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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.12.16
第12話 天下と別れ(前編)
ノブナガが戦国時代に『タイムスリップ』してから8年の時が経った。
1576年 信長はかの有名な安土城を建設し始めた。現在の滋賀県に当たる場所である。
安土城は琵琶湖に面し三方が湖に囲まれ、琵琶湖を外堀と見立てた大掛かりな城になる。天守閣が眩しい豪華絢爛な城になる予定だ。信長の礎となる場所になるだろう。
未だ築城中ではあるが、壮大な城になるであろうこと予測できた。
信長の天下はもう迫っている。
武田家も長篠の戦い以降、混迷を極めていると聞く。他の武将達も信長に圧倒されていった。
信長の天下が確実になっていく中、ノブナガはある決断をした。
「木場蔵“おにころし”をやめたい?」
久しぶりの信長とお忍びである。二人は城周辺の城下町にいた。相変わらず男装姿で信長の朝の散策に付き添っている。二人きりの時間はこの時しかない。
「えぇ。お店はお市様がいれば安泰です」
「確かにお市の評判は聞いている。しかしやめて何をするつもりだ?」
信長は特に責めることなく、冷静に問い質した。
「教会を、孤児院を作りたいのです」
ロザリオを握りしめながら、熱く訴えた。
長篠の戦いの後、勝頼から密かに子どもを引き取った後、勝頼の子ども以外にも戦で孤児になった子や、貧困で親に見捨てられた子を“おにころし”で面倒を見ていた。
戦が増えるに連れ、自然と孤児になった子ども達の数も増し、“おにころし”の経営と子ども達の面倒を同時に行うのが体力的にも厳しくなっていた。
「貴様が子ども達を引き取っているのは知っている」
信長はすたすたと2階建ての茶屋に入り、手招きをした。朝でもこの店は開いているようだ。
「主人、上の階は空いているか?」
「へぇ、どうぞ」
信長が多めに貨幣を握らせると、店主はぺこぺこと頭を下げる。
「あ、あの」
「道端で話す内容でもなかろう、来い」
戸惑っていると信長は顎をしゃくり、階段を上るようにうながした。
「はい」
部屋は思ったより狭く、二人の距離も近い。
「あ、あの」
信長はそっぽを向いたまま胡坐をかき、だらしなく頬杖をつく。
「奈々よ。これは独り言だ」
「? は、はい?」
こちらを向かず信長は話を続ける。
「本来、宗教とは人の心を支えるものだ。辛い時や哀しい時に生きるのが辛くなった時に、神や仏の教えが希望を与えるのだと思う」
「……?」
「が、今の仏教の坊主どもは宗教の信仰の力を、権力と人を支配する為に使っている。それは奴らの仕事ではない。そこでだ、俺がキリスト教の布教を許しているのは知っているよな」
「はい、南蛮の物を彼等は持って来るからですよね」
信長の南蛮好きは有名だ。全く話が見えないが素直に話に耳を傾ける。
「無論それもある。宣教師達も色々思惑があるみたいだがな。まあ坊主よりはマシだ。そこでだ、ようやく全国統一の戦いも終盤に近い。全てが終わった時、戦で傷ついた人々が新たな救いを求め、キリスト教を求めるかも知れん」
脳裏に勝頼から引き取った子どもや、親を失った子ども達の姿が浮かぶ。
「はい、私もそう思います」
「だからこれは命令だ。この安土に人々の支えになる教会を作る。貴様はそこで働け。木場蔵と違って収益があるわけでないから、金もあまり無いが」
突然の提案に、驚かずにはいられない。
「の、信長様」
ようやく、信長がこちらを向いた。
「俺は天下人だ。金なら俺が出す。天下を治める人間は誰よりも民の幸せを考えねばな」
感極まり、つんと鼻が痛くなった。油断すると涙がでそうだ。
「以前約束しただろう。戦の無い時代をつくると」
「信長様……」
ダメだ、もう我慢できそうに無い。耐え切れず、目頭から涙がこぼれた。
「何故、泣く?」
「い、いえ。う、嬉しくて」
止まらない涙を拭きながら、伝えると信長は照れくさそうに頭をかいた。
「俺は約束を守っただけだ。貴様にもきりきりと教会で働いてもらう。子ども達も今の狭い所では可哀想であろう」
「信長様から、可哀想という言葉を聞くとは思いませんでした」
無理やり男装させられ働かせたり、嫁に行かせたり、戦場に連れて行った人物とは思えない発言である。
「俺は元々子ども好きだぞ。流石に20人の子どもがいると、たまに名前を忘れそうになるが」
20人の子どもと聞いて涙も引っ込んだ。正室の濃姫は亡くなったとはいえ、側室はいる。確か全部で8人いたはずだ。
「あぁ、そうですね。8人も妻がいれば子沢山にもなりますよね」
「俺は少ない方だぞ? まあ先方から嫁に貰ってくれと言われるしな」
けろりと言い返す信長に、頭が痛くなった。
(はぁ、時代が違うから仕方ないけど。とんでもない人を好きになったなぁ)
勝頼に指摘された時から気づいてはいた。
信長を好きだと自覚してから、共にいる喜びと悲しみを覚えるようになった。
「もう、信じられない。女の敵! スケベ! 私の時代では愛し合った二人だけで結婚するんです!」
慣れない嫉妬で胸が痛い。
「貴様の時代は良く分からんが、どうせいつの時代も男は外で女を作っているだろう。それに今俺は正室がいないんだが」
そう言えば、信長の正室である濃姫は随分昔に亡くなったと聞いている。つまり信長は愛人はいるが、ある意味独身の状態なのだ。とはいえ複雑である。
「だからって、何人の人ともお付き合いするなんて……。信長様なんてだいっきらい」
思わず口に出してしまった言葉に、慌てて口をふさいだ。天下人に対して大嫌いとは命知らずすぎる。
慌てて謝罪しようとすると、信長に手をつかまれ、体を引き寄せられた。
「きゃっ」
「大嫌いは止めろ。傷つく」
「何で傷つくんですが」
「知らん。分からんが、やたら胸が痛く感じる」
信長の抱きしめる力は、優しい。どうしていいのか分からず、信長の背中にそっと手を回した。びくりと、信長の体が反応する。構わず抱きしめた。
信長の胸が耳にあたり、鼓動が響く。ノブナガの心臓も鼓動が早くなる。
信長は抱きすくめたまま、耳元でささやいた。
「奈々。……俺の正室になれ」
「え?」
突然の、結婚の申し込みであった。

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