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New!!
2014.02.10
作者情報
| 中里 朱里 |
| 小説家兼コラム二スト。 主に小説、恋愛コラム、携帯ゲームシナリオなどを手がける。 公式サイトはこちら 「nakasato akari.voice」http://nakasatoakari.jimdo.com/ 現在の仕事状況&実績、お知らせなどはサイトをご覧ください。 |
ノブナガ【完】
2013.07.29
第2話 運命の悪戯(前編)
キャバクラグランプリ決勝当日。
決勝の会場である、ホテルの控え室にノブナガと蘭はいた。
「うぅ、口から心臓出るかも」
いつものロザリオを首からさげ、美しいドレスを身につけたノブナガは、いつも以上に輝いていた。だが表情は暗く、ロザリオを握りしめ、何度もため息をついていた。
「ノブナガ! ドレス、皺になるから、椅子の上で体育座りはだめよ~!」
「蘭~!」
「抱きついたら、メイクが崩れるよ~!」
そう言われたが、ノブナガは構わず蘭に抱きついた。誰かにすがりつかないと、いても立ってもいられない気分だった。
キャバクラグランプリはノブナガの予想を上回る厳しいものだった。前回の応募人数から大幅に増え、全国から五千人以上の応募があった。WEB上での写真投票での一次予選、次にメッセージ動画配信投票の二次予選を通過して、ようやく決勝戦に出場出来る。
ノブナガは前回優勝者を出した店のナンバー1という事で注目され、話題にもなった。勿論それだけでは簡単には勝ち抜けない。1次予選通過さえ厳しいのではと危機を感じていた。ところが意外な援軍があったのだ。店長や蘭をはじめとした店の皆が一丸となってノブナガをサポートしてくれたのだ。
写真・動画撮影のプロデュースは勿論、お客様への投票の呼びかけなども手伝ってくれた。そんな皆の応援のお陰もあり、決勝の30人の中の1人に、なんとか残る事が出来たのだ。
皆の応援は嬉しいが、同時にプレッシャーを感じていた。
確かに見た目はいつも以上に磨かれ美しくなった。だが他の店の嬢は自分こそ優勝者だと言わんばかりに、自信に満ち溢れていた。経験の浅いノブナガにはその自信がない。
「ほら、ため息つかないで~。落ち込む暇があったら、笑顔! 次、最後にスピーチだよね! 今の休憩の間にもう一回練習!」
蘭はニコニコと笑いながらノブナガに注意する。前回優勝者という事で会場でも注目されていたが、ひるむことなく笑顔で手を振り返していた。やや天然なところがあるが、さすが優勝経験者、肝が据わっている。代わりに出てほしいと今更ながら思った。
「はぁい……」
ノブナガはうなだれ、スピーチが書かれた紙を見直した。店長と蘭の二人に何度も直されたため、内容は完璧だ。けれど、本当に決勝に残れたのは周りのサポートのお陰であって、自分の実力とは言えないのではないか。
今日もお店を休んでまで蘭がサポートに来てくれている。ありがたさと同時に、優勝できなかったらどうしようと、ノブナガは焦っていた。
「あーだめ! ちょっとお手洗い行って来ます」
「いってらっしゃい、ドレス汚さないようにね!」
ノブナガは手を振り、控え室を出ていく。ホテルの廊下を歩き、トイレに向かった。
すると同じくキャバクラグランプリに出ている、他の店のキャバ嬢たちが鏡の前でメイク直しをしていた。
よく見ると近郊のライバル店のキャバ嬢もいる。人見知りなノブナガは軽くぺこりと頭だけ下げて、すぐ個室に入る。するとドア越しに嬢たちの話し声が聞こえて来た。
「今の子、だれ?」
「“club IXA”の子でしょ。去年優勝した蘭さんのいたトコ」
「あぁ、あの子。今お店のナンバー1なんでしょ。まぁ確かに美人だけど、ちょっとタカラヅカぽい。ってか愛想ないね」
「優勝候補って言われて、お高くとまってるんじゃない。カンジわる~い」
聞こえて来る悪口にキレそうになった。が、ここで下手に揉めるとイベントを追い出される可能性もある。ぐっとこらえた。
「・・・・・・絶対優勝してやる!」
個室の中でノブナガは気合を入れ、ロザリオを握りしめながら低い声で誓った。
他店のキャバクラ嬢の陰口に、かえってやる気になった。おかげで本番では信じられないくらい、笑顔であった。そしてノブナガの持ち味である大胆さと記憶能力の高さをフルに発揮し、大活躍した。
審査員の鋭いつっこみにも笑顔でかわし、他のキャバ嬢のように、慌てる事なく落ち着いて対応する。いつもは怖いと言われる目力の強さも妖艶な笑みとあいまって、会場を圧倒していた。
