目次
-
2013.07.16
-
2013.07.22
-
2013.07.29
-
2013.08.05
-
2013.08.12
-
2013.08.19
-
2013.08.26
-
2013.09.02
-
2013.09.09
-
2013.09.17
-
2013.09.24
-
2013.09.30
-
2013.10.07
-
2013.10.15
-
2013.10.21
-
2013.10.28
-
2013.11.05
-
2013.11.11
-
2013.11.18
-
2013.11.25
-
2013.12.02
-
2013.12.09
-
2013.12.16
-
2013.12.24
-
2014.01.06
-
2014.01.14
-
2014.01.20
-
2014.01.27
-
2014.02.03
-
New!!
2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.11.11
第9話 花嫁と死と(後編)
細川から手に入れた書状を元に、信長は義昭に和平を求めた。しかし将軍のプライドが邪魔してか、中々首を縦に振ろうとしなかった。
「ふむ、せめて先に武田軍だけでもなんとかしたいな」
「やはり、同盟ですか」
人を道具扱いしないで欲しい、と言いたいところだがこの時代だ。溺愛している妹達も外交の武器として使う信長には躊躇いはなさそうだ。
(でも平成の世でも未婚だったのに……好きでもない人と結婚するなんて)
信長の横顔を眺めながら何故か酷く胸が痛んだ。この痛みを感じているのは自分だけだろうか。
「あぁ。しかも義昭に会いに来る為に、息子の勝頼は今京にいるらしいな。まぁ一度会ってみろ」
拒否権はないと言わんばかりの傲慢な態度に、唇を噛み締める。
そうだ、最近は以前より大切に扱われていると思ったが、信長にとって天下を捕るための駒でしかない事を思い知った。
「……はい、信長様」
ノブナガは頷くしかなかった。
勝頼とノブナガのお見合いが信長の屋敷で行われる運びになった。信長の部屋で、主である信長と勝頼とノブナガは3人でいた。ノブナガと勝頼は向かいあって座り、信長はそんな二人の横でお見合いの仲人よろしく座っている。
「やぁ、花嫁。久しぶりだね」
ふふっと暢気に笑う諏訪こと勝頼の笑顔に、殴りたくなる衝動を抑えた。
こちらは同盟の為にと、覚悟して来たのだ。それなのに、まるで遊びにきたような勝頼の態度に腹が立ったのだ。
「なんだ知り合いなのか」
信長に尋ねられて渋々頷く。
「ええ。一度“おにころし”にいらしたので」
ふぅんと信長は脇息にもたれかかった。満面の笑顔の勝頼に対して、信長はなんだか不機嫌そうに見えた。
「まぁ、とりあえず後は二人でしばらくお茶でもしておけ」
そう言うと、信長は襖を開けて部屋から出て行った。勝頼はずいっとノブナガに近づいた。
「ふふ、運命の相手みたいだね。僕らって」
反射的に勝頼から逃げ、苦虫をつぶしたような顔をする。
「まだ決まったわけではありませんが」
「まあ、でも多分ほぼ決まりじゃないかな。僕らの意思なんてきっと無視される」
勝頼は表情と合わない、酷く冷たい声で言った。
「……そうかもしれませんね」
「で、嫁になるかい?」
拒否権はない。ノブナガはうつろな目のまま、じっと夫になる人物を見つめた。
ノブナガと勝頼の正式な祝言、結婚式は一月後に決まった。それまでに“おにころし”の引き継ぎをしなければとノブナガは駆けずり回った。お客様への挨拶、キャストやスタッフへの教育・指導、お酒や食事の手配など今まで自分が取り仕切っていた全てをそれぞれに分配していった。
「うーん意外に全員にうまく振れないわね」
仕事量は思ったより多く、岐阜城の時より難しかった。
それは同時に京都“おにころし”でのノブナガの役割が大きく必要とされていたのだと分かり、複雑な気持ちになっていた。
そしてついに結婚式前夜。
信長、利家、秀吉、ノブナガの四人で“おにころし”で静かに別れの宴を過ごす事になった。
「奈々丸様がいなくなると、淋しくなりますね……」
「秀吉様……」
「静かにはなるが、雑用係がいなくなるのは困るな」
「利家様……」
「では私達は先に帰ります」
「あぁ、お先に失礼します」
「えっ、あっ、ちょっと!」
