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ポケパラノベル
ポケパラ体入>ポケノベ>ノブナガ>第7話 裏切りとはじまり(後編)
小説タイトル
イラスト:ミカミ

目次

【完】

作者情報

中里 朱里
小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 

小説タイトルノブナガ【完】 更新日時2013.10.15

第7話 裏切りとはじまり(後編)

小説挿絵 そして次の日、ようやく元に戻った信長は家臣達に宣言した。
「同盟者の家康と連合軍を組み、朝倉・長政軍を攻め落とす」
戦意を取り戻した信長に一同はほっとし、いつも通り次々と指示を出す信長の様子にノブナガは胸を撫で下ろした。
(これできっともう大丈夫。でもまた戦か……)
あの血みどろの世界に戻るのは正直避けたい。そんな事を考えていると信長に呼び出された。直々に命令があるらしい。なんだろうと信長の部屋に訪れた。
まだ頬は赤いが、元気そうな顔をしていた。
「お呼びでしょうか」
「あぁ、奈々丸。貴様は岐阜城に残れ」
戦力外という事だろうか。仕方ない、戦でもほとんど役に立たなかったんだからとノブナガは落ち込んだ。しかし、次の命令に落ち込みは吹っ飛んでしまった。
「代わりに貴様は岐阜城で『きゃばくら』とやらをやれ。分かったか」
「は?」
思いがけない信長からの命令に、ただ目を丸くするしかなかった。
     

「“木場蔵(きゃばくら) おにころし”ねぇ……」
“おにころし”という不穏な名前にノブナガは苦笑いする。信長が筆で書いた木の看板を部屋の前に置いた。きちんとした店舗が出来るまで、城の一角の広間でキャバクラを仮オープンさせる事になった。
「ドレスはこれでよし、と。ねぇ、お菊。ちょっと皆を集めて、ドレス着せてくれない?」
「はい! 奈々様」
一番の悩みの種であったドレスは、ホルターネックタイプのドレスを作る事で解決した。作り方は簡単である。まず体に布を巻き付け、筒状にして縫い合わせる。そしてキャミソールの紐のように、二本のたすきを前側だけ縫いつけ、首の後ろでリボン結びをしたら完成だ。
これならドレスもずり落ちないし、型紙が無くても作れる。また足から簡単に穿けるので、ドレスに慣れてない人も簡単に着られる。ノブナガはキャストに選ばれた女性たちに次々にドレスを着せて、一人ひとりに合わせて生地を選び、微調整した。
キャストの人数はノブナガを含めて、20名。そしてスタッフが10人ほどいる。全員女性で、全員信長によって選ばれた。特に際立った美貌や若さがあるわけでもないが、皆ノブナガの話をよく聞き、団結して働いてくれた。
(どんな基準で選んだのかしら? うーんまあ分からないけど。とりあえず今は目の前の事に集中!)             
「はい、ではキャストの皆さん、ドレス着てみてくださいね!」
皆ノブナガが用意したドレスに歓声をあげた。
「わーこれ、素敵ですね。けど、しゃがむとちょっと動きにくいです」
「あの、私はお腹周りが……」
キャスト達はドレスを着ては気になる点を口にし、ノブナガはかたっぱしからメモしていく。
「うん、ちょっと今日の夜まで調整するわ。ありがとー。皆脱いでいいよ」
ドレスを脱がせて、針子作業が得意な女性スタッフ数名に素早く指示を出した。         
スカート部分にスリットを入れることで動きにくさを解消し、細かい調整をする。それが終わると今夜の仮オープンの為の料理の仕込みやお酒の在庫を確認する。
ノブナガもナンバー1としての経験はあれども、店の経営は初めてだ。気合いを入れてお酒やおつまみなどの料理の選別、接客教育に力を入れた。最初はどうなるものかと思ったが、キャストもスタッフ達も必死に付いて来てくれた。
              
命じられてから1ヶ月。目が回るような忙しさであった。それでも、やはり女性として、キャバ嬢として得意な仕事が出来る方がありがたい。
(やっぱり私には戦よりこっちの方が性に合っているわ)

そして夜。木場蔵“おにころし”はオープンした。
「いらっしゃいませ、信長様」
店である広間に信長や、利家、秀吉など重臣10名が初めて来客した。
「うむ、戦の前の最後の宴じゃ。大いに盛り上げくれ」
「はい!」
明日、信長たちは朝倉・浅井軍の元へ出陣する。勝負服の赤いドレスと、ロザリオそして、肩から小袖を羽織り、ノブナガは出迎えた。キャスト達も鮮やかな色のドレスを身にまとい、一気に“おにころし”は賑やかになった。
家臣達にそれぞれキャストが一人ずつ付き、スタッフ達がお酒や料理を運んでいく。ノブナガは信長の横に座った。
「支払いは戦から帰ってきてからでよいか?」
信長は軽口を叩きながらもきびきびと働く女性達を見て、満足そうに顎を撫でた。
「勝たないと高くつきますよ」
ノブナガは笑いながらお酌をして回った。
初めてノブナガのドレス姿を見る者もおり、興味深そうにじっと見てくる。
特に胸の当たりに視線を感じたがしっかりと詰め物をして対策をしているので、ばっちりだ。
が、この二人だけは違った。
「今日は女装だな」
利家にお酒を注ぐと、隣にいた秀吉もからかう。
「奈々丸様、女装も似合いますね」
怒りで額に青筋が立ちそうになるがぎりぎりで耐え、今日一番の満面の笑みを作る。
「ふふ。お二人も女装、されます? ドレスの予備はありますので」
「若い時ならな」
利家の思わぬ発言にノブナガは、笑顔のまま固まった。             
「え?」
「冗談だ。それよりも考えたな。戦で家族を失った女達を雇うとは……」
「え?」
初めて知る事実だ。
「あぁ、菊さんも梅さんも旦那さんを亡くしていますね。椿さんは父親を」
痛ましげに秀吉も言葉を重ねた。
「……そうだったんだ」
ようやく、彼女達が必死な理由と、人選の意図に気づいた。
彼女達も自分と同じ、行き場を無くした人達なのだと。
「利家様、秀吉様」
「ん?」
「どうしました? 奈々丸様」
「絶対、勝ってくださいね。そして信長様を連れて帰って来てください」
「言われなくとも!」 
「勿論ですよ! 奈々丸様!」
そして次の日、信長達は出陣して行った。
「どうぞ、ご無事で」
ただただ、ノブナガは戦いに赴く男達の無事を祈る事しか出来なった。


まるで戦国で生きる女のように。



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