「ノブナガ! さっきのスピーチ、よかったよ! アドリブもよかったし!」
蘭はほっとしたように、笑顔でノブナガを褒めた。
「ありがとう、蘭」
ともかく、全力は出した。
あとは結果を待つのみである。また来年もチャレンジしてみようと、ノブナガは壇上でぼんやりと考えていた。最初は乗り気ではなかったが、上を目指して頑張るのは意外と悪くない。
『さて、では今年のキャバクラグランプリの発表をします!まずは特別賞から!』
司会者は次から次へと受賞者の名を発表していく。
受賞したキャバクラ嬢たちは、優勝ではなかった悔しさを滲ませながらも、笑顔で受賞した喜びと感謝の言葉を述べていく。選ばれた嬢たちは、輝きに満ち溢れていた。
ノブナガの名前はまだない。
そして残りは優勝者のみとなっていた。
『では最後に優勝者の発表です。どのキャバ嬢たちも、皆さん素敵でしたね。ただこの方は審査員票、会場票でも圧倒的に1位でした』
ノブナガはもうほぼ諦めていた。頑張ってはみたものの、優勝なんて無理だろう。後でホテルのケーキを子どもたちのお土産に買って行こう、なんてのんきに考えていた。
『では、発表します! “club IXA”の信岡 奈々さん! 前へ』
「へ?」
突然のコールに、頭が真っ白になった。
一斉にカメラのフラッシュがたかれる。あまりの眩しさに目をつぶった。
『信岡さん、優勝です。前に出てください!』
司会者に急かされ、ようやく前へ踏み出した。司会者はニコニコとマイクを向ける。
『信岡さん、今の心境はどうですか。そして誰に優勝を伝えたいですか?』
ノブナガは混乱したまま、ロザリオを握りしめ、一息つきなんとか口を開いた。
「えっと、う、うれしいです。あの、優勝するとは思わなくて。今、ホテルのケーキをお土産に買って行こうとか考えていました」
飾らないノブナガの発言に、会場がどっと沸いた。蘭が会場の隅で無邪気に笑い転げているのが見えた。
『誰にお土産ですか? もしかして一番優勝を伝えたい方ですか?』
優勝を伝えたい相手と言われて、ノブナガは真っ先に教会の皆の顔と、そして同じお店の人たちの顔が浮かんだ。
「はい。あの、家族と、あと一緒に働いているお店の人に伝えたいです」
『家族とお店の方ですか。家族の皆さんは応援してくれているんですね』
司会者に言われて、こみ上げてくるものがあった。今の仕事を本当に教会の皆が応援してくれているか分からない。ずっとできる仕事ではない、とシスターの中には反対する者もいた。ただそれでも、日々ノブナガの事を支えて応援してくれた。
「正直、分かりません。でも、私が頑張れるのは家族がいるからです。私、実は昔教会の前で捨てられていたんです。本当の家族にはこのロザリオしか貰っていません」
そう言ってノブナガはロザリオを掲げた。小さい頃から家族という言葉を聞くたびに心がざわついた。ノブナガを置いていった唯一の家族の手掛かりであるロザリオを見ながら、何度本当の家族に会いたいと思っただろう。けど、今は違う。勿論本当に家族がいるなら会いたい。
「私は今、二つの家族がいると思っています。私を産んでくれた家族。そして教会の院長をはじめとしたシスター、一緒に暮らす子どもたちです。彼らから、たくさんの愛をもらいました。血は繋がっていないですが、大切な家族です。その家族を支える為にも、今後も頑張ってキャバ嬢として働きたいと思います」
一緒にいる教会の皆と共に過ごすにつれ、ノブナガにとって家族と同じ存在になっていたのだ。
『そうですか、素晴らしい家族ですね』
涙ながらに語るノブナガに、司会者も目を潤ませていた。
「はい、自慢の家族です。そして私がいるお店“club IXA”はとっても素敵な店なので、皆さん遊びに来てくださいね! あの、皆かわいくて、フレンドリーなので楽しいですよ。たぶん、私が一番愛想悪いです。あの、私目つき悪いみたいなので」
冗談を言うノブナガにまた会場がどっと沸き、キャバクラグランプリは無事幕を閉じた。
……はずだった。
ノブナガは後にインタビューで『教会』について話したことを、と深く後悔する事になる。

日本の歴史は、『戦国時代』までに主に三つに分けられます。『旧石器・縄文・弥生時代』のまだ身分が明確でなく、文明が発達していない時代。『古墳・飛鳥・奈良・平安時代』と一部特権階級や貴族が活躍した時代。
『鎌倉・室町時代』は武力で治めた武士の時代です。日本全体で権力者の地位を巡り、武士達が競い合った特殊な時代でした。
イイネ!
10人がイイネ!と言っています。
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