秀吉と利家はそれぞれ不器用な優しい言葉を残して、さっさと帰ってしまった。結婚が決まってからろくに話していない。そんな二人の様子を気遣ってくれたのだろう。信長と二人きりになった。沈黙が残る。
「あはは、二人とも帰ってしまいましたね」
ノブナガは無理やり笑い、重たい空気を何とかしようとした。
「奈々」
「はっ! えっ」
低い、信長の声。気が付くと信長に抱き寄せられていた。小さな丸窓から月の光が差し込み、二人の影が濃く重なった。
「あ、あの」
「俺はお前を信頼している」
その言葉に思わず涙がこぼれそうになった。そして自分が住んでいた時代と、この時代では全く結婚の役割が違う事も分かった。
「結婚なんて本当は嫌ですよ」
「そうか」
「でも、私がいかないと織田の人達困るんでしょ」
「あぁ」
「秀吉様、利家様、家康様も」
「そうだ」
まるであの時のようだ。初めて戦場に連れてかれた日。信長に抱きしめられた腕の中で自分の無力さを知った。そして今抱きしめる信長も平和な未来を作るには、まだまだ無力な存在であることも。
「“おにころし”の皆も困っちゃうんですよね」
「そうだな」
徐々に信長の抱きしめる腕の力が強くなる。ノブナガも勇気を出して抱きしめ返した。互いの心臓の音が近く、早くなる。
そして――
「……信長様も、困っているんですよね」
「……そうだ。すまん」
謝罪する信長に目頭が熱くなり、涙がこぼれた。
「ほんともう、駄目な人ですね。こんな女の力を借りないと、平和な時代を築けないなんて」
「すまん」
そう言って信長はノブナガの顎をぐいっと、持ち上げる。
信長の顔が近づき、唇が重なりそうになった、その時。
「危ない!!」
二人の目の前で何かがよぎった。ノブナガは信長の体を慌てて押しのけた。
「なっ!」
驚いてよろめいた信長が体を起こすと壁に矢が突き刺さっていた。
「信長様、刺客です!」
ノブナガはいつも携帯していた脇差を構えた。信長も刀を構える。矢は外から放たれたようだ。
「何者だ!」
急いで襖を開けると、塀の上に忍びの格好をした刺客がいた。が、こちらが気づいた途端あっという間に立ち去っていった。
「逃げられたか」
信長は刺客の後を追わなかった。追っても無駄だと思ったのだろう。今までにも同じような事があった。それだけ信長はありとあらゆる人物から狙われる立場なのだ。
「えぇ、お怪我は?」
「大丈夫だ。奈々は?」
「私は大丈夫です、ただ、その……」
顔が熱くなるのが感じた。信長に口付けされそうだったような気がする。
「あー、その。別れの挨拶みたいなものだ」
「あ、挨拶ですか」
挨拶な訳がない。いくら信長が南蛮の物、海外が好きとは言え、ここは日本だ。
(え、え、い、今私キスされそうになったよね)
そう気づいた途端、顔がかぁっと赤くなるのが分かった。というか、明日嫁に行く人間にどういうつもりだろうか。頭の中はパニックになる。
「……嫁に、行かせたくない」
ぽつりとこぼした言葉に益々混乱する。
「なっ! 何言っているんですか! 和平の為には私が嫁に行く必要があるんでしょ!」
真っ赤になって叫ぶと、信長は深く息をついた。
「そう、なんだがな」
「……なんですか、もう」
二人は居たたまれなくなったのか、黙り込んでしまった。
(あぁもう! 誰かなんとかしてぇええ!)
心の中で叫んでいると、思わぬところから助け舟があった。
「信長様! 奈々丸様!」
と秀吉の声が聞こえてきた。
「お二人とも! いらっしゃいますか!」
利家の声も聞こえて来る。屋敷に戻ったはずの二人が戻って来たようだ。慌しい様子に、信長と顔を見合わせた。
信長は廊下に飛び出し、声をあげた。ノブナガも慌てて後を追う。
「あぁ! ここいる! 何かあったのか!?」
すばしっこい秀吉が、駆け寄り叫んだ。後ろから利家の姿も見える。
「先ほど甲斐の国に送った隠密から連絡が書状来ました! 武田信玄が死んだそうです!」
荒々しく息を吐きながら秀吉は膝を付き、報告する。
「信玄が死んだ?」
戦国一の武将と歌われた男の死。
それは時代と、ノブナガの運命の流れがまた変わった瞬間であった。
イイネ!
4人がイイネ!と言っています。
■注意■
- ●この小説はすべてフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
- ●この小説の著作権は「ポケパラ」にあり、無断転載(部分引用含む)は禁止です。
- ●無断転載を行った場合、著作権法の違反となります。


