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2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.09.17
第5話 騒乱の宴(後編)
次の日。信長はおごり高ぶった罰だと言わんばかりに、堺の商人達に矢銭二万貫を要求した。今の時代で20億とも600億ともいわれる大金だが、商人達は素直に払ったという。心ない宴の代償は高くついたようだ。
屋敷に戻ったノブナガは縁側で団子を食べていた。しかも一人ではない。団子は利家がくれたものだ。甘いものに目がないノブナガは有り難く頂く事にした。すると、お茶を持って来た秀吉もちゃっかりと混ざり三人は珍しく仕事の手を止め、縁側でお茶する事になったのだ。
「はははっ! 最高でしたよ。奈々丸様!」
「堺の商人どもは前から気にいらぬ存在であったしな。あの舞も素晴らしかった」
秀吉は手を叩き、利家は満足そうにうなずいた。二人とも団子をほおばっている。
「はあ、ありがとうございます」
昔遊びで剣を振り回したのを思い出しながら、ただ音楽に合わせて踊っただけだが、この時代には斬新な舞に見えたらしい。
「それにしても平家か源氏とはまた随分な皮肉でしたな、奈々丸様」
秀吉がおかしそうに笑った。
「む? どういう意味だ?」
利家が首をかしげるとノブナガはバツが悪そうに頭をかいた。
「ええと今どちらも、もう滅びていますよね」
つまりどちらにしろ、商人達は信長に従うか、滅びるしかないという意味であった。その意味に気づいていた信長も宴中、ニヤリと笑っていた。
「……なかなか怖い奴だな。そなたは」
京都に戻ってから秀吉や利家を始め、ノブナガに対する態度ががらりと変わった。今まではどんなに一緒にいてもどこかよそよそしいところがあった。それが宴の後、一気に打ちとけた気がする。
「でも、やり過ぎましたかね……」
「まあ長政様が、気を遣ってくれたからな」
あのままでは下手すると罰せられていたかもしれないなと利家は腕組みした。
「あの、途中から自分でも何を言っていたのか……。お市様のお陰です。もしもの時の為にと、長政様にお願いして牛肉料理を手配して下さったので」
「お市様と長政様にはお礼を言わねばな、奈々丸様。そういえばお二人、今日屋敷に居ますよ」
ノブナガは思わず秀吉に詰め寄った。
「ほんとに? 今どこにいますか?」
「の、信長様の部屋かと……近江の国に戻られると、挨拶に来ていましたので」
「秀吉様、ありがと! あ、利家様もお団子ありがとうございました! 美味しかったです!」
初めて二人に満面の笑みを見せ、急いで信長の部屋に向かった。
「なあ、利家」
「なんだ。秀吉」
「その、奈々……様は笑うと可愛いな」
「あぁ。悪くない」
取り残された男二人が自分の笑顔に心奪われた事などノブナガは知る由もなかった。
「お市様! 長政様!」
信長の部屋のふすまを勢いよく開けると、信長、長政、お市の三人が居た。
「おぉ、主役が来たな」
信長はニヤリと不敵な笑顔を浮かべる。
「主役?」
ノブナガは恐る恐る問い返した。
「二人が明日国に帰るからな。今日の夕餉を貴様にもてなしてもらおうと思ったのだ」
「え、でも今からでは」
「いやいや、そうは言っても大したことは頼まないよ。奈々……でいいかな。おなごなのに男のフリをしているのは疲れるだろう。今日くらい君の国の服を着てみてはどうだろうか? なに、気も使わなくていい。妻の友人として一緒に食事をしてくれたらいいのだ」
どうやらノブナガが未来から来た事は、信長もお市も長政には伏せているようだ。外国から来たとでも説明したのだろう。しかし、明らかにこの国では浮いているはずのノブナガを特に怪しむ様子もなく、お市の友人として受け入れてくれたようだ。
良い人だ。凄く良い人だ。お市様も含めて良い夫婦だと思い思わず感動した。
「ね、せっかくですからわたくしもあの『どれす』という服を着てみたいですわ」
目をキラキラと輝かせるお市に思わず、「はい」と言い掛けてから気づいた。お市の胸は随分と豊かだ。おそらくノブナガのドレスでは、キツイだろう。
「お市様、是非お貸ししたいのですが、あの、多分大きさが合いません」
「まぁ……残念」
「あ、でも今度お会いする時までに、お市様のドレス作ります!」
落ち込むお市の姿につい約束してしまった。
「まあ、本当!」
「えぇ、約束します。生地とお針子は信長様が用意してくれると思いますので」
「おい、俺は何も言っとらんぞ」
信長は抗議したが無視をする。信長がお市には甘いのは知っている。だからこそ浅井長政をお市の婿にしたのだろう。未来を知るノブナガは複雑な気持ちになった。
「じゃあ奈々、約束ね」
お市は嬉しそうに笑いかけた。
「はい、約束です」
その日の晩。ノブナガは信長と長政とお市と4人だけの宴を行った。ドレスに着替え、ただ一緒に楽しく食事をしただけであった。珍しく信長もお酒を飲み、上機嫌にずっと笑っていた。
お市も長政もそしてノブナガも笑っていた。何かがあった訳でもない。何も特別な話もしていない。それなのに何故かノブナガはこの時代に来て初めて幸せを感じていた。
この宴がずっと続けばいい、とはロザリオを握りしめながら叶わない願いを密かに祈った。
次の日の朝。二人は屋敷から立ち去って行った。
「是非また会いましょう!」
ノブナガが手を振ると、同じ馬に相乗りした長政とお市も手を振り返した。
「奈々は良い子だったな」
「えぇ、妹が出来たみたいで嬉しかったですわ」
そして屋敷から離れて暫くすると、突然長政がお市を抱きしめた。
「長政様、どうしました?」
お市が長政の顔を覗くと、穏やかな表情が抜け落ちていた。
「お市」
「はい」
「もし私が信長様を裏切る事になっても、共に居てくれるか」
お市はギュッと目をつぶり、長政に寄り添った。どんなに仲が良くとも政略結婚は何時どうなるか分からない。
「わたくしは貴方様の妻です。共に居ますわ」
長政は何も言わず強くもう一度お市を抱き締めると、馬を自分の国へと走らせた。
まるで、信長から逃げるように。
■注意■
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