出した。キャバクラ嬢になってから、姫と呼ばれたり、敵意を持った人から悪女だの、小悪魔だの言われたが、天女という言われ方は初めてだ。というか天が使わした存在と思うならば、もう少し丁寧に扱って欲しいと思った。
タイムスリップしてから二回も殺されかけ、放置されたかと思えば男装させられ、こき使われるというとろくな目にあってないような気がする。
「空から降ってきたのだろう? 本当は何者なんだ?」
「何者って、単なるキャバ嬢でしかないんですが」
「きゃばじょう?」
「あー。えーとお食事やお酒を楽しみたい人をもてなす仕事です」
だいぶざっくりした説明だが間違っていない。
「では、そなたは信長様の御子を産むための女ではないと」
「それ445年後のTwitterでつぶやいたら炎上しますよ」
「は?」
「いえ、こっちの話です。違います。そんな事ありえません」
二回も殺されかけた相手の子どもを産むってどんな状況よ、と思った。
「本当か?」
「はい、本当に本当です」
「そうか、ならばよかった」
否定した途端、利家は満面の笑みになった。
笑うとイイ男だよなぁというか、信長が好き過ぎるでしょこの人と、ノブナガは若干引いていた。
それでも明らかに利家の態度が柔らかくなって、ほっとした。
このままではいつか殺されるのではと思う程、利家はノブナガに対して殺気を放っていた。命を狙われるのは信長だけで十分である。
「それに、ようやく信長様の命令の意味が分かった」
「命令?」
「聞いてないのか? 今度堺で行われる相撲大会の酒宴は、そなたが取り仕切ると」
「は?」



「信長様! ちょっと! 聞いていませんよ!」
甲高い声がまた屋敷に響き渡る。
ノブナガは利家から話を聞いてすぐ、また信長の部屋に戻った。
「おおう、噂をすればなんとやら。お市、これが噂の未来からの人間じゃ」
勢いよく障子を開くとそこには、信長と目の覚めるような美女が向かい合っていた。
(誰? お市って確か……)
「まあ、とても元気なかわいらしい男の子ですね」
お市と呼ばれた女性は口に手をあてて、うふふと可愛らしく笑った。思わず同性のノブナガも見とれてしまうような女性である。髪はつやつやと光り、肌は雪のように白い。鼻も高く、凛々しい目元は信長とよく似ている。信長の妹のお市だとようやく気付いた。戦国一の美女と名高い人物である。
そういえば織田家は美男美女の家系と言われていたなと頭の片隅で思い出していた。
「ええと、お市さま。大変失礼いたしました」
信長の妹ならば失礼があってはいけないと、ノブナガは慌てて膝をついた。
「はは、まあ失礼なのはお互い様じゃ。お市、こいつはおなごだ。お前と一緒で背も高いから間違えても仕方ないがな」
と笑う信長に、お市は表情を曇らせた。
「まあ、わたくしなんて失礼なことを。申し訳ございません、こんな可愛らしい方を間違えるなんて」
申し訳なさそうにお市はノブナガに頭を下げた。
良い人だ。信長の妹とは思えない良い人だ。
とノブナガは感動していた。性別を間違えられたのは地味に傷つくが、こんなにきちんと謝って貰うなんて、この時代に来てから初めてな気がする。
「いえいえ、こんな恰好をしておりますので、間違えても仕方ありません。それよりもお話し中申し訳ございませんが、相撲大会の酒宴についてなんですが……」
「ああ、利家から聞いたのか」
「ええ、聞いていませんよ! そんなこと」
「まあ、いいじゃないか、貴様もてなすのが仕事だったのだろう?」
「ですが……」
そんな大役とノブナガが言いかけたその時だった。
「まあ、酒宴のもてなしなんて楽しそう。わたくしもやりたいですわ」
「「え?」」
お市からの思わぬ提案に、二人の『ノブナガ』は目を丸くした。


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